人材育成プログラム

平成19年3月27日
改正平成24年2月1日
農業・食品産業技術総合研究機構

1.趣旨

農業・食品産業技術総合研究機構(以下「農研機構」という。)は、我が国の農業及び食品産業の競争力強化と健全な発展、食の安全・消費者の信頼確保と健全な食生活の実現、美しい国土・豊かな環境と潤いのある国民生活の実現、次世代の農業・食品産業の展開と新たな生物産業の創出を目的として、農業生産現場から加工・流通・消費までの技術並びにこれらと関連した農村及び食品産業の振興に資する一貫した応用技術の研究開発の中核を担うとともに、民間等において行われる生物系特定産業技術に関する試験研究への支援及び農業機械の改良に関する試験研究等を行う農業技術の研究機関である。

これらの研究活動を効率的かつ効果的に推進するためには、若手研究者、女性研究者等の一層の能力の活用及び向上、卓越した研究者や国際的なリーダーシップを発揮できる研究者等を確保・育成し、活用するとともに、人材交流の促進等により、行政機関、産業界、大学等との連携を深め、研究開発力の強化を図る必要がある。第3期中期目標期間においては、組織横断的なプログラム・プロジェクト制により課題解決型の研究を推進することとし、各研究所等は研究課題を円滑に遂行するための研究環境を整備するとともに、個々の職員の能力・資質向上等の人材育成を図る研究体制とした。今般、改正した人材育成プログラムは、「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(平成20年6月11日法律第63号)第24条の規定(研究開発法人における人材活用等に関する方針の作成等)により義務付けられたものであり、改正された「農林水産研究における人材育成プログラム」(平成23年4月19日、農林水産技術会議決定)を受け、上記の農研機構の新しい研究体制を踏まえ、人材の確保、育成及び活用の方針を定めたものである。

2.基本方針

(1)研究部門

農研機構においては、平成22年10月に、多様な人材の確保、人事管理の徹底、働きがいのある職場環境の実現のために「採用昇任等基本方針」の運用を開始している。研究部門の人材育成においても、これを踏まえ、若手研究者、女性研究者等の多様な人材の研究意欲と能力を十分に発揮できるよう環境整備を進めるとともに、卓越した研究者や国際的なリーダーシップを発揮できる研究者を確保・育成し、活用するため、次のような方針を定める。

1)若手研究者の確保と育成

若手研究者の採用に当たっては、任期付雇用等の雇用形態の多様化を図り、研究の加速を図る必要がある研究分野や農研機構内の研究条件において独自に育成すべき研究分野を担う若手研究者を確保する。
若手研究者の育成に当たっては、専門研究領域や関連する研究領域において適切な指導者を配置するとともに、各種研修機会等を活用する等、高度な専門的知識と知見を習得できる環境を整備する。また、透明性の高い研究業績評価制度等を活用し、若手研究者の研究意欲を高め、研究開発能力を十分に発揮できるような自立的な研究者の育成を目指す。

2)女性研究者の能力活用・向上と確保

男女共同参画本部を中心に女性研究者支援体制を強化し、女性研究者の能力活用・向上のための環境を整備する。また、男女共同参画の取組において、農研機構内外への広報及び意識啓発活動を実施し、女性研究者の採用拡大を目指すとともに、優れた女性研究者を確保することにより、第3期中期目標期間終了時には女性研究者比率が前期の実績を上回るように努める。さらに、産前・産後休暇、代替職員の確保、育児休業制度、裁量労働制、育児短時間勤務、育児時間等の次世代育成支援に関する制度や介護休業・休暇等の介護支援制度の活用により、研究と出産・育児及び介護等の両立支援体制を充実し、女性研究者が働きやすい研究・職場環境の整備に向けて一層の改善を図る。育児・介護休業取得者等の研究業績評価の実施に当たっては引き続き柔軟な運用を行う。

3)卓越した研究者の確保と活用

厳正な選考・審査により優れた研究者あるいは研究管理者を招へい型任期付研究員として採用し、シニアクラスを含めて卓越した研究者の確保に努める。また、公正な評価と能力及び実績に応じた処遇を行うとともに、優れた研究成果をあげた研究者及び実用化に貢献した研究者等の功績を顕彰する等、インセンティブ向上に向けた取組を行う。

4)国際的なリーダーシップを発揮できる研究者の確保、育成及び活用

在外研究員制度、国際農林水産業研究センターのプロジェクト研究への協力、国際協力機構の要請に応えた海外派遣、国内外の研究集会の企画・参画、海外の研究機関や大学との研究連携等を通じて、国際的なリーダーシップを発揮できる研究者を確保、育成及び活用する。また、農研機構の英文ホームページ等を利用して国際公募を実施する等、外国人を含む優れた研究者等を確保するための体制を検討するとともに、外国人研究者等に配慮した研究・生活環境の整備を図る。

(2)    研究管理・研究支援部門

組織横断的なプロジェクト型の研究課題を効率的かつ効果的に推進していく上で、研究全体のマネジメント、産学官の円滑な連携、知的財産の管理・運用、広報、情報管理等の強化が必要である。また、高度化する研究業務を円滑に進めるために技術専門職員の育成が必要である。こうした専門的知識や能力等を持つ人材の確保・育成を図るため、次のような方針を定める。

1)研究マネジメント能力を有する研究リーダー及び研究管理者の育成

プロジェクト型の研究課題を遂行する上で、参画する研究者の創意や能力が十分に発揮できるように配慮し、研究の企画、遂行、成果に対する評価、成果の普及や情報発信等の進行管理を的確に行い、研究グループの持てる力を最大限発揮できるような研究リーダーが求められる。このため、十分な研究実績を有する者の中から、研究課題の遂行を円滑に推進し、研究の企画・立案、進行管理等の研究マネジメント能力に優れた研究リーダーを育成する。

また、科学技術を取り巻く情勢の変化に対応して、新たな目標を設定し、その目標達成に向けて実行力、先見能力、責任能力を発揮するとともに、若手研究者等を指導・統率する能力を有する研究管理者が必要である。このため、研究所の研究領域における、研究者の資質向上、研究戦略の検討、研究ニーズの把握、研究シーズの醸成、研究成果の社会還元等を推進する、高度な専門的知識と統括的管理能力を有する研究管理者を育成する。

2)産学官連携のコーディネート等に係わる部門の人材育成

地域、研究分野ごとのニーズ把握を的確に行い、研究成果の実用化、普及、産業化に向けて、広報活動、企業等との共同研究や技術移転活動、生産現場や普及・行政機関との連携による普及定着活動等を計画的に実施していくことが重要である。

そこで、研究者が行う共同研究等の取組の支援や、技術移転活動、普及活動等を組織的なマネジメントの下に実施していくため、そのスタッフとして、マッチングや技術移転等を行うコーディネーター、知的財産担当者、広報担当者等を育成する。

  • 産学官連携コーディネーター の育成
    研究成果の実用化、普及、産業化のために、行政機関や公設試験研究機関、民間企業等とのマッチングや技術移転等をコーディネートできる人材を一般職員及び研究職員の中から育成する。
  • 知的財産担当者の育成
    研究者・特許事務所との調整、共同研究の相手先との知的財産の取扱い等の調整、許諾契約締結協議、知的財産権侵害に対する対応等の知的財産権に関する業務について、知的財産に関する法令等を含む専門的知識を有し、研究者を支援して対外的な折衝に対応できる人材を、一般職員及び研究職員の中から育成する。
  • 広報担当者の育成
    研究成果の周知と普及・活用の促進、農研機構に対する国民の理解促進や認知度向上に有効な広報活動を行うため、研究成果の内容を良く理解し、最新の情報伝達手段を効果的に活用して、戦略的・計画的な広報活動を行う人材、また、英文ホームページ等を通して、海外に対する情報発信業務を担う人材を一般職員及び研究職員の中から育成する。
  • 情報システム管理者の育成
    情報システムの管理・運営、研究情報の収集・提供、データベースの構築・管理及び電子ジャーナル化の進展に伴う対応等により、高度化するネットワークシステムを有効に活用し、また、セキュリティ対策、ソフトウェア管理やネットワーク利用上の不正防止に関わるコンプライアンス等の専門的知識を要する業務を担う人材を育成する。
  • コミュニケーターの確保と育成
    科学技術に関する高度な知識を持ち、専門用語を平易な言葉に置き換え、国民の視点に立って、研究情報を整理し、国民とのコミュニケーションを醸成できる能力を有するコミュニケーターを育成する。このため、研究職員及び研究実務経験の豊富な再雇用者等の中から、科学技術を平易に解説できる人材を育成・確保する。

3)高度な資質を持つ技術専門職員の育成

高度化する試験研究業務に対応して、円滑に研究課題を推進するために必要な、ほ場や動物を使用する試験設計に基づく作業設計、各種試験調査、試験作物等の栽培管理、試験動物の管理等の専門的技術・知識を有する技術専門職員を育成する。また、職長としての責任と高度な管理能力・指導力を有する人材を育成する。

3.人材育成推進体制の整備と取組

2.の基本方針に従い、職員一人一人の能力を向上させ、専門分野を担う人材の育成を計画的に進めるためには、以下のような人材育成の推進体制を整備するとともに、研修、人材交流の強化等による能力向上機会の提供等、具体的な取組を充実する。

(1)能力向上のための研修方策等

1)研究職員の人材育成

  • 指導体制と環境整備
    研究職員の配属されている研究所等におけるOJT(On the Job Training)により、研究業務の遂行に必要な基本的な知識、技術等を習得させる。そのため、研究所長、研究領域長等が、研究職員の指導と育成に責任を持つ体制とする。また、研究所は、主体的に研修、セミナー等を実施する等、新たな知識、技術の習得のための環境を整え、研究活動の活性化、シーズ研究を醸成する人材の育成に努める。
    また、第3期中期目標期間におけるプロジェクト型の研究推進体制に沿った組織横断的なシンポジウム、セミナー等の開催、農研機構が主体的に実施する国内外のシンポジウムの開催等、農研機構内外の幅広い研究分野の研究者との交流を通じて研究視野を広げ、研究の深化につながる機会を作る等の環境を整備する。
  • 研修
    OJTと連携して、新規採用(若手)職員、中堅職員、管理職員等の各職員のライフステージに応じた研修を計画的に実施し、各ステージで求められる知識や能力の習得、強化を図る。その他、職務を遂行する上で必要とされる知識や技術等の習得のため、農林水産省や外部機関が実施する研修も活用する。
  • 在外研究員制度等の活用
    農研機構が実施する在外研究員制度、JSPS特別研究員やOECDフェローシップ等外部機関が実施する海外の大学及び研究機関等への留学制度等を活用し、研究職員の国際的な研究能力の向上や研究活動の活性化を図る。また、農研機構等で実施する国際シンポジウム・セミナー等を通じて、在外研究への関心を高め、必要な語学研修を実施する等在外研究員制度等の活用を促進する。女性研究者については、そのワークライフバランスを考慮して、在外研究員制度等の運用を図る。
  • 若手・女性研究者等の育成
    若手研究者等については、研究予算、研究機器等の研究環境に配慮しつつ、研究領域長及び専門分野が近い中堅以上の研究者が育成・指導に当たる。また、研究者としてスキルアップを図るため、語学研修や各種専門研修、国内外の留学制度等を活用して、専門分野の研究能力の向上を促進する。さらに、耕種、園芸、畜産、食品加工等の多様な生産現場において、農業生産やその経営実態等を知る機会を設けるとともに、生産現場における研究経験を積み、現場の問題解決に対応しうる研究者を育成する。研究分野にかかわらず、遅くとも40歳までには博士号を取得するように促す。
    一方、男女共同参画行動計画や次世代育成支援行動計画に基づき、性別に関わりなく、育児等と研究の両立が可能な支援体制を充実させ、研究支援や助成等の適切な運用を図る。また、研究意欲を高める取組として、ロールモデル等による懇談会、セミナー等を開催するとともに、キャリアカウンセリング、メンター制度等を活用し、キャリア形成の支援体制を充実する。
  • 研究マネジメント能力を備えた研究管理者の育成
    行政機関、大学、他の研究独法との人事交流、研究所等の企画部門への配置、生産現場における研究経験等の多様なキャリアパスの活用、リーダー研修やマネジメント研修等の各種研修制度の利用を通じ、幅広い知識、研究推進能力、研究マネジメント能力を有する人材を育成する。また、国際的視野に立った研究マネジメント能力の習得のため、在外研修等の方策を検討する。

2)産学官連携のコーディネート等に関わる部門の人材育成

  • 人材育成環境の整備
    これまでの農研機構内における経験蓄積が少ないことから、弁理士事務所、広報企画関連民間企業、情報関連民間企業、技術移転機関等、外部の専門機関の協力を得てセミナー、研修会等を開催し、人材育成のための環境整備に努める。専門的知識・技術の向上のために、基礎教育から応用能力の育成、資格取得という体系的カリキュラムを整備する。農研機構内外の人事交流により、産学官連携に関わる多様な職務への対応能力を育成できる環境を整備する。
  • 産学官連携コーディネーターの育成
    行政機関、地方公共団体等との連絡調整に加え、特許流通アドバイザー等の支援を受けながら異分野を含めた民間企業や大学との連携実務を行う中で、産学官連携活動の経験を深め、コーディネーターを育成する。研究職員、一般職員の中堅層をコーディネーター補佐として配置し、OJTによる人材育成を図る。生産現場、産業界、行政機関との情報受発信を強め、産学官連携活動により産業化に成功した事例の研修等を活用して人材育成を図る。
  • 知的財産担当者の育成
    知的財産に関する法令等の理解を深めるため外部研修等へ参加させ、専門的知識の習得を進める。農研機構で実施している資格取得支援制度により、資格取得を促進するとともに、対外的折衝等を通じたスキルアップのために、知的財産関連業務を実施している他の研究独法等との人事交流によりキャリアアップを図る。
  • 広報担当者の育成
    農研機構内外の研修を通じて、広報業務の基礎を習得させるとともに、効果的広報活動の事例について情報の共有化、人事交流等により人材育成を図る。
  • 情報システム管理者の育成
    外部講習の受講により情報リテラシーの向上に努めるとともに、内部においては情報セキュリティ講習、ソフトウェア管理講習等を実施し、情報システムの急速な発展に対応できるよう最新の専門的知識の習得を支援することにより、情報システム管理者の育成を図る。
  • コミュニケーターの育成
    農林水産分野における最新の技術発展を常にフォローし、その正確な内容について、専門家から情報を収集すると同時に、国民に正確でわかりやすい情報として解説できる能力を育成するため、農研機構内外の講師による科学技術コミュニケーション講座や大学・民間企業で行われている養成講座を活用する。

3)技術専門職員の人材育成

高度な資質を持つ技術専門職員の育成については、ほ場・動物を使用する試験設計に基づく作業計画、各種試験調査、試験作物等の栽培管理、試験動物の管理等の専門技術・知識を要する業務(コア業務)の質的向上を図るため、各研究所が講義・実習やOJTにより主体的に実施する。また、業務に関連する資格の取得に対して支援を行う。さらに、総括作業長、高度専門職、班長、専門職の、それぞれの職務における責任の自覚、管理能力・指導力の強化及び社会的見識の向上を図るため、研修や人事交流によりスキルアップを図る。

(2)人材交流等の強化

視野の拡大や柔軟な発想力を身につける等、能力の幅を広げる機会として、流動研究員、国内留学、依頼研究員制度等を活用しつつ、行政機関、公設試験研究機関、他の研究独法、大学、民間企業等との人材交流の促進を図る。また、公設試験研究機関、他の研究独法、大学、民間企業、海外・国際研究機関等との共同・協定研究を促進し、セミナーやシンポジウムの開催等それぞれの研究者等の交流の機会を設ける等、人材の流動性の向上を図る。

(3)その他

社会人大学院制度等を活用した博士号取得の奨励等により、研究職員の研究意欲を高め、資質の向上を図る。また、優れた研究成果を創出した研究職員に対しては、農研機構内における顕彰のほか、国等が実施する表彰制度への推薦等を行い、研究意欲を高める取組を行う。
連携大学院制度等を活用し、大学院生を積極的に受け入れるとともに、国内外からのポストドクター等を契約職員として雇用し、雇用責任者等の指導により、雇用期間中に研究業績を上げる等のキャリア支援を行う。

法人番号 7050005005207