花き研究所

淡黄色

フラボノイドによる淡黄色

フラボノイドにより淡黄色を発色しているオクラの花
フラボノイドにより淡黄色を発色しているオクラの花

花にはかならずフラボノイドが含まれており、白い花でもよく見るとわずかに黄色を呈しています。フラボノイドは可視領域の光をほとんど反射してしまうので無色ですが、黄色の可視領域(400~500nm)の光をわずかに吸収するため、高濃度に貯まると淡い黄色を呈します。アオイ科に属するワタやオクラの淡黄色の花は高濃度のフラボノイドにより発色しています。

カロテノイドによる淡黄色

一般にカロテノイドやベタレインは花弁に高濃度に貯まることが多く、花がこれらの色素により発色する場合は濃い黄色になります。淡い黄色の花色は、多くの場合フラボノイドによります。しかし、栽培品種の中には、まれにカロテノイドによって淡い黄色を呈している場合があります。そのしくみは植物によって様々です。

マリーゴールドの花は黄色から橙色をしており、白花の品種がありませんでした。19世紀のアメリカでは、白花のマリーゴールドの育種に懸賞金がかけられました。多くの育種家が白花を目指して育種しましたが、白い花を作ることはできませんでした。マリーゴールドの「バニラ」という品種の花は白色に近いといわれていますが、カロテノイドをわずかに貯めていて、白色というよりは淡黄色です。「バニラ」の花では、カロテノイドの生合成酵素遺伝子の多くが発現が低くなっていることから、カロテノイドの生合成量が少なくなったため、淡黄色になったと考えられます。カロテノイドは光合成に重要な役割をはたし、植物が生きていくために必要な色素なので、生合成系は頑丈にできています。そのため、花弁で働いているカロテノイド生合成系を壊して白い花をつくるのは大変難しいのです。アントシアニンの場合は生合成系が壊れて赤花から白花が生まれることがよくありますが、カロテノイドの場合は変異が起こらないので、黄花から白花が生まれることはほとんどありません。

キクの花弁のカロテノイド量と分解活性の関係
キクの花弁のカロテノイド量と分解活性の関係

キクに含まれるカロテノイド量は、カロテノイドを分解する酵素(CmCCD4a)によって調節されています。白色花弁ではCmCCD4aがたくさん発現し、合成したカロテノイドを全て分解してしまいます。一方、黄色の花弁ではCmCCD4aが全く発現していないので、合成されたカロテノイドが分解されずにたくさん貯まります。淡黄色の花弁では、白い花弁に比べるとCmCCD4aの発現が少なく、合成したカロテノイドを全て分解することができず、わずかに残っています。

トルコギキョウやペチュニアの淡黄色の花弁のカロテノイド組成を調べてみると、どれも同じような組成をしており、ルテインやβ-カロテンを主成分としています。これは、葉に含まれるカロテノイド組成と同じです。多くの植物では、つぼみや咲き始めのころには緑色をしています。これはクロロフィルが含まれているためです。このとき花弁でも光合成をしており、光合成に必要なカロテノイドが含まれています。一般にはつぼみの時期のクロロフィルやカロテノイドは開花が進むに従い消えてしまいますが、淡黄色の花では消え方が遅く、花が咲いたときにも残っているためと考えられます。トルコギキョウやペチュニア、などにはそのような品種があります。これらの花には濃い黄色の品種がありません。花弁特有のカロテノイドを合成する能力がないからです。黄色の花を目指して育種した結果、つぼみの時期のカロテノイドが残ったものが選抜されたのだと考えられます。

葉と同じ組成のカロテノイドを貯める淡黄色の花
葉と同じ組成のカロテノイドを貯める淡黄色の花
左:トルコギキョウ品種「あずまの調」 中央:ペチュニア品種「プリズムサンシャイン」 右:ヒメノアサガオ

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