花き研究所

黄色

黄色花色は様々な色素で発現している

黄色は自然界に最も多く存在する花の色です。一口に黄色といっても黄色花弁に含まれる色素組成は様々で、カロテノイドベタレインフラボノイドの3種類の色素のどれかによって作られています。最も多いのはキク、バラ、ユリ、スイセン、パンジー、ランなどカロテノイドによる黄花です。

カロテノイドにより黄色を発色する花
カロテノイドにより黄色を発色する花
上段左:キク品種「フロリダマーブル」 上段中央:バラ品種「ゴールドバニー」 上段右:ユリ品種「コネチカットキング」
下段左:黄房スイセン 下段中央:パンジー品種「フルーティーイエロー」 下段右:オンシジウム品種「アロハ・イワナガ」

カーネーション、ダリア、コスモス、デルフィニウム、ボタン、キンギョソウなどの黄花はフラボノイドのなかでも特に黄色味が濃いカルコンやオーロンにより発色しています。

フラボノイドにより黄色を発色する花
フラボノイドにより黄色を発色する花
左:カーネーション品種「ビクトリア」 中央:ダリア品種「イエローハット」 右:コスモス品種「イエローキャンパス」

ベタレインによる黄色はマツバボタン、オシロイバナ、ケイトウなどの、ナデシコ目に属する植物(ナデシコ科、イソマツ科、ザクロソウ科を除く)に限られています。

ベタレインにより黄色を発色する花
ベタレインにより黄色を発色する花
左:マツバボタン 中央:オシロイバナ 右:ケイトウ

花弁に含まれるカロテノイド:キク、バラ、ユリの例

カロテノイド生合成経路
カロテノイド生合成経路 <拡大表示>

日本で生産される花きの中で生産額が多いのはキク、バラ、カーネーション、ユリで、これらの花きは「4大花き」と呼ばれています。この中で、カーネーションの黄色はカルコンと呼ばれるフラボノイドによるものですが、それ以外はカロテノイドにより黄色を発色しています。多くの場合、花弁には多種類のカロテノイドが含まれています。また、植物の種類によってカロテノイドの組成が異なります。ここではキク、バラ、ユリの花弁に含まれるカロテノイドについて紹介します。

キクに含まれるカロテノイドはルテインやルテイン誘導体(ルテインが水酸基やケトン基によって修飾されたもの)が大半を占めます(成果情報1)。これはβ,ε-カロテノイドと呼ばれるもので両端にβ環とε環が一つずつ付いた構造をしています。カロテノイドの生合成は、リコペンから先が2つに分かれますが、生合成経路で見てみると、キクの花弁では大きく左側に偏っていることになります。

キク科に属する植物の花弁のカロテノイド組成を比較してみると、マリーゴールドやヒマワリも、キクと同じようにルテインやルテイン誘導体が主要なカロテノ イドでした。ガザニアやキンセンカ、オステオスペルマムでは、ルテイン誘導体以外にβ,β-カロテノイド(両端にβ環が付いているカロテノイド)も含まれ ていました。一方、ガーベラやジニアはβ,β-カロテノイドが主要なカロテノイドでした。このように同じキク科に属する植物でも、花弁のカロテノイド組成 は植物の種により大きく異なります。

ユリの黄色花弁に含まれるカロテノイドは、アンテラキサンチンやビオラキサンチンなどのβ,β-カロテノイドです。また、ユリの橙色花弁にはカプサイシンと呼ばれる黄色花弁には含まれていない赤色のカロテノイドが含まれています。

オールドローズと呼ばれるバラの古典品種には黄花の品種がありませんでした。1890年代に、ロザ・フォエティーダ (Rosa foetida) と呼ばれる黄花の野生種が交配に用いられるようになり、バラの花色の幅が広がりました。「アントワーヌ・デュシェ」と呼ばれるピンク色の花色のバラ品種に ロザ・フォエティーダをかけあわせて、1900年に黄花品種第1号「ソレイユ・ドール」が誕生しました。以後、「ソレイユ・ドール」を交配親に用いて様々 な黄花品種が誕生しました。

バラの場合は、カロテノイド組成が品種によって異なっています。また、β,β-カロテノイドを多く貯める傾向があります。例えば「ゴールドサム」や 「イエローメイアンディナ」はビオラキサンチンやゼアキサンチン、β-カロテンが主要なカロテノイドですが、「セレーネ」や「シューティングスター」はビ オラキサンチンやルテオキサンチンが主要なカロテノイドです。

関連する成果情報

専門家向け参考文献

総説:Ohmiya, A. (2011) Diversity of carotenoid composition in flower petals. JARQ 45: 163-171.
キク:Kishimoto, S., Maoka, T., Nakayama, M., Ohmiya, A. (2004) Carotenoid composition in petals of chrysanthemum (Dendranthema grandiflorum (Ramat.) Kitamura). Phytochemistry, 65, 2781-2787.
キク:Kishimoto, S., Ohmiya, A.(2009) Studies on carotenoids in the petals of Compositae plants. J. Japan. Soc. Hort. Sci.78: 263-272.
バラ:Eugster CH, Marki-Fischer E (1991) The chemistry of rose pigments. Angewandte Chemie International Edition in English 30, 654-672.
ユリ:Yamagishi, M., Kishimoto, S., Nakayama, M. (2009) Carotenoid composition and changes in expression of carotenoid biosynthetic genes in tepals of Asiatic hybrid lily. Plant Breeding, doi:10.1111/j.1439-0523.2009.01656.x

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