果樹研究所

一押し旬の話題

2012年4月 3日

桜寄贈100周年

米国への桜寄贈100周年の記念切手 3月27日に「米国への桜寄贈100周年」の記念切手が発行されました。明治45(1912)年に、当時の東京市長、尾崎行雄がアメリカのワシントンへ桜を寄贈したことを知らない人はいないでしょう。今でもポトマック河畔で盛大な桜祭りが行われており、テレビなどでもその様子が報道されています。
しかし、この贈られた桜の苗木3,000本を生産したのが、農林省農事試験場園芸部(現、果樹研究所カンキツ研究興津拠点)であったことは、意外と知られていません。最初に東京都からアメリカへ送られた木は、病害虫の付着がおびただしく、全て焼却処分になってしまいました。日本の名誉をかけ、苗木を作ったのは熊谷技師(後の果樹試験場場長)達、果樹研究所の職員なのです。ちなみに、熊谷場長は果樹研究所を退職後、元老・西園寺公望公の執事となった人です。
さった峠の桜 荒川堤の桜並木から枝を取り、「染井吉野」をはじめ、「関山(かんざん)」、「普賢象(ふげんぞう)」、「御衣黄(ぎょいこう)」、「駿河台匂(するがだいにおい)」など10品種、6,000本を育て、その内3,000本をアメリカへ贈りました。つくばの果樹研究所の構内にも、ワシントンに送った品種、「関山」、「普賢象」、「駿河台匂」、「御衣黄」を植えております。これらの品種は「染井吉野」と同じか、やや遅れて咲きます。真っ赤な八重桜、香り桜、緑の八重桜といずれも特徴がありますので、4月20、21日の一般公開の日にうまく開花が合うことを願っております。一般公開にはどうぞお越しください。
カンキツ研究興津拠点一般公開の様子 また、苗木を育成したカンキツ研究興津拠点のある、静岡市清水区興津(おきつ)の町では、興津商工会の主催で「興津宿寒ざくらまつり」を行っています。これもワシントンへ贈った品種の1つである「薄寒桜」で、興津の町中を3,000本で飾ろうというものです。早いものではもう20余年生の立派な桜の木となっているものもあります。カンキツ研究興津拠点の一般公開に合わせて、「薄寒桜」は2月上中旬に開花します。
今回の旬の話題は桜でしたが、八百屋さんでは「清見」、「デコポン」、「せとか」が美味しく食べられます。花見のお供に、どうぞご賞味ください。

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