果樹研究所

一押し旬の話題

2012年8月17日

シャインマスカット

シャインマスカット 
シャインマスカット

「シャインマスカット」という緑色のブドウを知っていますか?

最近漸くスーパーなどでも目にする様になってきましたが、2006年に登録された品種です。
ブドウの『マスカット』の風味は広く知られており、マスカット味の菓子やアイスキャンデーなどの製品も広く販売されています。
緑色ブドウの代表のようにも思われているかもしれません。しかしながら、マスカットの香りのするブドウは、日本のブドウ栽培面積のおよそ2%程度しか栽培されていません。

マスカット香は欧州ブドウに由来し、欧州ブドウはカスピ海や黒海の近辺が原産地で、降雨の少ない地中海地方に広がりました。
この気候に適応しているため、夏に降雨があると、病害が多く発生し、裂果や生理障害も発生しやすいため、雨の多い日本での栽培は難しく、あまり栽培できませんでした。
高価で販売される「マスカットオブアレキサンドリア」は栽培が難しく、岡山県のガラス室などの施設の中で栽培されてきました。

では、雨の多い日本で広く栽培されてきたのは、米国ブドウの「デラウェア」、「キャンベルアーリー」などです。
これらの米国ブドウは病害や裂果に強く、明治以来、日本で栽培される主流でした。
果粒が大きくなく、噛み切りにくい肉質で、米国ブドウの特徴であるフォクシー香があります。
その食味を改良して欧州ブドウに近づけようと、米国ブドウと欧州ブドウが交配され、「巨峰」、「ピオーネ」などが生まれましたが、「巨峰」や「ピオーネ」もフォクシー香で、肉質も欧州ブドウのような噛み切りやすさは得られませんでした。

欧州ブドウと米国ブドウを交配しても、子の特性はその中間のものとなり、一般に欧州ブドウの味にはなりません。

果樹研究所では、欧州ブドウと米国ブドウの交配を長い間粘り強く続け、肉質が「マスカットオブアレキサンドリア」に近く、やや大粒の「安芸津21号」を選抜したのです。
この系統はマスカットとフォクシーの香りが混ざった香りで、良い香りではありませんでしたが、後代では分離してマスカット香の子を得ることができます。
そこで、この系統に、できるだけ大粒の様々な欧州ブドウを交配したのです。

その結果、それらの子の中から、マスカットの香りがあり、「マスカットオブアレキサンドリア」と同様の噛み切りやすくて硬い肉質の大粒・黄緑色ブドウを選抜し、「シャインマスカット」として発表しました。
容易に種なし栽培ができ、果皮が薄くて渋みがないため、皮ごと食べられる特性があります。
裂果も発生せず、べと病や晩腐病などの耐病性も一定程度強く、露地あるいは簡易なビニール被覆での栽培が可能で、栽培が容易です。

このような育種は、年月がかかり、大きな規模が必要です。国立の研究機関ならではの研究成果といえましょう。

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