農業環境技術研究所 > データベース・画像 > 宇宙から見た日本の農業

5.十勝(北海道)

宇宙から21世紀の十勝農業を見る

 <1984年5月21日観測画像>

北海道十勝地方は総面積は約1.1万平方キロで,そのうち耕地面積が265千ヘクタールを占め,農家一戸当りの耕地面積は約24ヘクタールにのぼり,大規模畑作農業が展開されている(昭和63年度)。農作業は機械化され,面積比率で飼料作物45%,小麦16%,テンサイ12%,バレイショ10%,マメ類13%,野菜4%が作付されている。最近十勝も内外からの厳しい荒波を受けていることは稲作同様で,食糧生産基地として21世紀に存続するためのみちを模索している。特に技術開発の面では,国際競争力に耐え得る低コスト化,高品質・安全農作物の生産などが強く求められている。そこで,低コストと品質の面から将来のことを考えてみたい。

各種土壌改良の積み重ねによる基盤整備が不良特殊土壌での各種耐寒性畑作物の定着を可能にしてきた。しかし,現在の耐寒性とされている主要畑作物にとって,十勝の気候,土壌が決して最適条件ではないことを認識する必要がある。ヨーロッパやカナダに比較して十勝は春期に低温で,夏期に多雨である。このことが小麦の穂発芽や根菜類の多汁質化を招き,十勝の畑作生産を不利にしている。

品質を規制する糖含量は窒素供給の多少と同時に,水分供給にも影響される。体内の糖含量と水分含量との間には負の関係があるので,水分供給能の高い土壌では多汁質で低糖分の作物を生産することになる。量から質が重視されるようになり,土壌の評価も変ってきた。例えば,従来多収を得るところから一等地とされてきた養・水分供給能の高い沖積土壌に代わって,水分保持能および窒素供給能が低く不良土壌とされてきた乾性火山灰土壌が品質の面から一等地になろうとしている。実際に乾性火山灰土壌では養分の人為的コントロールが容易で,高品質の作物が得られている。

この画像は上記の土壌の複雑な分布を見事に我々に教えてくれる。淡いピンク〜灰色は沖積土壌,淡い紫〜茶〜黒茶は火山灰土壌で,いずれも淡いほど土壌が乾燥していることを示す。さらに,この写真の持つ情報から腐植含量や水分含量の多少を知ることができる。腐植含量については既に十勝全域の分布図を作成することが出来た。その腐植分布図を従来の土壌図と対比すると,同じ土壌型に区分されている地帯が2〜3つの水準の腐植含量に区分される。換言すると,同じ土壌型でも水分と窒素供給力にかなりの幅があることを示してくれる。従来,同じ土壌型では肥培管理や土壌改良の基準が同じなのが一般的であり,不必要な経費投入がなされている可能性がある。低コスト・高品質化のためには,よりきめの細かい土壌水分の制御と肥培管理が必要である。

量から質の時代になれば,コストの多少により適地の範囲は限定される。それ故に,今,宇宙からの農業生産情報の収集と利活用が21世紀の十勝農業の存続の大きな鍵を握ろうとしていると思われる。それは,大規模農業ほど小さな合理化が収益の増大に結びつくからでもある。しかし,リモートセンシング技術は低コスト,高品質生産の直接的な技術ではない。あくまでも農業環境の状況を正確につかんだ情報を,技術および営農にどのように活用するかが重要である。

畠中哲哉(草地試験場)

目次ページへ 前のページヘ 次のページへ