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14.大潟(秋田)

干拓地の大型田畑複合農業

 <1984年6月4日観測画像>

大潟村は,八郎潟の干拓によって生まれた新しい村である。かって八郎潟は総面積220平方キロで,琵琶湖に次ぐわが国第二の湖であった。昭和32年からの国営干拓事業によって湖の172平方キロが干拓された。事業開始以来20年の歳月と850億円の巨費が投じられ,八郎潟新農村建設事業が完了したのは昭和52年3月である。延長52キロメートルに及ぶ大堤防に囲まれた大潟村とそれをとりまく捷水路と調整池がランドサット画像にはっきりと撮しだされ,その規模の大きさをしることができる。

入植営農は昭和43年に開始され,現在589戸の入植農家が,1戸当り耕作面積15ヘクタールで,大型機械を使用する田畑複合経営を行っている。1983年度(画像前年)の作付面積は水田,畑とともに7.5ヘクタールである。1983年度の作物別栽培面積は,水稲4,468ヘクタール(47.4%),秋播コムギ3,471ヘクタール(36.8%),ダイズ537ヘクタール(5.7%),アズキ371ヘクタール(3.9%),オオムギ348ヘクタール(3.7%),カボチャ・メロン等300ヘクタール(2.5%)であった。

しかし,現在(1987年度)では,秋播コムギ400ヘクタールに対してオオムギは1,500ヘクタールと多くなっている。コムギは梅雨末期の7月中旬に収穫期になるため,倒伏,赤かび病,穂発芽の発生で減収しやすく,また収穫の遅れが後作に影響する。これに対して,半月収穫の早いオオムギが後作及び収量の安定性から増加している。ただオオムギは用途が飼料用に限られている上,価格が安いので,コムギの作付が望ましい。そのためにコムギの早生化が必要である。

秋播コムギ・オオムギ,ダイズ等の収量も次第に向上しているが,年次による変動が大きい。これは土壌が重粘土のために多雨や過干による生育阻害を受けやすいからであり,今後は根粒菌を活かした追肥法などで生育をコントロールすることを考えている。

一方,水稲は昭和43年入植開始時の栽培体系は直播栽培による水稲単作であったが,土壌条件が悪かったため,苗立が不良で収量は極めて低かった。しかし機械移植栽培が導入された昭和47年以降収量は次第に向上し,干拓直後の急激な乾燥・溶脱が終了し,作物生育が安定するにつれて,県平均を上回る多収地帯となりつつある。水稲10アール当りの収量は,平均601キロの水準に達し,稲作労働時間も10アール当り約23時間と減少し,秋田県平均の1/2以下となり,生産性の高い農業経営に向かっている。干拓後続いていた八郎潟調整池水の塩分濃度低下は,現在では一定になっている。水質問題に関しては,生活排水や農耕地からの流出水が増加傾向にあり,CODあるいはT−Nの変化に注目していく必要がある。

一筆面積の大きい大潟村では,低コスト化に向けて省力のためのさまざまな動きがある。たとえば,常用田植機に深層施肥機をとりつけ,追肥の省略を目的とした深層施肥や近い将来に実用化が期待される小型無人ヘリコプタの利用である。ヘリコプタによるリモートセンシングで生育状況を診断し,施肥・薬散することにより,労力,資材の節約が期待されている。

福原道一(農業環境技術研究所)
長野間宏(農業研究センター)

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