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21.宇都宮(栃木)

米麦中心から首都圏農業へ

 <1987年5月21日観測画像>

栃木県は,東西約84キロメートル,南北約98キロメートルのほぼ楕円形をなし,北西部に2,000メートルをこえる那須や日光の山々,北東部になだらかな八溝山地を控えている。県全体が南向きの斜面となっており,那須や日光に源を発する鬼怒川,那珂川等の河川が南流している。画像は,県央の宇都宮付近を中心として,県北及び県南の農業地帯の一部を含んでいる。5月21日に観測されたこの画像では,鬼怒川をはさんだ両側と北部の大田原,西那須野周辺に,既に田植えの終わった水田が黒っぽく見える。

鬼怒川流域では江戸幕府の成立と前後して用水開発が進められ,水田が開かれていた。これに対して,県北の那珂川と箒川に囲まれた那須野原地域は,地下水位が低いために明治に入るまでほとんど農民の鍬が入らず,「南部に一樹なく,北部の地に点々老松の存立するを見るのみ」といわれたほどであった。しかし,明治18年に那須疏水が開通して開拓が進み,戦後国営総合開発パイロット事業等によって農地造成・水田化が急速に進展した結果,今日では都府県有数の大規模稲作農家の集中地域となっている。

下方の栃木市周辺にぼんやりした緑色が見えるのはムギ(主としてビールオオムギ)である。本県はビールオオムギの生産量が全国一で(約4.5万トン),県内では栃木市や小山市の周辺に作付けが多い。この地域のビールオオムギは,4月中〜下旬に出穂し,6月10日前後に収穫される。画像に見られるムギは,もうすぐ麦秋に入る時期といったところであろうか。田植えは,ムギの収穫後6月下旬に行なわれる。

昭和50年代には県南のビールオオムギ地帯に土壌伝染性の縞萎縮病が多発し,一時は作付ができなくなるのではと心配された。しかし,ミサトゴールデン(昭和60年,栃木農試栃木分場)などの抵抗性品種が育成され,危機を乗り越えることができた。ミサトゴールデンの種子は,同じ病害に悩まされているフランスの種苗会社に分譲され,試験的に栽培が行われている。

農業粗生産額は約3千億円,品目別では米(37%),畜産(27%),野菜(21%)がベスト3である。全国でトップを争うイチゴを始め,ナス,トマト,ニラ等は上位の生産をあげているが,全体としては野菜・果樹・花きが農業に占める割合は比較的小さい。生産調整によって水稲の比重が減少しているとはいえ,なお普通作物主体である。県では園芸作物の振興を積極的に展開して,米麦・畜産とバランスのとれた生産構造を持つ首都圏農業の展開をめざしている。一方,水田率が77%と,全国平均(54%)に比べて極めて高いことも栃木県の大きな特徴である。農業をめぐる厳しい情勢の中で,水田の有効利用を図る地域水田農業の確立は,最も大きな研究課題のひとつである。また,農作物の消費者ニーズへの対応という観点から,水稲・麦類の良質品種への切り換えが進められており,水稲についてはコシヒカリが約60%,コムギでは農林61号が95%以上の作付面積を占めるに至っている。しかしながら,単一品種への集中化は,不適地での作付拡大に伴う品質・収量の低下という問題を常にはらんでいるため,これを解決するための栽培条件の確立,あるいは地域に応じた適品種の選定という課題が試験研究側としては今後一層重要になってくると思れる。

佐々木昭博(栃木県農業試験場栃木分場)

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