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25.北総台地(千葉)

首都圏の野菜供給基地

 <1987年7月24日観測画像>

千葉県は,北に利根川,西に東京湾,南と東は太平洋に面し,四方を河川と海で囲まれている。標高は30〜50メートルの地域が多く,日本でも数少ない,山地を持たない県である。県の総面積は5,081平方キロであり,耕地面積は147,500ヘクタール(耕地率29.0%)で,その内水田が59%,畑が41%を占めている。画像は成田空港を中心にとらえたもので,北総台地(下総台地)のほぼ全容を撮し出している。この台地は東西の広がりが約90kmで日本でも最大規模である。また右部分には海岸線に沿って九十九里低地が撮し出されている。

北総台地には周辺部から樹枝状に侵食する谷津田が多数認められるが,中央部から東部の大栄,佐原に広がる平坦な畑地帯は全国一の野菜生産高をあげる原動力となっている。この台地を覆っている関東ロームは噴出源の富士,箱根から遠いため,粒子の細かい礫を含まない柔らかな火山灰土壌である。これを生かしてサツマイモ,ゴボウ,ダイコン,ニンジン,サトイモなどの土物の栽培が盛んである。また,スイカ,トマトなどの果菜類やキャベツ,ホウレンソウなどの葉菜類の生産も盛んで,多品目の野菜生産地帯を形成し都心への重要な野菜供給基地となっている。

しかし北総台地が現在抱えている問題も多い。病害虫による連作障害は他県と同様に多発しており,規模拡大,機械化による農法の変化も新たな問題を発生させている。長根菜類の栽培に必要なトレンチャ,深耕ロータリなどによる深耕の普及は,自然の土層を大きく変え,火山灰土(黒ボク土)地帯の黒いイメージは心土の赤い色でぬり変えられている。このために土壌の保水力が低下し,重機による土壌の圧密化と合わせて,作物の生産を不安定にしている。また,冬期の麦類の減少による裸地の増加は,風食を激しくしており,作物のみならず,居住環境へも悪影響を及ぼしている。

最近では,夏期の長雨により,いたる所に滞水した畑ができ湿害が重要問題になっている。原因として,マルチ栽培や畑地の圧密による透水の低下が指摘されている。また,反対に年によっては記録的な干ばつになることがあり,畑地潅漑は作物の生産安定と高品質を維持するための重要な技術となっている。そのため,現在,北総東部用水,成田用水,東総用水,中央用水の四大事業が進められ,水を生かした高位生産農業が展開されている。

一方,九十九里低地と利根川低地は県内では最も広い水田地帯であり,基盤整備によって区画整理が進み,機械化,低コスト化が進められようとしている。本県は湿田の割合が約80%で全国でも3本の指に入るほど高く,水田の汎用化に際しての障害となっている。基盤整備に伴って乾田化への変化も認められているが,未だ排水不良の湿田も多く,改良対策上水田の広域的な乾湿の区別が必要となっている。

今,千葉県の農業は,後継者の減少などに伴い,新たな農業経営形態に移行しようとしている。一方で集約的で特殊な技術を持つ集団が生み出され,一方では3ヘクタール以上の農地を有する農家戸数の増加がみられるように,広い農地での機械化,合理化の進んだ集団が生み出されつつある。このような農業が成熟期を迎えた時,広域的な調査が可能なリモートセンシングの農業利用は広がってゆくことになろう。

真行寺孝(千葉県農業試験場)

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