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36.三河・知多(愛知)

高所得を維持する先進的園芸・畜産農業

 <1986年3月13日観測画像>

画像の地域は,愛知県南部の東三河(豊橋平野と渥美半島),西三河(岡崎平野),知多(知多半島)の三つの農業圏に分けられる。気候は比較的温暖で,年平均気温15〜16℃,年間降水量1,600〜1,700ミリ前後である。冬の季節風は強く,また一部には無霜地帯もある。

東三河は,農業所得が大きい地域である。農家一戸当り農業生産所得は,赤羽根町が630万円,渥美町が560万円等となっており,全国平均の110万円を大きく上回っている(平成元年度)。これらの町は専業農家が50%を越え,農業への熱意も高い。昭和43年に豊川用水の全面通水した後は,サツマイモ,コムギを中心とした農業は園芸,畜産を主体とした農業経営に一変した。特に露地野菜,施設園芸等は,全国屈指の集団産地を形成している。施設野菜はメロン,トマト,ミニトマト,イチゴ,サヤエンドウが主体を占め,とくに温室メロン,東三河特産の促成つまもの野菜の大産地である。露地野菜は春夏作にスイカ,露地メロン,スイトコーン,秋冬作に冬キャベツ,秋冬ハクサイなどが集団的に栽培されている。豊川市,渥美郡一帯の電照ギクは全国の28%を占め,またスプレーギクも75ヘクタールで日本一の産地となっている。果樹では,蒲郡市・御津町の「ハウスミカン」,豊橋市の「次郎柿」,豊橋市・小坂井町の「種なし巨峰」が有名である。この地域の畜産は,養豚,肉用牛,酪農,養鶏ともに近年大型化が定着し,県内生産額の43.6%を占めている。

西三河地域は,日本の「デンマーク」と呼ばれる代表的な農業地帯であった。この地域は矢作川を水源とする明治用水などにより水利条件に恵まれ,稲作・野菜を主体として発達した。近年では,畜産・果樹のほか施設園芸なども急速に伸びている。碧南・安城両市のイチジクおよび西尾市のてん茶生産は全国一のシェアを占めている。珍しいものでは幸田の筆柿は古くから「珍宝柿」として親しまれ,海外へも輸出されている。

名古屋市南部の知多地域は,昭和36年の愛知用水の通水による畑地かんがい施設の整備と,45年の知多半島道路の開通により,名古屋市の都市近郊農業として発展してきた。施設野菜のフキ,露地野菜のペコロス,花卉類の洋ランが全国一,全国屈指の産地となっている。酪農では乳肉複合経営が進み,一戸当り飼養規模では全国一である。また養豚では2階建豚舎,養鶏では高床式鶏舎により規模拡大がはかられている。現在,半島最南端では,国営農地開発事業として,残されている山林,原野で602ヘクタールの農地造成が進められている。

このように,三河・知多は全国屈指の農業生産地として発展してきた。しかし,この地域はまさに日本農業の縮図である。すなわち,@鉱工業用地及び宅地化による耕地面積の年々の減少,A中山間地農業の衰退と過疎化,B水田転作による野菜・花卉等施設栽培の増加,Cビニールマルチ・トンネル,かんがいによる周年集約栽培,D施設の近代化と輸入穀物飼料による草地なき畜産,E農業労働者の雇用問題,等々である。

当地の生産基盤である土壌は,主に鉱質土壌(赤黄色土)である。この鉱質土壌の人為負荷に対する緩衝能は他の土壌に比べて小さい。人為負荷は今後ますます強められるであろう。したがって,今後は低投入及び生態系調和による環境保全的持続型農業の確立が重要となろう。

吉野昭夫(北海道農業試験場)

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