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37.濃尾平野(愛知・岐阜)

求められる環境と調和した野菜生産

 <1986年3月13日観測画像>

濃尾平野はわが国の中央に位置し,関東と関西の単なる通過点ではない中部地域経済圏として新たな発達がみられる。いま,この地域では水に関係する環境問題を考える拠点としても注目を集めている。

濃尾平野は愛知県(尾張)と岐阜県(美濃)にまたがり,面積は約1,800平方キロで日本第2の平野である。主な河川は画像左から揖斐川,長良川,木曽川で,最も右側にやや細い庄内川がある。濃尾平野は,これらの河川が運んだ土砂の堆積によって形成されたものである。

これらの河川が形成した自然堤防に集落や畑が発達し,後背湿地は水田として利用されている。とくに木曽川下流右岸の低湿な沖積地域にみられる囲堤は輪中と呼ばれている。これらの地域の作物生産力は高いが,洪水害や地盤の高低などによる水問題の抗争なども多かった。木曽川左岸の堤防「御囲堤」(1601年築堤)や近世中期(1754,55年)の三川分流工事,明治以後の三大川改修工事,昭和の濃尾用水整備などによってそのような問題を回避してきている。最近,濃尾平野では都市化が著しく進み,農業は近郊地帯として露地野菜ばかりでなく施設園芸なども盛んになってきている。

木曽川が伊勢湾に注ぐ河口部の左岸の所に,木曽岬干拓地がみられる。画像ではやや黄白色にみえる所である。1950年から水田造成として開始され,途中で一時中断されたが,その後野菜供給地帯として再計画され,1973年に干陸し,約370ヘクタールの農地が造成された。この干拓地土壌は褐色低地土,灰色低地土,グライ土に分類されている。野菜生産のための干拓事例は少なく,そのために様々な問題が発生する。例えば,高温期ではジャガイモ,ニンジンなどはわずか1日の停滞水でも根部が腐敗することが報告されている。また,砂質土壌でもすぐに硬盤が形成したり,硫酸酸性土壌の出現や乾燥に伴う土壌の変化が激しいなどの問題も出ている。高品質な野菜生産のためには地下部の水分制御が重要で,潅水施設ばかりでなく強制排水施設の整備も不可欠になっている。

岐阜県各務原市では地下水の硝酸汚染が確認され,その主因はニンジン生産に使用されている窒素系肥料の過剰施肥にあるとされた。上水道用の水源地への汚染も懸念されたことから,営農,環境保全の両面から施肥体系が見直された。最近,窒素施肥量を約30%減らして,現行肥料であれば2回の追肥,被覆肥料を用いる場合には基肥1回の新施肥法が確立された。

長良川は全国で唯一ダムのない一級河川で,河口堰建設に対して自然保護,環境保護の立場から反対運動が起こっている。長良川河口堰はこれまでの環境アセスメントを踏まえて治水,利水を目的とした可動式堰で1988年から建設されているが,最近,新たな自然生態などに関する追加調査を行うことになってきている。

野菜の生産体制の強化を図るために,労働力の制約,生産性の向上と安定生産の実現,環境と調和した生産が必要とされている。その中で,都市化が進み水質汚濁が懸念され,環境と調和した生産技術が求められている。この地域では,治水や利水整備を行ってきたが,いま水の質あるいは水をとりまく自然生態系の維持に問題が投げかけられている。長く水問題に挑み,そして解決してきたこの地域から新たな知恵が生まれるものと期待されている。

保科次雄(野菜・茶業試験場)

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