農業環境技術研究所 > データベース・画像 > 宇宙から見た日本の農業

41.京阪奈丘陵(近畿)

京阪奈丘陵の開発と21世紀の農業にむけて

 <1984年9月6日観測画像>

近畿の農業は,条里制の名残りをとどめる農地の区画と経営耕地規模の狭小性に特徴づけられる。ちなみに,農家1戸当りの平均経営耕地は59.6アールで,全国の都府県平均89.1アールを大きく下回っている(1990年)。しかし,気温,日照時間の点で,農業にとって良好な気象条件に恵まれ,集約的栽培による高生産性農業への取組みも早かった地域である。

画像は,大阪府,京都府南部,奈良県北部を中心とする近畿圏の都市近郊農業地帯をとらえている。画像中央やや上で桂,宇治,木津の三川が合流した淀川が,画像の中央を流下して大阪湾に注いでいる。この淀川の流域に耕地が拓かれ,洪水害と干害に耐えるための土地改良を行うことにより,長い歳月をかけて近畿圏の豊かな農業生産基盤を築き上げてきた。この地域は,高度経済成長期以降商工業の立地に拍車がかかり,農業以外の産業基盤や京都,大阪等への通勤者の居住空間としても多様な発展を遂げてきた。画像左側中央部の大阪国際空港や縦横に走る高速道路網が,この間の地域の変貌を象徴している。

こうした急速な都市化・混住化により近畿圏の農業地域は大きな影響を受け,特に淀川左岸地域では市街地の中にわずかに農地が点在する有様となっている。しかし,農業生産の核となる農業地帯も数多く残っている。近畿2府4県の総農家数は375,450戸で,このうち1割強の42,241戸が専業農家である。若年男子農業専従者の激減による農業の担い手問題を内在しつつも約22.4万ヘクタールの農地を経営している。

生駒山系から金剛山地の裾野に広がる大阪府南部の農業地帯や淀川右岸の北摂地域,奈良市の南に広がる大和平野は,近畿圏でも有数の農業地帯である。この中で大和平野は寡雨地帯に属し,土地改良による水利対策がなされるまでは長く天水に依存していた。画像右下部の大小の農業用ため池がこの地域の農業を特徴づけている。このほか画像中央右側の木津川流域,宇治市南部の傾斜地に広がる茶畑地帯,観光農園を含む丘陵の果樹園地帯などが指摘できる。

木津川に沿って下ると,造成中の関西学術研究都市の中核地区が,灰白色で表示されているのがわかる。条里制の跡がわずかに読みとれる水田地帯の中に小さな市街地が多く識別されるが,これらは鉄道駅周辺の開発やスプロール的宅地開発である。

京都,大阪,奈良の3府県にまたがる京阪奈丘陵は,周囲を生駒山系や笠置山系が取り囲み,平坦部は木津川の沖積地が肥沃な水田地帯を形成している。耕地の約85%が水田で,樹園地では茶・カキ・モモ・ブドウ等が栽培されている。土壌は褐色森林土,褐色低地土,灰色低地土,グライ土が卓越している。

京阪奈丘陵では関西学術研究都市の開発が進められており,地域の大規模プロジェクトとして土地・水利用の上から農業への様々なインパクトが予測される。これに伴い,高度な都市機能集積と隣接して,高度な技術体系とバイオテクノロジーに支えられた農業の展開や観光農園,体験農業など農業・農村の多面的機能の発現が21世紀にむけて強く求められている。このためには地域基盤を総合的に整備することにより,丘陵部や平坦部の優良農地が学研都市の建設・発展と調和しながら保全されていく必要がある。

石田憲治(農業環境技術研究所)

目次ページへ 前のページヘ 次のページへ