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49.山口

はな・うし・やさいを推進する山口農業

 <1985年5月2日観測画像>

画像は日本海に臨む萩市から瀬戸内海の防府市までを縦断する山口県中央部である。山口県は三方を海に囲まれ,内陸部は中国山地の西端にあたり,標高500メートル以下の小起伏の丘陵が多く,大平野,大河川が少ない。このため気候の地域差は小さく,冬には北西季節風が卓越するが,農業の気候的条件としては比較的恵まれている。

県面積約6千平方キロの内森林が72%を占め,これに次ぐ農用地は10%の61千ヘクタールである(平成3年)。地目別では水田80%,樹園地10%,普通畑9%,牧草地1%で,水田率が非常に高い。年々,耕地面積が減少していく中で,水田の割合はほとんど変化していない。一方,水稲の10アール当たりの収量は平均474キログラムで全国平均486キログラムと比べて10キログラム以上の差がある。

棚田,傾斜畑が多いのも山口農業の特徴である。傾斜が20分の1以上の急傾斜の土地に造成された棚田の割合は22%(昭和58年)で全国平均(15%)に比べて高く,1万ヘクタール強の広がりを持っている。一方,畑も15゜以上の急傾斜地が29%と全国平均(10%)より高い。山間地の恵まれない土地条件のなかで旺盛な開発が行なわれてきたことを示している。阿東町付近では田植の終わった山間地水田が画像では青色あるいは濃青色にみえる。

画像上部の阿武萩地区には,台地を利用した野菜や果樹,飼料作物の畑が見える。また日本海に浮かぶ島々ではスイカやキュウリ等が栽培され,特に大島のスイカは県の特産品である。

画像左には褐色の四辺形をした秋吉台やその左下の美祢市伊佐付近に白く石灰岩の採掘場が見える(画面中央部に点在するのは雲である)。秋吉台は,カルスト台地で,面積は約130平方キロとわが国で最も規模が大きい。海抜200〜400メートルの起伏に富んだ台地であって,中央を流れる厚東川によって二分され,北東部が国定公園や特別天然記念物の指定を受けている狭義の秋吉台で,南西部は岩永台と呼ばれている。二畳紀から石炭紀にかけて,浅海でサンゴ類,有孔虫,石灰藻などの生物の遺骸が堆積し,古生代末期の地殻運動によって陸地化したものである。この台地は山口県育成牧場などいくつかの牧場として利用されている。

画像下部の瀬戸内海沿岸の阿知須町や防府市の干拓地では大規模な水田農業が行われている。しかし,瀬戸内海沿岸は工業の発達が著しく,農村の労働力を飲み込んでいる。昭和30年代後半以降農業の占める割合は低下し続け,昭和30年と昭和60年を比較すると,例えば農家人口の割合は42%から20%,農業純生産割合も15%,60年1.8%に減少している。このような中で,最近では,農業の担い手の見直しや,より一層の省力化を目指した新しい動きも出始めている。

山口農業は,古くは「三白政策」,戦後は「こめ」「うし」「ミカン」を柱に生産性を向上させてきた。

いま,山口県は農林業基本構想を打ち出し,農業振興の目玉として「はな」「うし」「やさい」を推進している。JR山口線を走るSL山口号に乗ると,阿東町の船方総合農場あるいは鍋倉の観光リンゴ園等,これからの山口農業の息吹にふれることができる。

久保敏郎(山口県農林部)

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