独立行政法人農業環境技術研究所の中期目標
 
 
 平成13年4月1日付け(農林水産省指令12農会第2923号)で、農林水産大臣から独立行政法人農業環境技術研究所理事長あてに、「独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第29条第1項の規定に基づき、独立行政法人農業環境技術研究所中期目標が別紙のとおり定められたので、同項の規定により指示する。」旨の連絡が入った。中期目標の内容を以下に示す。
 
第1 中期目標の期間
独立行政法人農業環境技術研究所(以下「研究所」という。)の中期目標の期間は、平成13年4月1日から平成18年3月31日までの5年間とする。
 
第2 業務運営の効率化に関する事項
運営費交付金で行う事業については、中期目標の期間中、毎年度平均で、少なくとも前年度比1%の経費節減を行う。
 
1 評価・点検の実施
独立行政法人評価委員会(評価委員会)の評価結果は、資源配分、業務運営等に適切に反映させる。評価委員会の評価の効率的かつ効果的な実施に資するため、研究所自らにおいても、運営状況、研究成果について外部専門家・有識者等を活用しつつ、業務の点検を行う。また、研究職員については、公正さと透明性を確保した業績評価を行い、評価結果は研究資源配分等に反映させる。
 
2 研究資源の効率的利用
外部資金の獲得、研究資源の充実・効率的利用、施設機械の有効利用等を図る。
 
3 研究支援の効率化及び充実・高度化
研究業務の高度化に対応した高度な専門技術・知識を有する者を配置する等、研究支援業務の効率化、充実・強化を図る。また、必要に応じ、外部委託等の活用を図る。
 
4 連携、協力の促進
 
他の独立行政法人との役割分担に留意しつつ、研究目標の共有、共同研究、人的交流の促進を行い、独立行政法人全体としての農林水産業等に関する研究水準の向上を図る。また、研究の効率的な実施のため、国公立機関、大学、民間、海外機関、国際機関等との共同研究等の連携・協力及び研究者の交流を行う。
 
5 管理事務業務の効率化
事務処理の迅速化、簡素化、文書資料の電子媒体化等による管理事務業務の効率化を行う。
 
6 職員の資質向上
職員への研修、資格取得等の促進を通じた資質向上に努める。
 
第3 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項
 
1 試験及び研究並びに調査
 
(1)重点研究領域
平成11年7月に制定された「食料・農業・農村基本法」及びその理念や施策の基本方向を具体化した「食料・農業・農村基本計画」並びに平成11年11月に策定された「農林水産研究基本目標」に示された研究開発を推進するため、研究所においては、「農業生態系の持つ自然循環機能に基づいた食料と環境の安全性の確保」、「地球的規模での環境変化と農業生態系との相互作用の解明」、「生態学・環境科学を支える基盤技術」に関する研究を重点的に推進する。また、緊急に解決すべき問題については、研究開発を積極的に推進する。なお、研究開発に当たっては、安全性の確保に十分配慮する。
 
(2)研究の推進方向
研究に係る目標の作成に当たって、次のように定義した用語を主に使用して段階的な達成目標を示す。また、研究対象等を明示することにより、達成すべき目標を具体的に示す。
 
 取り組む:新たな研究課題に着手して、試験及び研究を推進すること。
 解明する:原理、現象を科学的に明らかにすること。
 開発する:利用可能な技術を作り上げること。
 確立する:技術を組み合わせて技術体系を作り上げること。
 
ア 農業生態系の持つ自然循環機能に基づいた食料と環境の安全性の確保
 
(ア)環境負荷物質の動態解明と制御技術の開発
a ダイオキシン類の異性体組成の解析に基づいてイネ等の作物体の汚染経路の解明に取り組む。また、特定集水域水田土壌から農業排水系への流出実態を解明する。
b カドミウム等微量元素の農耕地土壌に対する負荷経路を解明する。また、水稲・大豆を対象としてカドミウムの吸収に影響を与える要因を解明するとともに、子実への吸収量が少ない品種を検索する。
c 土壌・水系における硝酸性窒素等の流出過程を解明するとともに、中規模流域を対象とした硝酸性窒素の負荷流出予測モデルを開発する。
d 環境負荷物質の浄化技術に資するため、微生物による農薬等難分解性有機化合物の分解能解析技術及び土壌中での分解菌接種技術を開発する。
e 環境負荷物質のリスク評価に資するため、藻類等水生生物に対する農薬の影響評価法を開発する。
 
(イ)人為的インパクトが生態系の生物相に及ぼす影響の評価
a 遺伝子組換え作物・微生物の導入が環境に及ぼす影響を評価するため、導入遺伝子の環境中での追跡手法の開発、遺伝子拡散実態の解明を行う。また、開放系利用が可能となった組換え作物の長期モニタリングに取り組む。
b 寄生蜂等の導入生物が農業生態系の生物相に及ぼす影響の評価手法を開発する。
 
(ウ)農業生態系の構造と機能の解明
a 農業生態系内の生物の生育阻害・促進に関わり個体群動態を規定する環境要因を解明するため、菌核性糸状菌の増殖と土壌微生物相との関係及びハムシ等の昆虫個体群動態と植生構造との関係を解明する。
b 農薬散布や他感作用を持つ植物の導入等の農業生産活動が生物群集に及ぼす影響をモニタリングするとともに、生物群集の構造と遺伝子等の多様性に及ぼす影響を解明する。
 
イ 地球規模での環境変化と農業生態系との相互作用の解明
 
(ア)地球規模の環境変動が農業生態系に及ぼす影響解明
a 地球規模の環境変動に伴う穀物生産力の変動予測手法を開発する。
b 気候変化、二酸化炭素の濃度上昇が農業生産及び農業生態系に与える影響のモニタリング手法とモデルを開発する。
 
(イ)農業が地球環境に及ぼす影響解明と対策技術の開発
a 農耕地利用形態とメタン・亜酸化窒素等の発生要因の関係並びに農業生態系における微量ガス、花粉、ダスト等の放出・拡散過程を解明する。
b 窒素負荷の増加による土壌・水系の酸性化及び農業由来有機物の環境負荷ポテンシャルの定量化手法を開発する。
 
ウ 生態学・環境科学研究に係る基礎的・基盤的研究
 
(ア)環境負荷物質の分析技術の高度化
a ダイオキシン類のうち、現在毒性等価係数が定められている物質以外のものを含めて、作物・農耕地土壌中の含量を精密に測定するための手法を開発する。また、カドミウム、ホウ素等微量元素の定量法を開発する。
b 作物・農耕地土壌における137Cs等のモニタリングを継続するとともに、127I等の土壌中分布調査を行い、農業生態系における放射性同位元素の挙動を解明する。
 
(イ)環境資源情報の計測・解析技術の高度化
気象データ・リモートセンシングデータ・地理情報データ等を結合した新たな環境情報解析手法を開発する。
 
(ウ)農業環境資源情報の集積
a 土壌・水・大気及び生物資源に関する既存調査・研究成果・標本試料等のデータベース化と情報ネットワーク化を行い、農業環境資源インベントリーシステムのフレームを構築する。
b 微生物・昆虫については、独立行政法人農業生物資源研究所が実施するジーンバンク事業のサブバンクとしてセンターバンク(独立行政法人農業生物資源研究所)と連携しつつ、当該生物の収集、評価及び保存を行う。
 
(エ)公立試験研究機関等との研究協力
地理的制約等から研究所では実施困難な試験及び研究については、都道府県等との共同研究、人材派遣等を積極的に行う。
 
2 専門研究分野を活かした社会貢献
 
(1)分析、鑑定
行政、各種団体、大学等の依頼に応じ、研究所の有する高い専門知識が必要とされる分析、鑑定を実施する。
 
(2)講習、研修等の開催
講習会の開催、国公立機関、民間、大学、海外機関等外部機関からの研修生の受入れ等を行う。
 
(3)行政、国際機関、学会等への協力
行政、国際機関、学会等への専門家の派遣、行政等への技術情報の提供等を行う。
 
3 成果の公表、普及の促進
 
(1)成果の利活用の促進
研究成果はデータベース化やマニュアル作成、応用研究との連携等により積極的に利活用の促進を図る。
 
(2)成果の公表と広報
研究成果は、積極的に学術雑誌等への論文、学会での発表等により公表するとともに、主要な成果については各種手段を活用し、積極的に広報を行う。また、国民へのパブリックアクセプタンスの推進に努める。
 
(3)知的所有権等の取得と利活用の促進
重要な研究成果については、わが国の農林水産業等の振興に配慮しつつ、特許等の取得により権利の確保に努めるとともに、民間等における利用の促進を図る。
 
第4 財務内容の改善に関する事項
 
1 収支の均衡
適切な業務運営を行うことにより、収支の均衡を図る。
 
2 業務の効率化を反映した予算計画の策定と遵守
経費節減目標を踏まえた運営費交付金の交付を受けることを前提に中期計画の予算を作成し、当該予算による運営を行う。
 
第5 その他業務運営に関する重要事項
 
  人事に関する計画
 
(1)人員計画
期間中の人事に関する計画(人員及び人件費の効率化に関する目標を含む。)を定め、業務に支障を来すことなく、その実現に努める。
 
(2)人材の確保
研究職員について、任期付任用制度の活用、職の公募等により、内外の優れた人材を確保する。
 

 

 
 元のメニューへ

 ホームページへ