農業環境技術研究所法人情報法定公開情報情報公開

独立行政法人農業環境技術研究所中期目標

制定: 平成23年  3月  2日
変更: 平成27年11月10日

独立行政法人農業環境技術研究所(以下「研究所」という。)は、農業生産の対象となる生物の生育環境(以下「農業環境」という。)に関する基礎的研究を担う機関として、農業環境の保全及び改善に関する技術の向上に寄与してきたところである。

一方、農業生産における地球温暖化の影響がますます顕在化していることに加え、農業生産活動と生物多様性保全の両立、食の安全の確保も行政上の課題となっている。

こうした背景の下、農林水産省では、新たな「食料・農業・農村基本計画」(平成22年3月30日閣議決定)に対応する「農林水産研究基本計画」(平成22年3月30日農林水産技術会議決定)を策定し、今後10年程度を見通した研究開発の重点目標等を示し、これらの実現を図ることとしている。その際、行政との連携強化による研究の管理・運営、研究評価の資金配分への反映、成果の実用化に向けた総合的取組、新たな情勢に対応した人材育成を徹底し、効率的、効果的に行政ニーズに応え、成果が普及に及ぶ研究を推進することとしている。

これらを踏まえ、研究所においては、地球規模の環境変動に対応した研究、農業生態系における生物多様性の変動機構及び生態機能の解明に関する研究、農業生態系における有害化学物質のリスク低減のための研究並びに農業環境インベントリーの高度化を重点的に実施するものとする。また、農業政策上の重要課題の解決に向けた研究開発を強力に推進するため、行政部局との緊密な連携の下で、政策上の課題を適時適切に研究開発に反映させるとともに、他の農業関係研究開発独立行政法人との連携を強化することなどにより、優れた研究成果の創出や管理業務の一層の効率化を図るものとする。

さらに、次世代に継承すべき農業環境の保全に向けた政策に貢献すべく、中期計画を策定し、これを着実に実施するものとする。

第1 中期目標の期間

研究所の中期目標の期間は、平成23年4月1日から平成28年3月31日までの5年間とする。

第2 業務運営の効率化に関する事項

1.経費の削減

(1)一般管理費等の削減

運営費交付金を充当して行う事業については、業務の見直し及び効率化を進め、一般管理費(人件費を除く。)については毎年度平均で少なくとも対前年度比3%の抑制、業務経費については毎年度平均で少なくとも対前年度比1%の抑制をすることを目標に、削減する。なお、一般管理費については、経費節減の余地がないか改めて検証し、適切な見直しを行う。

給与水準については、国家公務員の給与水準を十分考慮し、手当を含め役職員給与の在り方について厳しく検証した上で、目標水準・目標期限を設定し、その適正化に取り組むとともに、検証結果や取組状況を公表するものとする。

総人件費についても、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」 (平成18年法律第47号)に基づく平成18年度から5年間で5%以上を基本とする削減等の人件費に係る取組を、平成23年度も引き続き着実に実施するとともに、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」(平成22年11月1日閣議決定)に基づき、政府における総人件費削減の取組を踏まえるとともに、今後進められる独立行政法人制度の抜本見直しの一環として、厳しく見直すこととする。

なお、以下の常勤の職員に係る人件費は、削減対象から除くこととする。

(1) 競争的資金、受託研究資金又は共同研究のための民間からの外部資金により雇用される任期付職員

(2) 任期付研究者のうち、国からの委託費及び補助金により雇用される者及び運営費交付金により雇用される国策上重要な研究課題(第三期科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)において指定されている戦略重点科学技術をいう。)に従事する者並びに若手研究者(平成17年度末において37歳以下の研究者をいう。)

(2)契約の見直し

「独立行政法人における調達等合理化の取組の推進について」(平成27年5月25日総務大臣決定)等を踏まえ、公正かつ透明な調達手続きによる、適切で迅速かつ効率的な調達を実現する取組を着実に実施する。経費削減の観点から、契約方法の見直し等を行う。また、密接な関係にあると考えられる法人との契約については、一層の透明性を確保する観点から、情報提供の在り方を検討する。

2.評価・点検の実施と反映

運営状況及び研究内容について、自ら適切に評価・点検を行うとともに、その結果については、独立行政法人評価委員会の評価結果と併せて、的確に業務運営に反映させ、業務の重点化及び透明性を確保する。

研究内容については、研究資源の投入と得られた成果の分析を行うとともに、農業その他の関連産業及び国民生活への社会的貢献を図る観点並びに評価を国際的に高い水準で実施する観点から、できるだけ具体的な指標を設定して評価・点検を行い、必要性、進捗状況等を踏まえて機動的に見直しを行う。また、主要な研究成果の利活用状況を把握・解析し、業務運営の改善に活用する。

さらに、職員の業績評価を行い、その結果を適切に処遇等に反映する。

3.研究資源の効率的利用及び充実・高度化

(1)研究資金

中期目標を着実に達成するため、運営費交付金を効果的に活用して研究を推進する。また、研究開発の一層の推進を図るため、委託プロジェクト研究費、競争的研究資金等の外部資金の獲得に積極的に取り組み、研究資金の効率的活用に努める。

(2)研究施設・設備

研究施設・設備については、老朽化した現状や研究の重点化方向を踏まえ、真に必要なものを計画的に整備するとともに、有効活用に努める。

(3)組織

中期目標の達成に向けて、研究成果を効率的に創出するため、研究資金、人材、施設等の研究資源を有効に活用し得るよう、他の農業関係研究開発独立行政法人との連携による相乗効果を発現させる観点から、組織の在り方を見直す。

(4)職員の資質向上と人材育成

研究者、研究管理者及び研究支援者の資質向上を図り、業務を的確に推進できる人材を計画的に育成する。そのため、人材育成プログラムを踏まえ、競争的・協調的な研究環境の醸成、多様な雇用制度を活用した研究者のキャリアパスの開拓、行政部局等との多様な形での人的交流の促進、研究支援の高度化を図る研修等により、職員の資質向上に資する条件を整備する。

4.研究支援部門の効率化及び充実・高度化

研究支援業務のうち、他の農業関係研究開発独立行政法人と共通性の高い業務を一体的に実施することなどにより、研究支援部門の合理化を図る。

総務部門の業務については、業務内容の見直しを行い、効率化を図る。

現業業務部門の業務については、調査及び研究業務の高度化に対応した高度な専門技術・知識を要する分野への重点化を進め、効率化及び充実・強化を図る。

また、研究支援業務全体を見直し、引き続きアウトソーシングを推進することなどにより、研究支援部門の要員の合理化に努める。

5.産学官連携、協力の促進・強化

農業環境に関する基礎的・基盤的研究水準を向上させ、優れた研究成果や知的財産を創出するため、国、他の独立行政法人、公立試験研究機関、大学、民間等との連携・協力及び研究者の交流を積極的に行う。その際、他の独立行政法人との役割分担に留意しながら、円滑な交流システムの構築を図る。

6.海外機関及び国際機関等との連携の促進・強化

環境問題の地球規模の拡大に対応し、それらの効率的な解決に資するため、国際的な研究への取組を強化する。特に、農業に関する環境科学分野での国際的イニシアチブを確保するとともに、海外研究機関及び国際研究機関との連携を積極的に推進する。

第3 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項

1.試験及び研究並びに調査

(1)研究の重点化及び推進方向

「食料・農業・農村基本計画」に対応し、今後10年程度を見通した研究開発の重点目標等を示した「農林水産研究基本計画」に即し、地球規模環境変動と農業活動の相互作用に関する研究、農業生態系における生物多様性の変動機構及び生態機能の解明に関する研究、農業生態系における化学物質の動態とリスク低減に関する研究及び農業環境インベントリーの高度化に関する研究を重点的に実施する。

地球規模の環境問題に対応する研究については、環境問題をめぐる国際的動向等を踏まえ、関連する研究機関や国際機関との連携・協力の下、効率的に推進する。

また、他の農業関係研究開発独立行政法人との連携を一層強化し、各法人の有する研究資源を活用した共同研究等を効率的に推進する。

これらのことを実現するため、「別添」に示した研究を進める。

なお、独立行政法人農業生物資源研究所がセンターバンクとして実施する農業生物資源ジーンバンク事業のサブバンクとして、センターバンクとの緊密な連携の下、遺伝資源の収集、保存、特性評価等を効率的に実施する。

(2)行政ニーズへの機動的対応

期間中に生じる行政ニーズに機動的に対応し、必要な研究開発を着実に実施する。

2.行政部局との連携の強化

研究の設計から成果の利活用に至るまでの各段階において、農林水産省の行政部局と密接に連携し、行政部局の意見を研究内容や利活用方策等に的確に反映させるとともに、行政部局との連携状況を毎年度点検する。

また、他の独立行政法人との役割分担に留意しつつ、食品安全基本法(平成15年法律第48号)に基づく農産物・食品の安全性・信頼性の確保に向けた緊急時対応を含めた技術支援等、行政部局、各種委員会等への技術情報の提供及び専門家の派遣を行うとともに、行政部局との協働によるシンポジウム等を開催する。

3.研究成果の公表、普及の促進

(1)国民との双方向コミュニケーションの確保

国民に対する説明責任を果たすため、多様な情報媒体を効果的に活用して、農業環境に関する研究開発について分かりやすい情報を発信するとともに、研究所及び研究者自らが国民との継続的な双方向コミュニケーションを確保するための取組を強化する。

特に、農業における地球温暖化の影響や有害化学物質による農作物汚染等について、科学的かつ客観的な情報を継続的に提供するとともに、研究の計画段階から国民の理解を得るための取組を推進する。

(2)成果の利活用の促進

新たな知見・技術のPRや普及に向けた活動及び行政施策への反映を重要な活動と位置付け、研究者及び関連部門によるこれらの活動が促進されるように努める。

このため、今中期目標期間中に得られる研究成果に、前中期目標期間までに得られたものを加えて、研究成果のデータベース化、研究成果を活用するためのマニュアルの作成等により積極的に利活用を促進する。

(3)成果の公表と広報

研究成果は、積極的に学術雑誌等への論文掲載、学会での発表等により公表するとともに、主要な成果については、各種手段を活用し、積極的に広報を行う。査読論文の数及びそのインパクトファクターについては、数値目標を設定して成果の公表に取り組む。

(4)知的財産権等の取得と利活用の促進

研究開発の推進に際しては、研究成果の実用化及び利活用を促進する観点から、研究成果の権利化や許諾等の取扱いに関する知財マネジメントを研究開発の企画段階から一体的に実施する。

その際、我が国の農業の振興に配慮しつつ、実施許諾の可能性等を踏まえた権利化、研究成果の保全に向けた権利化など海外への出願や許諾を含めて戦略的に権利化等を進めるほか、保有特許の必要性を随時見直す。また、特許権等に係る情報の外部への提供を積極的に進めるとともに、技術移転に必要な取組を強化する。

また、農林水産研究知的財産戦略(平成19年3月22日農林水産技術会議決定)等を踏まえ、必要に応じて知的財産方針を見直す。

なお、特許の出願及び実施許諾については、数値目標を設定して取り組む。

4.専門分野を活かしたその他の社会貢献

(1)分析及び鑑定の実施

行政、民間、各種団体、大学等の依頼に応じ、研究所の高い専門知識が必要とされる分析及び鑑定を実施する。

(2)講習、研修等の開催

講習会の開催、国公立機関、民間、大学、海外機関等外部機関からの研修生の受入れ等を行う。

(3)国際機関、学会等への協力

国際機関、学会等への専門家の派遣、技術情報の提供等を行う。

第4 財務内容の改善に関する事項

1.収支の均衡

適切な業務運営を行うことにより、収支の均衡を図る。

2.業務の効率化を反映した予算計画の策定と遵守

第2 業務運営の効率化に関する事項」及び上記1.に定める事項を踏まえた中期計画の予算を作成し、当該予算による運営を行う。

3.自己収入の確保

受益者負担の適正化、特許使用料の拡大等により自己収入の確保に努める。

4.保有資産の処分

施設・設備のうち不要と判断されるものを処分する。また、その他の保有資産についても、利用率の改善が見込まれないなど、不要と判断されるものを処分する。

第5 その他業務運営に関する重要事項

1.人事に関する計画

(1)人員計画

期間中の人事に関する計画(人員及び人件費の効率化に関する目標を含む。)を定め、業務に支障を来すことなく、その実現を図る。

(2)人材の確保

研究職員の採用に当たっては、任期制の活用等、雇用形態の多様化及び女性研究者の積極的な採用を図りつつ、中期目標達成に必要な人材を確保する。研究担当幹部職員については、公募方式等を積極的に活用する。

2.法令遵守など内部統制の充実・強化

研究所に対する国民の信頼を確保する観点から、法令遵守を徹底する。特に、規制物質の管理等について一層の徹底を図るとともに、法令遵守や倫理保持に対する役職員の意識向上を図る。また、研究所のミッションを有効かつ効率的に果たすため、内部統制の更なる充実・強化を図る。

さらに、法人運営の透明性を確保するため、情報公開を積極的に進めるとともに、「第2次情報セキュリティ基本計画」 (平成21年2月3日情報セキュリティ政策会議決定)等の政府の方針を踏まえ、個人情報保護など適切な情報セキュリティ対策を推進する。

3.環境対策・安全管理の推進

研究活動に伴う環境への影響に十分な配慮を行うとともに、エネルギーの有効利用やリサイクルの促進に積極的に取り組む。

また、事故及び災害を未然に防止する安全確保体制の整備を進める。

[別添] 試験及び研究並びに調査に係る研究の推進方向

1.地球規模環境変動と農業活動の相互作用に関する研究

地球温暖化対策として温室効果ガス排出の大幅削減に取り組んでいく中で、農業分野においては、温室効果ガスの排出削減・吸収機能の保全・強化に資する技術や環境変動予測技術、温暖化への適応技術の開発等、地球温暖化に対応する研究開発を総合的に推進していくことが必要である。

このため、農業における温暖化緩和策の定量的評価や、温暖化等の環境変動に対する作物応答メカニズムの解明に係る基礎的研究及び影響予測を推進する。

(1)農耕地における総合的な温暖化緩和策の定量評価

総合的な温暖化緩和技術の開発の基礎とするため、農耕地における土壌炭素貯留・温室効果ガス発生機構の解明及び作物生産過程全体における温室効果ガスに関するLCAを実施し、温暖化緩和策の精緻な定量評価を行う。

(2)地球規模環境変動に対する作物応答メカニズムの解明及び影響予測

温暖化がより進行した将来の環境が作物生産に及ぼす影響を精緻に予測するため、環境中の二酸化炭素の増加や気温上昇に対する作物の応答メカニズムの解明、作期や生産適地の移動等の将来的な適応策を評価する数理モデルの開発や、 我が国及びアジア地域における気候変動に対する脆弱性評価手法の開発及び食料生産量の変動予測を行う。

2.農業生態系における生物多様性の変動機構及び生態機能の解明に関する研究

環境保全型農業の推進等生物多様性に配慮した施策に貢献するため、農業活動により形成された生態系において、農業技術が生物多様性に与える影響を科学的に評価し、生産性と生物多様性が両立し得る農業生産体系が求められている。

このため、農業生態系における生物多様性の変動メカニズムを解明し、農業に有用な生物多様性を保全する技術を開発するとともに、環境負荷の少ない環境調和型・持続的農業技術等に利用するための生物・生態機能の解明を行う。

(1)農業生態系における生物多様性の変動メカニズムの解明と適正管理技術の開発

生産性と生物多様性が両立した持続的な農業の発展を図るため、農業活動の変化による生態系の構造や生物種群間の相互関係等に与える影響のメカニズムの解明及び農業に有用な生物多様性の評価・管理手法の開発並びに遺伝子組換え作物等の生態系影響評価・管理手法の開発を実施する。

(2)環境調和型・持続的農業に役立つ生物・生態機能の解明

環境負荷の少ない持続的農業技術に資する基礎技術を開発するため、他の植物の生育等に影響を与える植物生理活性物質や昆虫フェロモン等に関する化学物質、農業資材等を分解する微生物や土壌微生物の機能等、農業生態系における生物・生態機能を解明する。

3.農業生態系における化学物質の動態とリスク低減に関する研究

農産物の安全性を向上させるため、水田土壌におけるカドミウムを低減させる技術等が開発されたが、依然として、水田におけるカドミウム以外の重金属や畑作における重金属、残留性有機汚染物質(POPs)等危害要因について、適切なリスク管理が課題となっている。また、環境負荷の少ない持続的かつ安定的な農業生産を行うため、農業生態系における物質循環機能を解明するとともに、肥料や農薬等の農業生産活動に由来する化学物質が生態系に与える影響を解明することも求められている。

このため、有害化学物質による農作物汚染リスク低減技術の高度化及び環境中における農業生産由来の化学物質の動態予測技術・影響評価手法の開発を行う。

(1)有害化学物質による農作物汚染リスクの低減技術の高度化

農業環境におけるカドミウム、ヒ素、残留性有機汚染物質(POPs)等の有害化学物質による農作物汚染リスクを低減するため、土壌−作物系におけるそれらの動態を解明し、汚染リスク予測技術及び植物を利用した手法や物理・化学的手法によるリスク低減技術の高度化を図る。

(2)化学物質の環境動態予測技術と生態系影響評価手法の開発

農業環境における硝酸性窒素やリン酸等の栄養塩類、農薬等の有機化学物質の動態について、数理モデルによる環境負荷の予測技術を開発し、農業生産由来の化学物質の生態系影響評価手法を開発する。

4.農業環境インベントリーの高度化

農業分野の地球温暖化への対応、生物多様性の保全や、農産物の安全性確保に向けた研究を推進する観点から、農業環境分野の研究基盤の強化を図るため農業環境インベントリー(農業環境に関するデータ、研究成果等の情報や試料を体系的に保存・活用・提供する仕組み)の高度化を推進する。

このため、農業環境の高度なモニタリングシステムの構築や新たなリモートセンシング技術の開発、各種農業環境情報の整備・拡充等を行う。また、それらの個別情報を一元的に提供できる統合データベースを構築する。さらに、主要な環境保全上の観点と、農業生産性の観点も考慮した総合的環境影響評価手法を開発する。