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情報:農業と環境 No.61 (2005.5)
独立行政法人農業環境技術研究所

国際情報: 2004年遺伝子組換え作物の商業栽培の状況

今から20年前、1985年に遺伝子組換えによる除草剤耐性タバコの開発が成功し、作物の育種(品種改良)における革新的な技術として遺伝子組換え技術の活用が始まった。その10年後の1995年に遺伝子組換え作物の商業栽培が始まり、今年で10年になる。

この間、遺伝子組換え作物(以下組換え作物と記述)の安全性についての議論があり、現在、各国は種々の安全性を審査・確認した後に組換え作物の栽培を認める体制をとっている。国際的には、カルタヘナ議定書(2003年発効)が遺伝子組換え生物による生物多様性への悪影響を防止するために採択され、各締約国は国内法を定めて組換え作物など遺伝子組換え生物の利用を規制している。

このような状況の中で、世界の組換え作物の商業栽培はどのような情勢にあるのだろうか。NPO国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、2005年1月12日に「Preview: Global Status of Commercialized Biotech/GM Crops: 2004(速報:商業化組換え作物の世界情勢:2004)」を発表した。この報告書では、2004年の世界の商業栽培面積、栽培国、栽培農家数、栽培作物などが集計されている。

それによると、2004年の世界の組換え作物の栽培面積は8100万haで、前年よりも20%増加した。増加率は前年(15%)を上回っている。増加内容の特徴として、発展途上国の合計栽培面積の増加(720万ha)が先進国の増加(620万ha)を初めて上回ったことがある。栽培農家(825万戸)の90%は発展途上国の農家である。経済的に恵まれない発展途上国の小規模農家で組換え作物の導入が進んでいる。

世界で栽培面積が大きい組換え作物は、ダイズ、ワタ、ナタネ、トウモロコシであり、遺伝子組換えで付与されている性質は除草剤耐性と害虫抵抗性である。これらの性質が、除草、害虫防除といった栽培管理の合理化とコスト低減に貢献し、作物収量の増加にもつながっていると考えられる。ちなみに、2004年における各作物に占める組換え作物の割合は、栽培面積で見て、ダイズ56%、ワタ28%、ナタネ19%、トウモロコシ14%となっている。

栽培面積や栽培農家戸数が増加したにもかかわらず、組換え作物を栽培している国は2003年から2004年に18カ国から17カ国に減少した。組換え作物の有用性が明らかになってきた今日においても栽培国の増加が停滞している状況は、多くの国で環境への影響も含め、安全性についての懸念が払拭されていないことを意味するのであろう。

農業環境技術研究所では、遺伝子組換え作物の栽培が生態系に及ぼす影響のモニタリング(長期調査)を実施している。ここで得られる調査結果は、わが国の農業への遺伝子組換え作物の導入を検討する上で重要な情報になる。

なお、ここに引用した「Preview: Global Status of Commercialized Biotech/GM Crops: 2004」は、世界各国の言語(日本語はない)に訳されてISAAAのWebサイト(http://www.isaaa.org/)で公開されている。

(企画調整部 木村 龍介)

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