わたしたちの食べ物や飲み水はどこからやって来たのか、そして家庭から出ていったものはどこへ向かうのか。この本は、50の身近な環境問題や市民活動についての考え方を、身の回りの「もの」を出発点として解説する。理念や実践のみにかたよることなく、生活と環境に対するリスク(損失)とベネフィット(利益)の両面性、市民の持続的な取組みなどがわかりやすく紹介されている。今後の環境問題への対応を学ぼうとする中高生には適切な入門書である。また、市民の側から見た環境問題というこの本の視点は、環境にかかわる研究者・専門家にも参考になるだろう。ジュニア世代だけでなく、環境問題に関心を持つ大人やシニアにもぜひ一読をおすすめしたい。
筆者は、「ものを起点とし、人を通じて環境問題をとらえること、社会や自然の中における自分を複眼的に見る視点の必要性を訴える」(著者紹介より)、「民際学」の研究者であり、長く市民活動にかかわってきた人である。
この本のまえがき「こだわるものと上流・下流に旅しよう−新版の刊行にあたって−」で、著者は次のように語っている。
ものが豊かでない時代には、身近な地域で生産・消費・廃棄が行われていたので、これら三つの関係がよく見えました。ところが、ものが豊富になるにつれ、みその原料の大豆はアメリカ産になり、それを作っているアメリカの自然とそこで暮らす生産者とのつきあいがはじまっているのに、みそ汁だけしか見なかったため、三つの関係が見えなくなってしまい、環境問題をおこしてしまったのです。
この実態と解決策は、教科書でなく、自分がみそ汁とともに、上流・下流に旅し、自分の頭と感性を使うフィールドワークで学べます。
すこし硬派のこの本では、生活のなかで出会うみそ汁など身近なものを教材にしながら、おもに社会と理科の新しい学習の仕方を、ともに考えたいと思います。
目次
こだわるものと上流・下流に旅しよう−新版の刊行にあたって−
I 食べ物・飲み水から考える
1 キュウリ 2 黒い米粒 3 おひたしと歯並び 4 消費期限・賞味期限
II 家庭から出たものはどうするの
12 割りばし 13 牛乳パック 14 牛乳パックを回収する 15 真っ白の紙
III 身近にある見えにくい危険
27 不快害虫 28 タバコの煙 29 ばい菌 30 インフルエンザ
IV 地域のなかで探る環境問題
34 町の公園 35 犬の糞 36 路地尊と打ち水 37 集中豪雨
V よりよい環境をつくる活動
47 自治会・PTA 48 NPO 49 フィールドワーク 50 総合学習
おわりに