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情報:農業と環境 No.63 (2005.7)
独立行政法人農業環境技術研究所

論文の紹介: ダイズの栽培が土壌からの亜酸化窒素の発生に及ぼす影響

The effect of growing soybean (Glycine max. L.) on N2O emission from soil
Yang, L. and Cai, Z.,
Soil Biology and Biochemistry, 37, 1205-1209 (2005)

農業環境技術研究所では、農業活動が大気中の温室効果ガス濃度へ及ぼす影響の解明と、温室効果ガス発生量の削減技術の開発のための研究を行っている。ここでは、農耕地土壌から発生する温室効果ガスの一つである亜酸化窒素(NO)と栽培作物(ダイズ)との関係を述べた論文を紹介する。NOの単位重量当たりの温室効果作用は、二酸化炭素(CO)の約300倍と大きく、その発生メカニズムの解明と削減技術の確立が求められている。

要約

ダイズの栽培が土壌からのNOの発生に与える影響を調べるために、ポットによる栽培試験を行った。ダイズを栽培したポットからのNO総発生量は、作物を栽培しなかったポットの5.9倍で、その94%が生育後期である結実・子実肥大期に発生していた。生育中のいろいろな時期にダイズの地上部を刈り取ると、その直後に土壌からのNOの発生が顕著に増加した。これらの結果から、土壌中でのNOの生成が生育後期の根の老化・枯死によって促進されたと考えられる。またこのことは、ダイズの収穫の際に根や枯れた茎葉などを放置すると、これらの残渣の分解に伴ってNOの発生が増大する可能性があることを示唆している。

農耕地土壌からのNOの発生は、窒素肥料の施用によって顕著に増加し、とくに基肥の施用直後など作物の生育前期に高い値を示す場合が多いことが知られていた。だが、逆に、大部分のNOが開花期や登熟期など作物の生育後期に発生する場合もあることが、本研究を含めた、ダイズおよび他の作物を用いた最近の研究で明らかになってきた。

土壌中でのNOの生成には、原料となる窒素の供給に加え、土壌微生物のエネルギー源として有機物の供給が必要な場合がある。本研究のように作物の生育後期にNOの発生が増大するメカニズムについては、まだ不明な点が多いが、NOの原料である窒素はもともと十分に土壌中に存在しており、そこに根の老化・枯死によって有機物が供給されたことで、発生の条件が整った可能性がある。農耕地土壌におけるNO発生の研究では、この2つの要因(窒素の供給と有機物の供給)に配慮する必要があるだろう。

(地球環境部 西村誠一)

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