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情報:農業と環境 No.63 (2005.7)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介 172: 図解雑学「農業」、西尾道徳・西尾敏彦 著、ナツメ社(2005)

国連の世界人口予測によれば、途上国を中心に増加する人口が2065年には92億人に達するとされている。一方、地球温暖化や無理な食料増産などによって、農業生産地域の縮小や生産力の低下が懸念されており、21世紀の農業は危機的な状況にあるといえる。しかし、多くの一般消費者は「食の安全・安心」に高い関心をもちながらも、農産物がどこでどのような方法で生産されているか、食料生産現場の実態について必ずしも十分な知識を持ち合わせていない。

本書は、「農業や農村とのつながりに世代交代が起きていることや、国民の多くが農業や農村と疎遠になっていることを念頭に解説する努力をした」と記している。内容として農業の歴史、農作物・家畜の生産、農業と環境とのかかわり、農業の発展と食料問題など食料、農業、農村を取り巻くさまざまな問題が掲載されている。本書は「図解」であり、タイトルで示すように各種の最新データに基づきわかりやすい図表に説明が加えられ、多くの人に農業への正しい知識をもってもらいたいという著者の気持ちが伝わってくる。

目次

はじめに

Chapter 1 農業の歴史とさまざまな形態

農業の起源をさぐる 1万年も続く人類と農作物・家畜の旅

縄文時代の農業 日本列島の農業、ここに始まる

稲作の発祥とわが国への渡来 “瑞穂の国”稲作文化の誕生

農民が支えた稲作の進歩 名もなき農民たちの金字塔

いろいろな稲と米 ねばねばした食感が好きだった日本人

日本農業、生産性向上の歩み 世界の最高水準を行く稲作

農作物と家畜の伝来 日本列島にやってきた農作物と家畜

水田農業 日本人と日本列島を支えてきた水田

畑作農業 日本農業を支えてきた脇役

施設園芸 新しい農業のホープ

果樹農業 世界に誇るおいしい果物

畜産 多頭羽飼育に活路を求めて

中山間地農業 過疎化の進むなかで特色を発揮

コラム 2毛作と2期作

Chapter 2 作物・家畜の品種改良とおもな品種

新品種を作る育種技術の進歩 農業の歴史とともに始まった品種改良

水稲の品種 多収からおいしい米に

小麦・大麦の品種 梅雨とのあくなき戦い

大豆など豆類の品種 地域と用途で異なる大豆品種

ジャガイモ・サツマイモなどイモ類の品種 主食から副食・健康食品へ

トマト・ダイコン・ホウレンソウなどの野菜 年中食卓を飾る新鮮な野菜作りをめざして

果物の品種 おいしい果物への品種更新進む

茶の品種 今も続く「やぶきた」王国

牧草・飼料作物の草種と品種 草種さがしから品種改良へ

肉用牛・乳用牛の品種 「黒毛和種」と「ホルスタイン種」が独占

豚・鶏の品種 雑種強勢を利用して優良品種を育成

コラム 品種あれこれ

Chapter 3 水稲の栽培

水田の構造 日本民族の知恵の集積としての水田

水田の準備 稲作りの始まり

種まきと苗作 稲作技術の大変革、苗代から箱育苗に

畔ぬりから代かきまで 田植えに欠かせない最終準備作業

肥料をまく 多収のための施肥から良食味米のための施肥に

田植え 重労働から農家を救った田植機の普及

分げつと出穂・開花 重要な幼穂形成期・減数分裂期・開花期

登熟期の管理作業 この期間の光合成がポイント

病害虫の防除 健康な稲作りが被害回避の鉄則

雑草の防除 炎熱下の草取りから農家を開放した除草剤

水田土壌の断面 畑とまったくちがった独自の土壌断面

水管理 農家の腕の見せどころは間断灌漑

稲刈りと脱穀 1年の努力の総決算

乾燥・調整 稲架ほしからカントリーエレベーターに

干ばつと冷害 幼穂形成期から開花期までの防御が大切

コラム 水稲の作期

Chapter 4 畑作物・野菜・果樹の栽培と家畜の飼養

畑の特徴 三重苦の日本の畑

畑の土壌改良技術 三重苦を解決した技術

なぜ堆肥を作るのか 安全な資材を変えるプロセス

なぜ堆肥を使うのか 化学肥料にない堆肥の役割

畑の準備 耕うんと作畦

施肥 いろいろな肥料

種まきと育苗 細かな手仕事の機械化

雑草防除 高温多雨の日本では大変難儀な問題

病害防除の基本 基本は輪作

土壌病害の防除 基本を外れると大問題

害虫の防除 やはり大切な総合的管理

野菜の作型 野菜の周年生産

野菜の養液栽培 土から離れる野菜生産

畑地灌漑 意外な盲点

畑作物の収穫作業 野菜の収穫機はこれから

果樹栽培の特徴 モモ・クリ3年、カキ8年?

開園 果樹園の造成

栽培管理 土壌管理・施肥と病害虫防除

結実管理 立派な果実を作るのには大変な手間がかかる

牛の飼養 牛は草食動物

豚の飼養 豚は6か月で100kgに成長する

鶏の飼養 徹底した生産効率向上によって物価の優等生

放牧 ライフスタイルの見直しを迫る放牧

コラム イチゴは果物か野菜か

Chapter 5 日本農業の発展と諸問題

戦後の農地解放 小規模農業の創出が今日の問題の原因

高度経済成長と農業の変貌 大転換した日本の農業

品種改良による水稲単収の向上 水稲品種の大変革

化学肥料と農薬の普及 化学資材の光と陰

機械の普及 省力化は規模拡大につながったか

水田の基盤整備で生産性が向上 稲作を支える基盤作り

野菜産地の展開 道路網の発達が貢献

施設栽培の展開 冬にビタミンを供給

畜産の展開 遠隔地の畑作地帯で大きく発展

容易に進まぬ規模拡大 小規模経営で高い生産コスト

兼業に支えられている日本農業 農家の大部分は兼業農家

世界貿易の偏り 見返りとして求められる農産物の輸入

農産物価格下落による所得の低下 専業農家ほど減少

高齢化・後継者不足・耕作放棄 原因はもうからない農業

コラム 耕作放棄の影響

Chapter 6 食の変化と環境とのかかわり

食生活の変化 空腹から飽食の時代へ

米消費者の減少と減反 なぜ米消費量が減少したのか

輸入食料の増加と自給率の低下 生活水準の向上が食料輸入を増やした

輸入農産物に依存した日本食 世界から集められる食材

安易な輸入農産物との競争激化 減っていく国内生産

求められる高品質と安全性 国産農産物の生きる道

食品の持つ機能性 医食同源の科学的解明進む

見直される地域特産農産物 伝統の味と地域農業資源

スローフードと地産地消 地元の旬の食べ物を味わう

伝統農業が育んだ身近な生物 農地は独特の生息地

農村景観 伝統農業が作った森・里山・野草地・農地

野生生物生息地の減少 宅地化で追われる野生生物

荒れた里山 里山の生物の変化

マツカレの拡大 マツカレはなぜ拡大したのか

化学農薬による野生生物の減少 化学農薬の功罪

水田の整備にともなう川と水田の分断 水田整備の功罪

養分の過剰投入による水質汚染 水の硝酸汚染と富栄養化

冬作物の減少にともなう環境劣化 裸の畑が増えた

遺伝子組み換え作物の野生生物への影響 大きな期待と不安

農業の持つ多面的機能 グリーンツーリズムも機能の1つ

コラム 低アレルゲン農産物

Chapter 7 農業の最先端事情

コストダウンをめざす大規模稲作 限界がある国内稲作のコストダウン

消費者によろこばれる農産物作り おいしくて、健康に良い農作物の追求

コンピュータ制御の施設園芸 楽だが、低コスト化が課題

ロボット作業機 作業の完全無人化が夢

省力的な乳牛飼養 ミネラルウォーターより安い牛乳

遺伝資源と種子戦争 遺伝資源探索競争から共有財産へ

バイオテクノロジーを利用した品種育成 21世紀農業の柱となる種苗生産と品種改良

有機農業 有機農業はなにをめざしているのか

循環型農業 めざすべき姿だが、実現は難しい

農業生産者と消費者の連携 多様な農業経営の共存

コラム DNA分析による貧す鑑別・品種改良

Chapter 8 世界と日本の食料問題

世界人口の爆発的増加 くり返し予測されている食料危機

貿易自由化に翻弄される世界の農業 新大陸VS旧大陸

食料過剰生産の先進国と不足の途上国 先進国と開発途上国の対立

世界で深刻化する土地の劣化 乾燥地域の砂漠化が深刻

乾燥地における農地の塩類集積 塩の吹き出した農地

遊牧民の定住化にともなう砂漠化 過放牧で進む砂漠化

森林伐採と焼畑による土地の劣化 貧しさが森林を減らす

集約農業による土壌の劣化 豊かさが農地を劣化させる

先進国の農業 環境にやさしい農業への転換

世界的食料危機は起きるのか 平和と経済発展が大切

地球温暖化の農業への影響 開発途上国ほど影響が深刻

どうする日本の食料安全保障 安全・高品質な国内生産と輸入が大事

コラム WTO協定

索引

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