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情報:農業と環境 No.64 (2005.8)
独立行政法人農業環境技術研究所

国際情報: コーデックス委員会の食品カドミウム規格

カドミウムは一定量以上を摂取し続けると腎機能障害やイタイイタイ病などの健康障害を引き起こす可能性があることから、食品中のカドミウム濃度の管理が国際的に注目されている。本年(2005年)7月4日〜9日にローマで開催された第28回コーデックス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)総会で、いくつかの食品について、含有カドミウムの規格(上限値で基準値とも訳される)が決定された。決定された規格は、小麦の0.2 ppm(mg/kg)、除皮ばれいしょの0.1 ppm、茎菜・根菜(セロリアック・ばれいしょを除く)の0.1 ppm、葉菜の0.2 ppm、その他の野菜(キノコ・トマトを除く)の0.05 ppmである。これらは、食品中のカドミウムの初めての国際規格となる。

コーデックス委員会で規格の決定に至るまでには、下部委員会での検討と各国のコメント要請を含めて合計8ステップの手順があり、慎重に検討が重ねられる。わが国の農業、農業環境、食品に関連して注目されている米のカドミウム規格については、第6ステップに進めることが今回の総会で決定された。これをもって、食品添加物・汚染物質委員会(CCFAC)から提案され、かつ、各国からコメントが提出された「規格原案」が「規格案」に格上げされた。この規格案には、精米の0.4 ppmのほか、海産二枚貝(カキ・ホタテを除く)の1.0 ppm、頭足類(内臓除去物)の1.0 ppmが含まれる。

第6ステップではこの規格案について再び各国のコメントを要請し、第7ステップでCCFACがそれらのコメントに基づき検討し、最終規格案を作成する。最後の第8ステップでは、その規格案に対する各国のコメントを要請し、コメントに基づき規格案を総会で検討し、採択する。このように、規格決定までには、今後、各国からコメントを提出する機会がさらに2回あるが、CCFACで最終規格案が作成される第7ステップがキーになる。

CCFACでの精米カドミウム規格の検討経緯をみると、当初、0.2 ppmとする原案が検討されていたが、2004年3月の第36回CCFACから日本提案の0.4 ppmが検討されるようになった。2005年2月に、CCFACからの要請でこれら2段階のカドミウムの影響評価をしていたFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)から0.4 ppmを是認する結論が出されたこともあり、同年4月に行われた第4ステップの第37回CCFACでの規格原案の検討では、多くの国が0.4 ppmを支持した。しかし、EUは0.2 ppmに戻すよう提案した。今回の第28回総会ではEU、エジプト、ノルウェー、シンガポールの代表が0.4 ppmの規格案に対して賛否保留を表明した。

わが国において1997年〜1998年に、カドミウム汚染がない地域を対象に行われた農林水産省の全国実態調査では、玄米試料のうち0.4 ppmを超えるものが0.25%あり、0.2 ppmを超えるものが3.33%あった。また、日本では、米については食品衛生法で玄米で1 ppmの基準があり、これを超えるものは焼却処分される。0.4 ppmを超えるものは国(2004年度からは全国米麦改良協会)が買い上げ、非食用(工業用のり)とされている。米以外の作物については現在、基準がない。

なお、第36回CCFAC(2004年)において、規格策定の対象をカドミウム摂取への寄与が大きい品目に限ることにし、それまで検討されていた果実、牛・豚・羊・鶏・馬の肉、ハーブ、食用キノコ、セロリアック、大豆、落花生は、規格策定の対象としないことが決定されている。

農業環境技術研究所では、土壌中のカドミウムの動態、作物によるカドミウムの吸収、土壌や作物のカドミウム分析法などカドミウムに関係する多くの研究が推進されており、カドミウム汚染土壌の修復や作物によるカドミウム吸収抑制のためのさまざまな技術開発が進められている。これらの研究成果は当研究所Webサイト (http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/)の「化学環境部」、「環境化学分析センター」、「研究・技術情報」、「研究成果情報」、「情報:農業と環境」、「農環研ニュース」のカドミウム関連ページ (http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/064/mgzn06406niaes_cd.html)で公表されている。

コーデックス委員会の正式名称はCodex Alimentarius Commission(食品規格委員会)(略称CAC)であり、Codexはラテン語で「規格書」や「法規」を、Alimentariusは「食品の」を意味する。この委員会は、国連食糧農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同食品規格計画の実施機関として、国際食品規格の策定を通じて、消費者の健康を保護するとともに、公正な食品の貿易を確保することを目的に1962年に設立された。現在、日本を含め171カ国と欧州連合(EU)が加盟している。世界貿易機関(WTO)の多角的貿易協定では、WTO加盟国によるコーデックス食品規格の遵守が義務づけられているため、この規格は各国の貿易、産業、経済、行政に大きな影響を及ぼすことになる。

上で引用した文書はそれぞれ下記のWebサイトで公表されている。

・ 第28回コーデックス委員会総会(2005年7月)でのカドミウムに関する検討結果(農林水産省プレスリリース)

http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050711press_3.html (対応するページが見つかりません。2014年12月)

・ 第28回コーデックス委員会総会(2005年7月)で検討された規格案・規格原案を含む資料(第37回CCFAC(2005年4月)報告書)(英語)[PDF]

http://www.codexalimentarius.net/download/report/639/al28_12e.pdf

・ 第64回JECFA報告書(2005年2月)(英語)[PDF]

http://www.who.int/ipcs/food/jecfa/summaries/summary_report_64_final.pdf

・ 農林水産省カドミウム全国実態調査データ

http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_cd/cyosa/index.html (ページのURLが変更されています。2014年12月)

・ 第36回CCFAC(2004年3月)でのカドミウムに関する審議結果(農林水産省のWebサイト)

http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_cd/kizyunti/ccfac36/index.html (ページのURLが変更されています。2014年12月)

(企画調整部 木村 龍介)

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