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情報:農業と環境 No.64 (2005.8)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介 176: 地球環境読本 II 環境再生・共生を考えるための31のヒント、加藤尚武 編、丸善株式会社(2004) ISBN 4-621-07454-7

2001年に刊行された「地球環境読本 人間と地球の未来を考えるための30のヒント」(加藤尚武 編、丸善株式会社ISBN:4-621-04900-3)の続編にあたる本である。編者である加藤尚武氏は環境倫理学の第一人者であり、現在、鳥取環境大学学長を務めている。

次の世代にとって、現代社会が直面している環境問題を知り、解決の道を探ることが重要であると編者は述べ、若者に教えるべき内容として、環境経済学者ハーマン・デイリーが示した持続可能な発展のための3原則を紹介している。(1)「再生可能な資源」の利用は再生速度を超えないこと、(2)「再生不可能な資源」の利用は再生可能な資源で代用できる程度を超えないこと、(3)「汚染物質」の排出は環境が循環、吸収、無害化できる速度を超えないこと。この3つの条件が守られなければ、資源の消失・枯渇、環境汚染の進行などにより、現在の産業社会は必ずどこかで行き詰まることになる。

本書は、大学,研究所、環境NPOなどの30人以上の執筆者によって書かれており、環境再生、環境運動、技術開発、政治・経済との関わり、環境教育など31の話題を、さまざまな視点から取り上げている。たとえば、第17話「再考!水不足・水汚染」では、日本が国内の実使用量に匹敵する大量の水を食料品として輸入していること、その一方では世界の多くの地域で深刻な水不足・水汚染が広がっていることが紹介されている。また、第26話「予防原則とは何か」では、科学的な情報が不十分な場合でも適切な環境対策をとるための予防原則の考え方が解説されているが、その適用には多くの批判や論争があることも述べられている。

前作「地球環境読本 人間と地球の未来を考えるための30のヒント」とともに通して読めば、環境問題のさまざまな分野や考え方を知ることができる。また、各話ごとに「参考書ガイド」や「関連ホームページ」が紹介されており、調査・学習を進める助けになるだろう。

目次

はじめに

第I部 環境再生

第1話 環境再生・水俣

第2話 湖と森と人を結ぶ霞ヶ浦アサザプロジェクト

第3話 中国緑化協力プロジェクト――砂漠緑化はここまで進んだ

コラム1 3000万本の木を植えた日本人

コラム2 誰にでもできる都市の緑化再生

コラム3 里山の再評価

第II部 実践の手法

第4話 スローフード・スローライフ、そしてスローハウス

第5話 環境NGOの未来――「パートナー」の条件

第6話 ドイツのリサイクル政策(4R)

第7話 「自然の権利」訴訟とは

第8話 フェアトレード

コラム4 ナショナル・トラスト運動

コラム5 エコツーリズム

コラム6 新潟妻有・大地の芸術祭

第III部 環境技術

第9話 風力発電の有効性

第10話 IT・バイオ技術の効力は

第11話 エコカーの未来

第12話 ユビキタス社会と環境保全

第13話 環境と交通

第14話 トレーサビリティの実際

コラム7 環境にやさしいエネルギーとは

コラム8 土壌汚染をいかに浄化するか

第IV部 環境と政治・経済・法律

第15話 循環型社会のキーコンセプト(拡大生産者責任)

第16話 ゼロ・エミッションへの挑戦

第17話 再考! 水不足・水汚染

第18話 ODAの中味と実際

第19話 京都議定書が意味するもの

第20話 ヨハネスブルク・サミットをどう評価するか

第21話 ディーゼル規制の核心

第22話 戦争で環境はどれだけ汚れるか

第23話 グローバリゼーションと環境破壊――貿易と環境の相克

第24話 環境経営格付の方向――経営者には持続可能な社会構築に向けて何が求められるか

コラム9 環境難民

コラム10 建物とは誰のもの? 地主さんの社会的責任とは?

コラム11 環境コミュニケーション

第V部 環境思想

第25話 持続可能性の定義論争

第26話 予防原則とは何か

第27話 シーア・コルボーンの警鐘――環境ホルモン・再考

コラム12 保全生態学

コラム13 シベリアタイガ

コラム14 環境税・炭素税

第VI部 環境教育

第28話 環境学習の実際――どこまで体験可能か

第29話 ビオトープから何を学ぶか

第30話 動物園が環境教育施設になるために

第31話 環境教育の質的転換

コラム15 マンガにみる環境問題

コラム16 氷山が溶けると海面上昇するか

コラム17 酸性雨の元は酸性雪

おわりに/執筆者紹介

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