前の記事 目次 研究所 次の記事 (since 2000.05.01)
情報:農業と環境 No.67 (2005.11)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介 186: IPMマニュアル −総合的病害虫管理技術−、梅川 學、宮井俊一、矢野栄二、高橋賢司 編、養賢堂(2005) ISBN 4-8425-0375-0

平成17年3月に改訂された食料・農業・農村基本計画では、改革の視点として、環境保全を重視した施策の展開を謳(うた)っている。また、農業生産活動に伴う環境への負荷軽減を図るために持続可能な農業に転換する先進的取組みへの支援を講じることにしている。研究開発に関しては、在来天敵の誘導・定着化、農作物が本来有する病害抵抗性の誘導など、化学農薬の依存を低減し、生物機能を活用した防除体系の確立など今後10年間の達成目標が提示された。

総合的病害虫管理(Integrated Pest Management, 略称IPM)は、経済性を考慮しつつ、複数の防除技術を組み合わせ、人の健康に対するリスクと環境への負荷軽減、さらに、安全・安心な農作物の安定生産の両立をめざしている。具体的には、病害虫が発生しにくい環境を整備するための輪作体系や抵抗性品種の導入、土着天敵・フェロモン剤の活用、伝染源植物の除去など、そして、生物的・物理的・化学的手法を調和的に組み合わせた総合的防除技術を駆使することで、病害虫の発生を経済的被害が生じるレベル以下に抑制しようするものである。

IPM体系を構築するために、これまでも、天敵、拮抗(きっこう)生物、防虫ネット、作物品種など個別の防除技術が開発されてきたが、1種類の病害虫だけを対象とする個別防除技術として用いられたり、複数技術を導入してもそれらの相互関係が十分に解明されていなかったりすることが多かった。そのため、農水省プロジェクト研究「環境負荷低減のための病害虫群高度管理技術の開発」(平成11〜15年度)で、「病害虫群管理」に基づく防除体系の確立をめざした研究が実施された。本書では、このプロジェクト研究での成果を中心に、キャベツ、カンキツ、茶、施設栽培のトマト、ナス、メロンなど各種作物におけるIPM体系で利用可能な技術について、各技術の使用法、作用機作、使用上での留意点と、実施可能なIPMマニュアル事例を紹介し、さらに、IPM体系を構成する主要個別技術(付録A〜I)を解説している。環境保全型農業を推進する上で本マニュアルが活用され、今後、一層有効な新技術が開発されることを期待する。

目次

1. 序論

2. 施設トマトのIPMマニュアル

3. 施設ナスのIPMマニュアル

4. 施設メロンのIPMマニュアル

5. キャベツのIPMマニュアル

6. カンキツのIPMマニュアル

7. ナシのIPMマニュアル

8. 茶のIPMマニュアル

9. イネ(東日本)のIPMマニュアル

10.イネ(西日本)のIPMマニュアル

11.バレイショのIPMマニュアル

12.ダイズ(東日本)のIPMマニュアル

13.ダイズ(西日本)のIPMマニュアル

付録A. 天敵農薬の生物的特性と利用法

付録B. バンカー法(アブラムシ・コレマンアブラバチ)

付録C. 弱毒ウイルスの種類と利用法

付録D. 性フェロモン

付録E. 熱水土壌消毒とその利用法

付録F. マルチライン(多系品種)によるイネいもち病防除

付録G. イネの種子消毒

付録H. ケイ酸資材の育苗箱施用

付録I. DRC診断の手法

前の記事 ページの先頭へ 次の記事