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情報:農業と環境 No.68 (2005.12)
独立行政法人農業環境技術研究所

第25回農業環境シンポジウム
「農業環境におけるリスク研究に果たすインベントリー(知的基盤)の役割と課題」の報告

20世紀に人間活動が拡大した結果、農業環境においてもさまざまな影響が生じています。生物多様性の低下、地球環境の変化にともなう食料生産の変動、化学物質や微量重金属の環境への放出にともなう農産物の汚染などが懸念されています。こうしたリスクがさらに拡大すれば、持続的な社会の発展はもとより、人間生存の基盤さえも危うくなります。

本年(2005年)10月25日、第25回農業環境シンポジウム「農業環境におけるリスク研究に果たすインベントリー(知的基盤)の役割と課題」が、今後のリスク研究や知的基盤整備の課題を論議することを目的として、農業環境技術研究所で開催されました。ここでは、各分野の研究者や関係者により、リスクの評価や管理に関する研究の到達点ならびにリスク研究を支えるインベントリー(知的基盤)の整備・活用手法について情報交換が行われました。

当日の参加者数は、農業環境技術研究所から104名、他の国立・独法研究所から10名、地方自治体から14名、民間から7名、大学から9名、行政から1名でした。

講演者と講演題目

(1) 上沢正志(農業環境インベントリーセンター長): 「リスク研究におけるインベントリーの役割 −現状と将来−」

(2) 内藤 航(産業技術総合研究所): 「環境負荷物質による生態リスク評価手法」

(3) 夏原由博(大阪府立大学): 「土地利用変化による野生生物へのリスク評価手法」

(4) 鳥谷 均(食料生産予測チーム長): 「地球環境変化にともなう食料生産のリスク予測」

(5) 小野眞一(重金属研究グループ長): 「微量重金属による汚染リスク予測」

(6) 鈴木規之(国立環境研究所): 「空間的・時間的変動を考慮した環境負荷物質の動態評価手法」

(7) 佐土原 聡(横浜国立大学): 「地域環境におけるリスクの管理に向けた情報の共有と発信システム」

(8) 大倉利明(農業環境インベントリーセンター主任研究官): 「土壌インベントリーの現状と発展方向」(コメント)

論議の内容

農業環境におけるリスク研究やインベントリー研究に関して、次のような要望がありました。

(1) 農業の形態が異なるときの生物多様性の違いなどについて総合的なデータを収集し公開してほしい。

(2) 農業用水系における水生生物の生息状況と化学物質や栄養塩類の濃度などについて総合的かつ継続的な水質データの収集とその公開を希望する。

(3) どのような農業環境のもとで高い生物多様性が保たれるのかを解明してほしい。

農業環境におけるリスク研究とインベントリー研究の連携については、次のような意見がありました。

(1) 共通基盤情報としてあらかじめ整備しておくことが望ましいデータを早い時期に選定し、整備を進めなければならない。求められる情報を把握する方策として、単なるアンケート調査を実施するのではなく、サンプルを提示するなどして利用者側のアイデアを喚起する必要がある。

(2) リスク研究にはさまざまな分野の研究者の連携が必要である。とくに、提示されたサンプルについて異なる分野の研究者が議論できるような方策が求められる。

(3) 環境リスクを把握するための共通基盤として、地理情報システムを用いた一元的なデータ共有が望ましく、その維持管理の態勢を確立する必要がある。

(4) 環境リスクを提示するときに地理情報システムで使用される空間的なスケールの設定が必要である(共通のめやすができれば、データの活用が容易になるため)。

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