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情報:農業と環境 No.68 (2005.12)
独立行政法人農業環境技術研究所

国際情報: FAOの「遺伝子組換え」プレスリリース(2005)

国連食糧農業機関(FAO)は、世界の農業におけるバイオテクノロジー、とくに遺伝子組換え技術の導入に大きな関心を持っている。2005年には11月末までに、遺伝子組換えに関連する下記3件のプレスリリースを行った。それらの内容から、世界で組換え作物の農業への導入が急速に進む一方でそのことに対する懸念も広がっている現状を克服して、組換え技術を農業に生かす道をFAOが模索していることがうかがえる。

「遺伝子組換え作物による環境影響のモニタリング(Monitoring the environmental effects of GM crops)」(1月27日リリース)では、FAOの専門家会議が、組換え作物環境影響評価に関するガイドラインと方法論について勧告したことが発表された。勧告では、野外栽培前のリスク評価から野外栽培後のモニタリング(長期調査)まで、組換え作物導入の全過程が信頼できるものである必要がある。また、環境を守る目標は、土や水、生物多様性などの基本的な自然資源を保全することであり、それにはモニタリングが鍵になるとしている。

組換え作物栽培のモニタリングを実施することは、それによって政策のための情報が得られるということもあるが、それよりも農業生産者が持続可能な方法で組換え作物を導入するための情報が得られることの意義が大きいとしている。このプレスリリース(英語)はFAOのWebサイトに掲載されている(http://www.fao.org/newsroom/en/news/2005/89259/index.html)。

「バイオテクノロジー: いくつかの発展途上国には今や十分発展したプログラムがある(Biotechnology: Several developing countries now have well-developed programmes)」(5月6日リリース)では、いくつかの発展途上国がバイオテクノロジーの実用化において最先端に近づき、研究能力も高いという最近のFAOの調査結果が発表された。これらの国々では近いうちに、ウイルス抵抗性のパパイヤ、サツマイモ、キャッサバ、塩類耐性や乾燥耐性のイネのような新しい組換え作物が実用化されるとしている。

発展途上国で現在商業栽培されているほとんどの組換え作物は先進国で開発されたものであり、限られた導入形質(主として除草剤耐性と害虫抵抗性)で、作物も限られている(例えば、綿、ダイズ、トウモロコシ)。それに対し、発展途上国ではバナナ、キャッサバ、ササゲ、イネ、ソルガムなど広範囲の作物が研究対象になっている。また、環境ストレス耐性のような食料安全保障(food security)に関連する形質も対象となっている。この点にFAOはとくに期待している。このプレスリリース(英語)はFAOのWebサイトに掲載されている(http://www.fao.org/newsroom/en/news/2005/102236/index.html)。

「林業におけるバイオテクノロジーは地位を得つつある(Biotechnology in forestry gaining ground)」(7月13日リリース)では、林業におけるバイオテクノロジー(遺伝子組換えおよび非組換え)の研究と実用化が急速に進展しているというFAOによる最新の調査結果が発表された。この分野の研究開発は、大部分が米国、フランス、カナダで実施されているが、発展途上国ではインドと中国で活発である。この10年では19%が遺伝子組換え関係である。組換え樹木の野外試験は16カ国、210件以上に上るが、大部分は米国で行われていて、樹種はポプラ、マツ、フウ、ユーカリにほぼ限られている。また、唯一、中国から、組換え樹木の商業栽培の報告(2002年に300〜500 haで140万本)があるとしている。

樹木の遺伝子組換えは木材の生産性や材質などのさまざまな改良をめざしている。しかし、組換え樹木の導入にはいくつかのリスクが考えられるとしている。「遺伝子組換えは本質的に良いとか悪いとかいえるものではない。ケース・バイ・ケースで研究や実用化を規制する必要がある。中国ですでに組換えポプラの商業栽培が始まっている状況からも環境リスク評価試験を国際基準の手法で実施することが重要だ。」とFAOの森林遺伝資源専門家は指摘している。

このプレスリリース(英語)は国連のWebサイトに掲載されている(http://www.un.org/News/Press/docs/2005/sag384.doc.htm)。FAOのWebサイトにある同文書(http://www.fao.org/Newsroom/en/news/2005/1000236/index.html) には、11月末現在、アクセスできない。 (最新のURLに修正しました。アクセスできます。2014年10月)

農業環境技術研究所では、遺伝子組換え作物の栽培が生態系に及ぼす影響のモニタリングを研究所内の試験ほ場で実施している。ここで得られる調査結果は、わが国の農業への遺伝子組換え作物の導入を検討する上で重要な情報になる。関連する研究情報は当研究所Webサイト (http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/) の 組換え体チームのページ(http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/biosafe/gmo/frame_sosiki_gmo.html (該当するページは削除されました。2010年11月) ) などで公表されている。

(企画調整部 木村 龍介) 

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