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情報:農業と環境 No.69 (2006.1)
独立行政法人農業環境技術研究所

農業環境技術研究所 「環境報告書2005」を公表

農業環境技術研究所は、昨年2005年12月に「環境報告書2005」を公表しました。この報告書は、本研究所では初めてのものであり、2004年度のデータを中心に、研究所における環境保全の取り組み、および農業環境の安全性と持続性を追求する研究活動を報告するものです。

以下に、報告書冒頭の理事長の「ごあいさつ」と報告書の目次とを紹介します。

環境報告書2005 「ごあいさつ」

農業環境の安全性と持続性の追及

理事長 佐藤 洋平

二十世紀における科学技術の目覚しい発展は、工業部門のみならず農業部門においても、生産力の向上に大きく貢献をしました。工業部門における生産の拡大は、農業部門における近代化とともに、豊かな社会を実現しました。しかしこの豊かな社会は、他方で、大量生産、大量消費、大量廃棄を伴い、地球規模での環境問題というどんよりとした長い影を引きずるようになりました。

「農業が工業化した」二十世紀の近代農業も、農業生産の拡大を実現しましたが、他方では、環境へのストレスを高めるなど、持続性の視点から農業のあり方に疑問が呈されるようになりました。農業は、元来、その基本となる生産要素の土地・水・生物資源を循環的に利用する産業であり、したがって、それら資源利用のあり方が農業の持続性を規定しているとも言えます。

地球規模でエネルギーを始めとする資源の枯渇が危惧されている二十一世紀の社会が、否、「宇宙船地球号」が持続あるものであるためには、大量生産、大量消費、大量廃棄する二十世紀の「資源浪費型社会」から、資源を循環利用する「循環型社会」に移行することが急がれています。資源の循環利用という農業の本質を捉えて、二十一世紀は「工業が農業化する時代」であるともいわれていますが、現代農業それ自体も持続性の視点から再検討が迫られています。

農業環境技術研究所は、2001年4月に独立行政法人となり、法が定める「農業生産の対象となる生物の生育環境に関する技術上の基礎的な調査及び研究等を行なうことにより、その生育環境の保全及び改善に関する技術の向上に寄与する」ことを目的に、調査、研究、分析、鑑定および講習などの業務を行なっています。

具体的には、安全な農業環境を維持・保全するための監視機能の発揮、自然循環機能を活用した農業環境の保全を実現するための研究、土・水・大気・生物を健全な姿で次世代へ継承するための研究、温暖化など農業生産に及ぼす影響の解明とその対策技術の開発を目標にして研究を推進しています。研究成果は、わが国行政機関はもとより、経済協力開発機構(OECD)、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などの国際機関から高い評価を得るなど、農業環境政策のための科学を担う研究所として、着実に成果を上げています。また、研究推進の一環として、つくば研究学園都市に所在する環境関係の研究機関との連携はもとより、国内外の農業環境関連の大学、研究機関等と協定覚書(MOU)を結び共同研究を行なうなど、密なる連携体制を構築しています。

環境の保全と安全の確保、法規の遵守(コンプライアンス)、情報の公開に努め、国内外の農業環境研究を先導する研究所として、私たちは、絶えざる挑戦と革新に励み、農業環境に関わる政策課題研究と基礎研究に取り組み、センセーショナリズムを排し、中立的、科学的立場から、農業環境問題の解決に科学的論拠を与えるとともに、情報の社会化を目指して研究成果を発信していく所存です。このたび初めて発行する環境報告書は、農業環境技術研究所における環境保全の取り組みを報告するとともに、併せて、農業環境研究が究極の目標とする農業環境の安全性と持続性の追及に向けた私たちの研究活動を紹介します。皆様の忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いです。

環境報告書2005の目次

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