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情報:農業と環境 No.71 (2006.3)
独立行政法人農業環境技術研究所

農業環境技術研究所資料第28号が刊行された

昨年2005年12月、農業環境技術研究所資料第28号 (Miscellaneous Publication of National Institute for Agro-Environmental Sciences No.28) が刊行された。

この号に収録された資料は、1959年から2000年まで全国17地点で採取した米、小麦と水田、畑の土壌試料について、人工放射性核種であるストロンチウム90(90 Sr)とセシウム137(137 Cs)の濃度を継続して調査した結果を、英文の報告としてまとめたものである。

1950年代後半から1960年代前半にかけて多数の大気圏内核実験が行われ、大量の人工放射性核種が大気中に放出された。これらの人工放射性核種が地上に降下し、人間の健康に悪影響を与える可能性が心配されたため、放射能汚染の実態を調べるための大規模プロジェクト「環境放射能調査研究」が開始された。当時の農林省農業技術研究所(農業環境技術研究所の前身)に新設されたアイソトープ研究室が作物と農地土壌の放射能汚染調査を担当することになった。この放射能調査の業務は、その後、農林水産省農業環境技術研究所の分析法研究室、さらに独立行政法人農業環境技術研究所の放射性同位体分析研究室 (該当するページは削除されました。2010年11月) へと引き継がれて現在に至っている。

なお、作物や農地土壌におけるこれらの放射性核種の濃度は、1963〜1966年をピークとして減少する傾向にあるが、最近では原子力関連施設の安全性を確保するためのバックグラウンドとしても重要なデータとなっている。

以下に、収録された資料の表題(英語および日本語訳)と概要(日本語摘要)を紹介する。

(英語表題)

Monitoring 90 Sr and 137 Cs in Rice, Wheat, and Soil in Japan from 1959 to 2000

Misako KOMAMURA, Akito TSUMURA, Noriko YAMAGUCHI,
Nobuharu KIHOU and Kiyoshi KODAIRA

(日本語表題)

わが国の米、コムギおよび土壌における90Srと137Cs濃度の
1959年から2000年にわたるモニタリング調査

駒村 美佐子・津村 昭人・山口 紀子・木方 展治・小平 潔

(日本語摘要)

1959年から2000年にわたり、全国17地点に設置した観測圃場から採取した米(玄米、白米)、小麦(玄麦、小麦粉)および水田・畑土壌の放射能汚染調査をおこなった。大気からの放射能降下量が最も多かった1963年には、米および玄麦においても90Srと137Csの最大濃度が観測された。1963年に観測された90Srおよび137Csの最大濃度の全国平均値は白米で0.27Bq/kgおよび4.2Bq/kg、玄麦で12Bq/kgおよび44Bq/kgであった。水田・畑土壌の90Srと137Cs濃度は、1963年から1966年に最大であった。以降、米、小麦および土壌中の90Srと137Cs濃度は漸減し続け、今日に至る。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故時には、事故由来の降下物が到達した5月に出穂していた小麦で高い137Cs汚染が観測されたが、米および土壌の汚染は認められなかった。米、小麦および土壌の90Srと137Cs濃度は太平洋側に比べ日本海側で高い傾向があった。90Srと137Cs濃度の白米/玄米および小麦粉/玄麦の比は、90Srでは0.2および0.3、137Csでは0.4および0.5であった。90Sr濃度は米よりも小麦で高かったが、137Cs濃度は小麦よりも米で高かった。

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