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情報:農業と環境 No.76 (2006.8)
独立行政法人農業環境技術研究所

コメのカドミウム濃度の国際基準値が決定された

スイスのジュネーブで7月3日から7日まで開催された第29回コーデックス委員会の総会において、コメ (精米) のカドミウム国際基準値が、 0.4 ppm (コメ 1 kgあたりカドミウム 0.4 mg) と決定された。現在、日本の食品衛生法ではコメ (玄米) の基準値を 1.0 ppm未満と定めているが、今後この基準値の見直しが迫られることになる。食品の安全基準をつくるコーデックス委員会は、世界保健機関 (WHO) と国連食糧農業機関 (FAO) の合同組織である。コーデックス委員会が各国に基準の採用を強制することはできないが、各国間では基準を超える食品は輸出入を拒否することができる。

わが国では、食品安全委員会が食品からのカドミウム摂取のリスクを審議している。ここでは、日本人が1日に食べても問題のないカドミウム量を設定することになる。それを受けて、厚生労働省は、コメの国内基準値の見直しを進めることになろう。

農林水産省では、30 年以上前から、カドミウム濃度が 0.4 ppm以上 1.0 ppm未満のコメが食用として市場に出回らないよう、旧食糧庁 (現在は全国米麦協会) が買い上げ、工業用の糊(のり)などとして処理している。しかし、今回のコーデックス委員会の決定を受けた国内基準の設定如何によっては、国内のコメへの影響は少なくないと思われる。

旧食糧庁が1997年と1998年の2年間にわたって調査したデータによると、国産米でカドミウム含有量が 0.4 ppmを超えたのは、全体の 0.3 %であった。このため農林水産省では、玄米のカドミウム濃度が 0.4 ppmを超えそうな水田においては水管理の徹底や土壌改良などで水稲の吸収抑制対策の指導を行っている。

日本では、昭和46年 (1971年) に土壌汚染防止法が施行され、玄米のカドミウム濃度が 1.0 ppm以上となる水田を対象に、カドミウム吸収抑制対策事業が実施された。この対策技術は、ほとんどが客土 (上乗せ客土、排土客土) であった。しかし最近では、いくつかの事情から客土工事が難しい場合も多く、代替え技術の開発が望まれている。また、玄米のカドミウム濃度が 1.0 ppm以下の水田であれば、客土以外の汚染土壌修復の技術が利用できる。

このような観点から、農業環境技術研究所では、カドミウム汚染土壌の修復技術として「化学的洗浄法」と「ファイトレメディエーション法」について、実用化を目指した研究を実施している。研究内容の詳細については、下記のWebを参照されたい。

なお、コメ以外の農産物については、昨年 (2005年) 7月にローマで開催された第28回コーデックス委員会総会で、含有カドミウムの基準値が決定されている。決定された基準値は、小麦の 0.2 ppm、除皮ばれいしょの 0.1 ppm、茎菜・根菜 (セロリアック・ばれいしょを除く) の 0.1 ppm、葉菜の 0.2 ppm、その他の野菜 (キノコ・トマトを除く) の 0.02 ppmである。これらの農産物についても食品安全委員会の審議を窺いながら、国内の基準値が決められる方向にある。

(参考Webページ) 

牧野知之氏: 平成17年度若手農林水産研究者表彰を受賞 (2006.2)
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/070/mgzn07001.html

農林水産技術会議事務局が「2005年10大研究成果」(2006.1)
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/069/mgzn06902.html

プレスリリース: カドミウムで汚染された水田の土壌洗浄法による修復 (2005.7)
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/techdoc/press/050701/press050701.html

牧野知之氏: 平成17年度若手科学者賞 (2005.5)
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/061/mgzn06104.html

「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発」のページ
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/project/toxpro/index.html

農業環境研究成果情報 第21集 (2004年度)
(3 カドミウムで汚染された水田を修復するための土壌洗浄法)
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/result/result21/result21.html

農業環境研究成果情報 第20集 (2003年度)
(4 畑条件で栽培するイネはカドミウム汚染水田の修復に最適である)
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/result/result20/result20.html

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