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情報:農業と環境 No.77 (2006.9)
独立行政法人農業環境技術研究所

サマー・サイエンスキャンプ2006が開催された

サイエンスキャンプは、研究機関の持つ学習資源としてのポテンシャルを最大限活用した高校生・高等専門学校生のための「科学技術体験合宿プログラム」です。この事業は平成7年(1995年)に開始され、本年より日本科学技術振興財団と実施機関の共催で行われています。

農業環境技術研究所は、8月9日から11日の3日間、3つの体験コースに全国各地から各コース4名(計12名)の高校生を迎え、サマー・サイエンスキャンプ2006 を実施しました。また、事務局である日本科学技術振興財団から2名、アドバイザーとして高校の先生1名が同行されました。

プログラムの趣旨

環境問題は身近なところから地球規模まで、さまざまなスケールで生じています。農業の分野においては、環境の変化によって農業生産が影響を受ける一方で、農業生産の活動が環境に影響を与えています。

農業環境技術研究所は、将来にわたって安全な食べ物を生産していくため、土・水・大気を健全な形で保全し、環境と調和した農業をめざす研究を行っています。

今回のキャンプでは、「環境中の超微量汚染物質を測る」、「アレロパシーによる植物間相互作用を調べてみよう」、「GPSを使って動物を追跡しよう!」の3つのコースを設け、研究者がどのようにして農業環境研究に取り組んでいるかを実際に体験してもらいました。

各プログラムの内容

(1) Aコース: 「環境中の超微量汚染物質を測る」

私たちのまわりにある物質が原子やそれらが集まった分子でできていることを知っていても、普段の生活の中で実感することは難しいものです。このコースでは、原子や分子一つ一つを重さでふるい分け、それぞれの量を超高感度で測ることのできる質量分析装置を実際に使って、原子や分子の重さを実感し、身近な物や作物に含まれる10兆分の1グラムという超微量の重金属や農薬を定量しました。
(講師: 有機化学物質研究領域 石坂 眞澄・馬場 浩司)

● 原子量・分子量・同位体など、原子の質量についての解説と、質量分析法の歴史、原理と装置の説明をしました。

● 有機・無機物質の標準溶液試料を質量分析装置に直接導入し、質量スペクトルを測定、解析しました。身近なものに含まれる重金属や、作物抽出物に含まれる農薬を測定、標準試料を用いて定量計算を行いました。

(2) Bコース: 「アレロパシーによる植物間相互作用を調べてみよう」

植物は根から天然の生理活性物質を放出し、ほかの植物の生育を阻害します。この現象をアレロパシー、あるいは他感作用といいます。アレロパシーにより、海外から侵入した外来植物が生息域を拡大したり、作物の連作障害や雑草による作物の生育阻害などが引き起こされます。一方では、アレロパシーを利用して雑草を防除する技術の開発が期待されています。このコースではいろいろな植物のアレロパシー現象を測定し、農業に役立てる研究について体験しました。
(講師: 生物多様性研究領域 藤井 義晴・平舘 俊太郎)

● 田畑、林やため池に生育する植物のアレロパシー現象を観察し、試料を採集しました。

● 植物のアレロパシー活性を、生物検定法で測定しました。

● 植物からアレロパシーに関与する他感物質を分離する方法を学びました。

● 他感物質がシロイヌナズナの遺伝子発現に及ぼす影響を調べました。

(3) Cコース: 「GPSを使って動物を追跡しよう!」

日本の農村の周辺にはいろいろな動物が住んでいますが、これらの動物が人間や農業に対して被害を及ぼすこともあります。農業環境技術研究所では、カーナビなどに使われるGPS(全地球測位システム)という技術で、動物の行動を監視、予測する方法を研究しています。このコースでは、動物の代わりに参加者の皆さんにGPSを持ってもらい、実際の動きを地図の上に表示させることと、その位置情報から、次の行動を予測することを行いました。
(講師: 生態系計測研究領域 デイビッド スプレイグ・岩崎 亘典)

● ハンディー型GPSを持って、農環研敷地内を散策しました。

● 測位情報をパソコンに取り込み、GIS(地理情報システム)を使って地図上に表示しました。

● バッファー分析を行い、一定距離内にある土地利用を選択し、行動予測を行いました。

● 首輪型GPSの警戒システムのデモンストレーションを行いました。

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