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情報:農業と環境 No.79 (2006.11)
独立行政法人農業環境技術研究所

農業環境技術研究所リサーチプロジェクト(RP)の紹介(5) 外来生物生態影響RP

農業環境技術研究所は、中期目標期間 (平成18−22年度) における研究・技術開発を効率的に推進するため、15のリサーチプロジェクト(RP)を設けています (詳細は、情報:農業と環境 No.77農業環境技術研究所リサーチプロジェクト(RP)の紹介(1) を参照してください)。

ここでは、外来生物生態影響リサーチプロジェクトについて、リサーチプロジェクト(RP)のリーダーが紹介します。

外来生物生態影響リサーチプロジェクト

日本国内で栽培・飼育されている作物や家畜のほとんどは外国から導入された生物であり、国民はその大きな恩恵にあずかっています。その一方で、意図的に導入された生物や非意図的に侵入してしまった生物によって、農業生態系がかく乱されたり、国民生活にいろいろな悪影響を生じたりすることも多くなっています。

国では、このような外来生物による被害を防止するために、平成17年から「特定外来生物被害防止法」を施行し、特定の外来生物を指定して、その栽培・輸入・販売などを禁止しています ( http://www.env.go.jp/nature/intro/index.html )。しかし、指定すべき外来生物を特定するには科学的な研究が必要です。

このような外来生物の実態を知り、その被害を防止するため、外来生物生態影響RPでは、次のような研究を行っています。

1) 外来生物の生育や繁殖の特性、アレロパシー(他感作用)などを明らかにする。

2) 外来生物による被害の実態を把握し、その定着・拡散と被害を予測する。

3) 外来生物の原産地域を特定し、侵入の確率を推定する。

4) 外来天敵昆虫などの外来生物が近縁の在来種に及ぼす影響を競争・交雑性などの面から解析し、外来生物が農業生態系に及ぼすリスクを評価する。

5) 種の同定が難しい外来生物を、分子マーカーなどを利用して早期検出・監視するための技術を開発する。

平成18年度は、具体的に、次のような研究を行っています:

1) 外来植物の侵入によって種組成が変化しやすい植物群落タイプを推定する。

調査・情報システム(RLIS)から得られた外来植物の出現頻度の高い植物群落について解析を行い、注意を要する外来植物の選定フレームを構築します。流域レベルでの蔓延実態及び蔓延要因から、外来植物の侵入が容易で種組成への影響を受けやすい植物群落タイプ・土地被覆等の分布拡大可能地を推定します。

2) アレチウリなど侵略的な外来植物と在来種との競合関係を明らかにする。

外来植物であるアレチウリとオオブタクサを対象として、茨城県小貝川水系における植生調査を継続し、蔓延(まんえん)地で外来植物を除去する実験をします。さらに、日本の主要な穀物貿易相手国における除草剤抵抗性の発生状況を調査し、除草剤抵抗性植物種のリストを作成します。

クローンごとに整理した雑種タンポポを同一条件で育成し、発芽特性や実生(みしょう)の生存率などを比較・解析します。押し葉標本から雑種判定のための試料を採取します。従来のDNA抽出法を改良して、雑種個体の判定やクローン分析を行います。標本のラベル情報や形態的な特徴を記録し、雑種判定後の解析に必要な情報を整理します。

3) 外来植物による有害物質の生産を評価し、植物生育を阻害する他感物質の活性を定量的に把握する。

外来植物が持つ植物生育阻害活性を定量的に把握し、植物生育阻害物質の生産性についてランク付けを行います。検定の方法として、根から出るアレロパシーの生物検定法「プラントボックス法」、葉から出る他感作用の生物検定法「サンドイッチ法」、揮発性の他感作用の生物検定法「ディッシュパック法」、根圏土壌の他感作用を検定する手法「根圏土壌法」を用います。

4) チュウゴクオナガコバチ等外来昆虫の識別を行うため、DNAマーカーの開発を行う。

外来の天敵昆虫であるチュウゴクオナガコバチと在来の天敵昆虫であるクリマモリオナガコバチを識別するため、変異が大きい核DNA内のrRNA遺伝子のスペーサー領域の塩基配列を解析し、種内・種間変異を明らかにします。外来種のヒメクサカゲロウと在来種のヤマトクサカゲロウを区別するマーカーを開発するため、ミトコンドリアのDNAの部分塩基配列を解析・比較して、その有用性を評価します。

植物寄生性細菌を識別するため、rRNA遺伝子配列の部分配列のうち、特異的な配列を選抜して、有用なプローブを探索します。

5) 外来昆虫の拡散速度予測式を開発する。

外来生物の潜在的な分布拡大速度を推定するための手法を開発します。分布拡大予測に必要なパラメーターが得られていない生物については、その計測・推定を行います。

以上の研究から得られた成果は、農環研で作成している外来生物に関する国際的なデータベースである APASD(アジア・太平洋外来生物データベース) (http://apasd-niaes.dc.affrc.go.jp/) (システム更新作業のためサービス休止中 [2013年2月20日]) に順次書き込んで公表しています。また、外来植物に関しては、「外来植物のリスク評価と蔓延防止策」のページ (http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/project/plant_alien/index.html) に、最新の成果や公開セミナーの情報を載せていますので、ご参照下さい。近辺で問題となる外来生物を見かけられた場合は、ぜひ情報をお寄せ下さい。

アレチウリが他の植物を覆いつくす光景と植物の拡大写真

図1 アレチウリ  (河川敷で蔓延(まんえん)して他の植物を枯らしてしまいます)

群生するオオキンケイギクの写真

図2 オオキンケイギク (特定外来生物に指定され、栽培が禁止されています)

外来生物生態影響RPリーダー 藤井 義晴
生物多様性研究領域 上席研究員)

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