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情報:農業と環境 No.79 (2006.11)
独立行政法人農業環境技術研究所

国際ワークショップ 「侵入生物に対するアジア・太平洋外来生物データベースの構築」 が台湾で開催された

近年、世界的な交易と人の往来の増大に伴って各国で侵入生物が増加しています。アジア・太平洋地域でも侵略的外来生物 (IAS:Invasive Alien Species) による経済的・生態的被害が著しく増加しています。この地域に共通する侵略的外来生物の問題を解決するために、研究成果やモニタリング情報をインターネットで共有することがきわめて重要な課題となっています。

農業環境技術研究所は、2003年と2004年に 「アジア・太平洋外来生物データベース」 (APASD)の開発とその改良のために、FFTC (アジア・太平洋食糧肥料技術センター) などと共同で国際セミナーを開催し、データベースの構築と研究協力・ネットワークの形成を図ってきました。今回は、参加各国における外来生物の最新情報を交換し、APASDの充実と改良・普及のため、操作法の習得を通じてデータベース構築に必要な人的ネットワークの構築を図ることを目的としました。

開催期日: 平成18年9月19日−21日

開催場所: 台中市・台湾農業薬物毒物研究所(台湾)

主催: 農業環境技術研究所、亜太糧食肥料技術中心(FFTC)、台湾動植物衛生検疫局(BAPHIQ)、台湾農業薬物毒物試験所(TACTRI)

参加国: 7か国(カンボジア、タイ、台湾、日本、フィリピン、ベトナム、マレーシア)

参加者数: 60名(講演者15名、来聴者45名)

国際ワークショップ 「侵入生物に対するアジア・太平洋外来生物データベースの構築」 (平成18年9月、台中市・台湾農業薬物毒物研究所)

会場前で撮影した参加者の写真

プログラム:

9月19日(火):

1. 基調講演 (2題)

・ APASDの現状と国際ネットワーク化  (NIAES 望月 淳)

・ 台湾の植物有害生物管理情報体系の現状と発展  (BAPHIQ 葉  瑩)

2. 侵入生物情報に関わるレポート (3題)

昆虫 (日本)、 データベース (台湾)、 植物 (タイ)

3. APASD操作法講習会  (日本)

9月20日(水):

4. 侵入生物情報に関わるレポート (6題)

水生動物 (マレーシア)、 ハダニ (台湾)、 侵入生物 (カンボジア)、 侵入生物 (フィリピン)、 植物 (台湾)、 微生物 (ベトナム)

5. 東南アジアにおける農業と自然資源管理へのチャレンジ (SEARCA、東南アジア地域教育省連携COE)

6. FFTCの次期中期計画の説明と意見交換

7. 総合討論と総括

9月21日(木):

8. 現地視察

1) 有機農園

2) 苗栗地区農業試験普及所大湖天敵研究所の有機農業生物防除研究普及プログラム

3) 桃園地区蓮園薬草昆虫動物農園視察

総合討論と総括で合意された事項

1. 現在、世界中に多様なデータベースがあり、それぞれ専門化している。APASD については、農業環境の総合的なデータベース化を目指し、あるいは関連データベースとリンクするとともに、分類学者と連携し、情報量を増やしていく。情報量を増やす方法として、まずは、仮登録制度 (国・地域、侵入種、定着状況、関連写真を、Apaliensp@ml.affrc.go.jp に仮登録する制度)を活用する。またインターフェイスを利用しアジア太平洋地域内の各国語への変換を図り、研究者や普及者、貿易関係者、生産者、学生などの多くの利用者が使いやすいようにする。

2. APASD は開発・公開以来4年目に入る。今後は NIAES のデータベースではなく、国際的なデータベースとして機能的かつ操作性の高いデータベースを目指し、その維持管理に必要な予算確保、審査制度によるデータの質の確保に努める。

3. データベースとして透明性を確保する。APASD については速やかな情報公開と透明性の原則を守り、外来生物が侵入したときに迅速な対応が取れるようにする。

4. APASD は、ページを刷新して定期的に更新し、データ登録の進捗状況が分かるようにする。そしてアジア太平洋地域データベースとして地域に特有なきめ細かいデータを掲載するようにする。

5. 今後、ワークショップ参加者相互の情報交換、連携を強化するとともに、APASD へのデータ入力を容易にするために、農環研は APASD ネットワーク機構を構築する。

6. アジア太平洋地域全体の農業環境を侵入生物からセ−フガードする観点から、参加各国は関係機関(検疫)との協力により質の高い情報の確保とともに、データ入力・充実を目指す。

参考:

「アジア・太平洋外来生物データベースの公開」 (「情報:農業と環境」56号、2004年12月)

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