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情報:農業と環境 No.80 (2006.12)
独立行政法人農業環境技術研究所

農業環境技術研究所リサーチプロジェクト(RP)の紹介(9) 作物生産変動要因RP

農業環境技術研究所は、中期目標期間 (平成18−22年度) における研究・技術開発を効率的に推進するため、15のリサーチプロジェクト(RP)を設けています (詳細は、情報:農業と環境 No.77農業環境技術研究所リサーチプロジェクト(RP)の紹介(1) を参照してください)。

ここでは、作物生産変動要因リサーチプロジェクトについて、プロジェクトリーダーが紹介します。

作物生産変動要因リサーチプロジェクト

2030年にはコメを主食とする人口が50億人を超えると予測されています。その一方で、今後予想される温暖化や異常気象の多発が、コメの生産に甚大な影響を及ぼすことが懸念されます。気候変動によるコメ生産のリスクを評価するとともに、それに対処し、適応するための技術開発を進めることは重要な課題です。そのためには、気候変動が圃場(ほじょう)スケールにおけるイネの生育や収量に及ぼす影響を、品種、土壌、栽培管理技術などの条件を考慮しながら評価・予測することが必要です。また、将来の食料供給力を念頭においてコメ生産を予測する上で、地域スケールでの生産変動が問題になります。気候変動下の地域スケールのコメ生産変動を評価するためには、耕地気象要素や栽培管理技術などの時空間変動を考慮し、かつおもな生産変動要因を組み入れた、簡易広域モデルの開発が望まれます。

このような背景から、作物生産変動要因リサーチプロジェクトでは、気候変動がイネの成長、収量成立過程に及ぼす影響を圃場スケールで評価する手法と、コメ生産変動とそのリスクを地域スケールで評価する手法の開発に取り組んでいます。

気候変動下における圃場スケールでのイネ収量を予測するため、人工気象室、開放系大気CO増加などの環境操作実験を行い、土壌、品種、栽培管理条件を含むイネの成長・収量モデルを開発します。このモデルを用いて、環境変動に対するイネ生産管理技術の方向を提示します。

開放系大気CO2増加実験風景(岩手県雫石町)

東北農業研究センターとの共同で実施中の農家水田における開放系大気CO増加実験風景(岩手県雫石町)。正八角形状(差し渡し12m)に設置されたチューブから、風向きに応じてCOを放出し、正八角形内のCO濃度を外気よりも約200ppmv高める装置。囲いのない条件で将来予想されるCO環境を再現して、土壌−作物系におけるCOの応答を解明するために用います。

クライマトロンにおける実験風景(農業環境技術研究所)

大型の自然光型人工気象室、クライマトロン(農業環境技術研究所)における実験風景。作物の生育過程に及ぼす高温・高COの相互作用を個体・ミニ群落レベルで調査するために用います。

地域スケールでは、灌漑(かんがい)率が高く、栽培管理技術などの均質性の高い日本と、天水田が多く分布し、水資源の制約および収量の空間的変異もきわめて大きい東南アジア(インドシナ半島)をおもな対象地域として、耕地気象要素などの時空間変動の特性を考慮したコメ生産予測モデルを開発し、気候変動によるコメ生産とそのリスクの評価を行う予定です。

農耕地で潅漑をしなかった場合に予想される水不足の程度

農耕地で潅漑をしなかった場合に予想される水不足の程度 (大陸スケールの水循環モデルで試算した値。1961-1990年の累年平均値。ただし、黒色の領域は農耕地以外の土地利用)。水資源の制約による生産量の変動予測に用います。

作物生産変動要因RPリーダー 長谷川 利拡
大気環境研究領域 主任研究員)

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