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情報:農業と環境 No.81 (2007.1)
独立行政法人農業環境技術研究所

NIAES国際シンポジウム2006 「モンスーンアジアにおける持続的農業のための農業資源の評価と有効利用 −国際研究協力に向けて−」 が開催された

モンスーンの影響を受け、水田を共通の食料生産基盤とするアジア地域(モンスーンアジア)各国の農業は北から南まできわめて多様ですが、水田を取り巻く生物多様性の豊かな農業生態系に恵まれているという点で共通するところがあります。また、その一方で、急速な経済発展にともなう農業をめぐる環境の変化、昨今の気象変動、グローバル化にともなう外来生物の侵入など、農業環境に関わる共通の問題を抱えています。

これらの問題の解決のためには、モンスーンアジア地域の研究者が共同して課題に取り組んでいくことが必要です。そこで、標記の国際シンポジウムを、12月12日〜14日、つくば国際会議場で開催し、15か国から276名の方に参加していただきました。

1日目は、モンスーンアジア地域における農業環境問題と今後の国際協力を考えるシンポジウムが行われました。冒頭、農業環境技術研究所の佐藤理事長が、農業と環境に関わる問題の重要性と、その解決のために国際協力が必要であることを述べ、新たな研究コンソーシアムの設立を提案しました。

続いて、京都大学の田中耕治教授が、アジア地域における豊富な国際共同研究に基づいて、学際的な地域研究(現場主義)の重要性を指摘し、国際稲研究所の R. Zeigler 所長が、同研究所の新たな研究戦略を紹介するとともに、貧困克服と環境の持続性を考えた稲作研究について、講演を行いました。また、オーストラリア・クイーンズランド大の S. Fukai 教授は、同教授が実施してきた東南アジアにおける国際協力の実例を紹介しつつ、持続的イネ生産のために国際研究協力のあり方について、北海道大学の波多野隆介教授は、農業生態系で過剰に使用された窒素が水環境や地球温暖化へ大きなインパクトとなっていること、そして、インド・アンナマライ大学の Kathiresan 教授は、アジア地域において蔓延している侵略的外来植物を紹介するとともに、それらによる被害の温暖化による深刻化について、講演を行いました。

2日目と3日目には、(1) アジアにおける侵略的外来植物の実態と制御、(2) 遺伝子組換え作物からの遺伝子流動とリスク評価、(3) 温暖化による東・東南アジアのコメ生産変動予測、(4) モンスーンアジアの農業生態系からの温室効果ガス:放出量と削減策の評価、の各テーマについてワークショップが開催され、最新の研究の成果などについて、さらに今後のモンスーンアジア地域における共同研究の方向について活発な論議が行われました。(シンポジウムの各講演の要旨、ならびに各ワークショップのとりまとめは、農業環境技術研究所の英文Webサイト に掲載します)

会議の最後に総合討議の場が設けられ、佐藤理事長より「農業環境研究の国際協力に向けた国際コンソーシアム(Monsoon Asia Agro-Environmental Research Consortium、略称MARCO)設立」を含むシンポジウム声明の提案があり、参加者全員によって合意されました。

以下に、シンポジウム声明(原文は英文)を掲載します。

シンポジウム声明
モンスーンアジア地域における農業環境研究の推進強化のために

農業環境技術研究所主催および農林水産省農林水産技術会議後援による国際シンポジウム 「モンスーンアジアにおける持続的農業のための環境資源の評価と有効利用 −国際研究協力に向けて−」 の15か国、276名の参加者は、その総意に基づき、以下のことを確認し、合意する。

1. モンスーンアジア地域における農業生態系の健全性を維持しつつ、持続的な発展を実現していくためには、農業をめぐる環境の諸問題を解決することが急務である。

2. 上記の問題を解決するためには、同地域内における各国の農業と環境に関わる研究者・技術者・行政担当者等が国際的に密接な連携の下に、一体となって、問題の解決にあたる必要がある。

3. そのために、専門や国の枠を越えたモンスーンアジア農業環境研究コンソーシアム (Monsoon Asia Agro-Environmental Research Consortium (MARCO) ) を形成し、その下に、国際的な連携をもって農業環境研究を推進する。

農環研としては、今後、この声明に基づいて、1) 国際シンポジウム等の研究情報交換の場の定期的な提供、2) コンソーシアムの情報交換の場としてのWebサイトの提供、3) コンソーシアムの下での活動を担う人材の育成への貢献 に努力していきます。

NIAES国際シンポジウム2006 「モンスーンアジアにおける持続的農業のための農業資源の評価と有効利用 −国際研究協力に向けて−」 参加者の集合写真

写真 シンポジウム参加者
(上の写真をクリックすると詳細な写真(240KB)をダウンロードできます)

※ シンポジウム当日に配布した英文要旨集の余部が若干あります。必要な方は農業環境技術研究所までご連絡ください。
連絡先: 農業環境技術研究所 企画戦略室 (電話: 029-838-8180 E-mail: kikaku@niaes.affrc.go.jp)。

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