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情報:農業と環境 No.82 (2007.2)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介 220: 持続可能なグリーン・ツーリズム −英国に学ぶ実践的農村再生− 青木辰司、小山善彦、バーナード・レイン 著、 丸善 (2006) ISBN4-621-07776-7

グリーン・ツーリズムは、1990年代後半以降、わが国でも全国的な展開を見るに至り、わが国の農山漁村の特殊性に基づく個性的な実践によって、西欧のグリーン・ツーリズムとは異なる 「日本型グリーン・ツーリズム」 が急速に広まりつつある。この 「日本型グリーン・ツーリズム」 が都市と農山漁村との対等な連携交流として持続化していくためには、主体性、互酬性、双方向性の確保を基本理念とすべきことを主張する著者は、「日本型グリーン・ツーリズム」 に内在する特殊日本的課題を透視し、4つを指摘する。1) 体験主義の浸透と画一化、2) 規制緩和と品質管理、3) 市場の未形成とわが村意識の強化、4) 行政支援の不整備と個別ビジネス化、である。

英国では1970年代から農村を場とするツーリズムが普及しはじめ、1980年代には 「グリーン・ツーリズム」 へ、さらに1990年代に 「持続可能なツーリズム」 へと概念を拡張しながら英国社会に深く根を拡げている。本書の著者たちは、ツーリズムを通して日本農村の再生をめざすことを本書執筆の共通の立脚点として、農村再生の実践的課題として品質管理の問題を取り上げ、英国における農家民宿の品質保証制度に焦点を当てながら、農村のツーリズムの今後の課題を考察している。

「日本型グリーン・ツーリズム」 に内在する特殊日本的課題を解決し農村再生を図る上で本書は多くの示唆を与えてくれる。国、県、市町村の農村政策に携わる人々、英国の農村ツーリズムを学び研究する人々に本書を一読することを勧めたい。さらに、わが国でグリーン・ツーリズムを実践している人々には、巻末に掲載されている 「小規模宿泊施設品質評価マニュアル」 と併せて、実践的知見を得る上で大いに参考になる。座右の書にちょうどよい。

目次

はじめに

序  今、なぜ日本農村再生か

1 英国から見た日本農村−その現状と課題

2 地域再生から農村再生へ

3 実証研究から政策的実践科学へ

4 農村再生におけるツーリズム実践の意義

 I  イギリスにおける農村ツーリズムの新展開

第1章 イギリスにおける農村再生とツーリズム−グリーン・ツーリズムから持続可能なツーリズムへ

1・1 はじめに

1・2 イギリスにおける農家民宿の発展

1・3 「グリーン・ツーリズム」概念の確立とその目的

1・4 「持続可能なツーリズム」への発展

1・5 農村ツーリズムの最前線−カンブリア(湖水)地方を事例に

1・6 おわりに

第2章 イギリスにおける農村ツーリズムの品質保証制度の歴史と現状

2・1 品質保証制度の経緯と特質

2・2 品質保証計画の仕組みと具体的手続き

2・3 品質保証計画の新展開−監視主義から評価主義へ

2・4 Farm Stay UK (英国農家民宿協会) における農家民宿支援方策

2・5 新共通基準に基づく「小規模宿泊施設品質評価マニュアル」の特質

2・6 自治体および関係機関による農家民宿支援の実態

第3章 農家民宿の経営実態と経営者意識調査結果

3・1 アンケート調査結果

3・2 事例調査結果−ヘレフォードシャー県ペンプリッジ村 Lowe Farm の事例

3・3 総合考察

II  日本農村の再生と持続可能な農村ツーリズム−イギリスからのマニフェスト提案

第1章 対談・日本農村の再生と農村ツーリズムの役割−マニフェストの具体化に向けて

第2章 日本農村の再生:持続可能な農村ツーリズムのためのマニフェスト

2・1 変化創造のためのフレームワーク−日本農村を理解する

2・2 持続可能な農村ツーリズムの必要性

2・3 農村ツーリズムのための機会と成功要件

2・4 マニフェストの目的

2・5 日本における農村ツーリズムの展開

2・6 マニフェストの背景をなすコンテクスト

参考資料: 小規模宿泊施設品質評価マニュアル

結びにかえて

索引

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