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情報:農業と環境 No.83 (2007.3)
独立行政法人農業環境技術研究所

国際情報: 気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 第4次評価報告書: 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)

暖冬が進行している今季、地球温暖化がますます注目されている。このような中、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書の取りまとめが進められている。IPCCの評価報告書は、「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」など地球温暖化に対する国際的な取り組みに科学的根拠を与えてきた。今回の第4次評価報告書は1990年、1995年、そして2001年に続く第4次の報告である。

この第4次評価報告書のうち、第1作業部会報告書(自然科学的根拠)が、平成19年1月29日〜2月1日に開催された第1作業部会第10回会合で受諾され、公表された。3年にわたる取りまとめ作業を経て作成されたこの報告書には、地球温暖化の実態と今後の見通しについて、自然科学的根拠に基づく最新の知見が取りまとめられている。

報告書は、温暖化はすでに起こっていると断定している。その原因についても人間活動による温室効果ガスの増加であるとほぼ断定している。2001年の第3次評価報告書では、いずれについても「可能性が高い」としていたことに比較すると、より踏み込んだ表現となったことが注目される。そして、その内容は以下のようにまとめられている。

最近の12年(1995〜2006年)のうち1996年を除く11年の世界の地上気温が、1850年以降でもっとも温暖な12年の中に入るなど、過去100年に世界平均気温が 0.74℃ (1906〜2005年)上昇した。100年後(2090〜2099年)の平均気温の上昇について、第3次評価報告書では 1.4〜5.8℃ と予測されていたのに対し、この報告書では、6つの排出シナリオのうち、経済、社会および環境の持続可能性のための世界的な対策が実施される「持続発展型社会シナリオ」の場合は約 1.8℃ (1.1〜2.9℃)、高度経済成長が続き化石エネルギー源を重視した技術革新が進められる「高成長社会シナリオ」の場合は約 4.0℃ (2.4〜6.4℃) と予測されている。また、平均海面水位の上昇については、第3次評価報告書で 9〜88cm と予測されていたのに対し、上記の2つのシナリオではそれぞれ 18cm〜38cm および 26〜59cm と予測の幅が狭まっている。

このほか、農業環境にかかわる新たな見解として、 1) 2030年までは、どの社会シナリオにおいても10年あたり0.2℃の昇温、 2) 陸地での極端な高温や熱波、大雨の頻度の増加、 3) 熱帯低気圧の強度(風速や降水量)の増大、 4) 降雨量は高緯度地方では増加するが、亜熱帯の陸地のほとんどでは減少する、 5) 温暖化によって大気中の二酸化炭素の陸地と海洋への取り込みが減少し、人為起源排出の大気中への残留分が増加する傾向、などの予測が示された。

地球温暖化をもたらしている温室効果ガスなどの変化については、現在の二酸化炭素とメタンの大気中濃度が過去65万年間の自然変動の範囲をはるかに超え、二酸化炭素の濃度は、工業化以前の約 280ppm から2005年には 379ppm に、メタンは、工業化以前の約 715ppb から2005年には 1774ppb に増加したとされている。増加のおもな要因に、化石燃料の使用、農業、土地利用の変化などの人間活動をあげている。

ここで紹介した第1作業部会報告に続いて、「気候変化に対する社会経済と自然システムの脆弱性、気候変化がもたらす影響、ならびに気候変化への適応のオプション」を評価した第2作業部会報告と、「温室効果ガスの排出削減など気候変化の緩和オプション」を評価した第3作業部会報告が5月上旬までに、また、各作業部会報告の分野横断的課題についてまとめた「統合報告書」が11月に公表される予定となっている。

第1作業部会報告で示された地球温暖化の実態と今後の見通しが、農業活動にどのように関わると判断されるかは、今後、第2作業部会と第3作業部会の報告で示されることになる。

農業環境技術研究所は、第3次までの報告書作成にあたって、多くの論文を提供するとともに執筆者を出してきた。第4次報告書においても3名の査読者を出して取りまとめに貢献している。

今回の報告について、より詳細な情報を知りたい方は、IPCCのWebページ ( http://www.ipcc.ch/publications_and_data/ar4/wg1/en/contents.html (最新のURLに修正しました。2014年12月) (英語) )、気象庁のWebページ ( http://www.jma.go.jp/jma/press/0702/02b/ipcc_wg1.html および http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar4/index.html (リンク先ページが変更されています。2015年5月) ) をご覧いただきたい。

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