この資料は、情報:農業と環境63号(2005年7月)で紹介した、土と肥料の講話「地息」の追補版である。JA全農では、「土の健康」を診断できるようにと「健康な土づくりと施肥改善運動」を進め、施肥診断技術者講習会を開催しているが、この冊子は、そうした講習会の内容を補足するものとしても利用されている。前回に引き続き、この冊子も、JA全農に勤務する著者(元・当所職員 樋口太重氏)が、土と肥料に関わる研究成果や問題点などをわかりやすく解説したものである。追補とされているが、第2集とした方がふさわしかったのではないだろうか。
追補版も前版同様、興味深いエピソードとユーモアにあふれている。「カドミウムのリスクコミュニケーション」では、2005年に全農が輸入した有機質肥料の一部にカドミウムによる汚染が発見され、その対応に追われた著者の経験が述べられている。この項では、輸入有機質肥料のカドミウム汚染がどのように発見されたか、その経緯とその対応の過程とともに、その背景にある中国独自の農業事情についての考察が興味深い。この冊子はJA全農 肥料農薬部 東京肥料農薬事業所より入手可能である。
目次
序文
1. 農業とエントロピー
2. 世界の食料事情と肥料需給
3. 土の生命体
4. 水田の白煙
5. 新たな土壌管理を目指して
6. 可給態リン酸と有効態リン酸
7. 土づくり研究会を終えて
8. 土づくり肥料の散布を考える
9. 食べ物のリスクと有機農産物
10.カドミウムのリスクコミュニケーション
11.施肥量決定の手順
12.養液栽培
13.高齢者介護と農業の「待ち」をみつめて
14.腐植酸肥料・資材に関する一考察
あとがき