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情報:農業と環境 No.85 (2007.5)
独立行政法人農業環境技術研究所

農業環境技術研究所資料第30号と第31号が刊行された

農業環境技術研究所資料の第30号 「農業環境技術研究所所蔵微生物さく葉標本目録」 と第31号 「アジア太平洋外来生物データベース(APASD)マニュアル」 が刊行されました。ここでは、各号の表題と著者、「はじめに」、目次を紹介します。

農業環境技術研究所資料第30号
独立行政法人 農業環境技術研究所(平成19年3月27日発行)

農業環境技術研究所所蔵微生物さく葉標本目録
Index of Dried Plant Specimen of Microbes Stocked in NIAES Herbarium in Japan

月星隆雄・吉田重信・篠原弘亮・對馬誠也
Takao TSUKIBOSHI, Shigenobu YOSHIDA, Hirosuke SHINOHARA and Seiya TSUSHIMA

はじめに

微生物分類研究において、標本は必要不可欠である。特に糸状菌の新種記載時にはその比較のために基準となる微生物が植物葉に感染した状態の乾燥押葉などを、さく葉標本として正規の標本館で保管する必要がある。独立行政法人農業環境技術研究所の農業環境インベントリーセンター (対応するURLが変更されました。2014年4月) が管理している微生物標本館 (対応するURLが変更されました。2014年4月) は、農林水産省傘下の独立行政法人としては数少ない微生物標本保存施設の一つであり、基準標本および一般標本を引受け、保管し、貸出を行っている。

生物インベントリー(Inventory, 財産目録)は現在世界的な広がりを見せ、188ヶ国が加盟する地球規模生物多様性情報機構(GBIF, The Global Biodiversity Information Facility)を通して、各国の生物所在情報が分散型データベースとして整備されつつある。しかし、微生物インベントリーはまだほとんど手を付けられていない。わが国の微生物標本について種名、採集地等の情報をデータベース化すれば、過去から現在に至るまでの微生物所在情報および生物多様性に関する知的情報基盤として貴重な微生物インベントリーとなり、大いに活用できる。

本微生物標本目録は、農業環境技術研究所において、1880年代の旧農商務省農事試験場時代から、数多くの研究者により作製、寄託、寄贈されてきた貴重な微生物感染さく葉等標本のリストである。この目録に収録した標本の総点数は7204点、寄託された期間は1876年から2004年の129年間である。これまで著者らは所蔵している標本情報を「微生物インベントリー(microForce) (対応するURLが変更されました。2014年4月) 」としてWeb上(http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/inventory/microorg/index.html (対応するURLが変更されました。2014年4月) )で公開してきた。これは当所で保管する微生物標本の一部について画像を含めた検索を可能にしたものであるが、農業環境技術研究所が所蔵する全標本に関する情報を公開するのは本目録が初めてである。

本標本目録に収録した菌種は365属1477種(亜種等を含む)、寄主植物は621属1322種(亜種等を含む)である。この中には植物病害としては未報告の292点の標本を含んでいる。本標本目録では、その標本としての性格の違いから、農業環境技術研究所の微生物標本館で所蔵するタイプ標本類、Sydow 氏ら採集標本、一般標本、日野氏ブラジル採集標本およびキノコ類標本に分けて収録した。

これらの標本が現在に至るまで保管され、目録として取りまとめられたことは、農事試験場、農業技術研究所、農業環境技術研究所を通して関係各位の長年にわたる整備や管理によるところが大きい。関係各位に感謝する次第である。また、本稿の内容についてご意見およびご協力を頂いた元農業環境技術研究所の江塚昭典博士、大畑貫一博士、農業生物資源研究所の佐藤豊三博士に厚く御礼申し上げる。

(以下省略) 

目次

はじめに

 I . 標本の概要

 II. 各項目の説明

III. 標本目録

1. タイプ標本類

2. Sydow 氏ら採集標本

3. 一般標本

4. 日野氏ブラジル採集標本

5. キノコ類標本

IV. 索引

1. 微生物学名索引

2. 寄主植物和名索引

農業環境技術研究所資料第31号
独立行政法人 農業環境技術研究所(平成19年3月27日発行)

アジア太平洋外来生物データベース(APASD)マニュアル
A Manual for the Use of the Asian-Pacific Alien Species Database (APASD)

松井正春・上田義治・望月淳・岡部郁子・小沼明弘・西山幸司
Masaharu MATSUI, Yoshiharu UEDA, Atsushi MOCHIZUKI, Ikuko OKABE, Akihiro KONUMA and Koushi NISHIYAMA

はじめに

世界的な物流や人的交流の著しい拡大とともに、植物、昆虫を含む動物、微生物等の侵略的な外来生物(以下、外来生物を同じ意味で用いる)が増加し、これらは農作物に直接被害を与えるだけでなく、固有の生物多様性あるいは生態系に対する撹乱要因にもなっている。そのため、外来生物の防除は世界的な緊急課題となっているが、一方では、防除に伴う経済的コストや環境負荷の増大等が懸念される。

アジア・太平洋地域においても、外来生物がもたらすリスクは同様であり、これら外来生物の動態を把握してその変動を予測し、蔓延防止策及び経済的被害の軽減策を確立することが急務となっている。そのためには、外来生物の分布拡大等の状況、被害、環境影響評価等に関する情報を収集・蓄積するとともに、これらの最新情報をデータベース化し、インターネットにより情報の共有化を図ることが重要となっている。

農業環境技術研究所は、2003年にアジア・太平洋食糧肥料技術センター(FFTC)と共催して、つくば市で国際セミナーを開催し、アジア・太平洋地域における外来生物の現状と環境影響等に関して研究成果の発表と論議を行った。併せて、本セミナーでは、「アジア太平洋外来生物データベース:Asian-Pacific Alien Species Database、略してAPASD」の構築が重要な課題とされた(Yamanakaら,2003)。その後、2004年には台湾の台中市で、APASDの拡充と国際協力ネットワークの構築を目的に国際ワークショップを開催し、データベース及び各国の外来生物の状況についての発表と論議を行った(Matsuiら,2004)。現在、APASDをWeb公開し、データ入力を進めている(APASDのURLは、http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/techdoc/apasd/ (対応するURLが変更されました。2014年4月) )。

APASDの重要な目的の一つは、データベースを通じて、外来生物問題に関して国際的に貢献していくことである。このため、各国間の情報交換を英語で行う必要があり、英語版APASDの充実を図っていくことが重要となっている。農環研は、その事務局としてAPASDの管理及びデータ登録の協力者確保等の重要な役割を担っている。

そこで、本研究資料でAPASDの特徴、構造、機能、使用法等を明らかにしていくことは、一般閲覧者、データ登録者、管理者等の関係者がAPASDについて理解を深めるのに役立つとともに、今後のAPASDの運用と発展にとって必要不可欠であるので、その概要を述べる。

目次

 I  はじめに

 II データベースの特徴と入力内容

1 データベースの特徴

(1) アジア太平洋地域の農業生態系に生息する侵略的な外来生物が対象

(2) データ入力のルーチン化が可能で管理が容易

(3) 各国/地域からオンラインで外来生物種のデータ入力が可能

(4) 同一種のデータを国間で比較するのが容易

(5) 写真が掲載できる

(6) 入力されている全文献リストから文献を検索できる

2 データベースに入力できる項目及びデータの内容

(1) 種の分類同定に関係する項目

(2) リスク評価に関係する項目

(3) 対策に関係する項目

(4) 写真

(5) 文献情報

III 構造と機能

1 データベース・システムの概要

2 データベースの機能

(1) 一般閲覧者による閲覧機能

(2) 登録者によるデータの入力と更新機能

(3) 管理者によるデータベース管理機能

IV 具体的な使用方法

1 一般閲覧者による閲覧方法

(1) トップページに表示された項目の閲覧

(2) 外来生物種の検索(生物群、国/地域名、侵入/発見年による検索)

(3) 個別の外来生物種の絞り込み/選択

(4) サブテーブル関係のデータの表示

(5) 文献の検索

(6) 個別種について項目を選択し国/地域間のデータを比較する方法

(7) シノニム関係にある外来生物種の表示

(8) 個別種の全データの一括表示と印刷

2 登録者によるデータの記載及び入力・更新方法

(1) データ登録者による記載様式への記載方法

(2) オンラインによるデータの入力と更新

 V 日本語版(現地語版)への変換

1 英語版APASDから日本語版(現地語版)への変換方法

2 日本語版の具体的な事例

VI 今後の課題

1 入力データ数の拡大と内容の充実

2 国内外のネットワーク形成

3 システムの改善

VII おわりに

引用文献

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