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情報:農業と環境 No.85 (2007.5)
独立行政法人農業環境技術研究所

水環境保全のための農業環境モニタリングマニュアル 改訂版

農業環境技術研究所では、1999年に、農業をめぐる地域の水環境を保全するためのモニタリング手法を解説した「水環境保全のための農業環境モニタリングマニュアル」を発行しました。これまでに広く関係機関にご利用いただいてきたところですが、このたび、その後に得られた多くの成果を取り入れた改訂版を発行しました(*)。

* 農業環境技術研究所Webサイト内(http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/techdoc/monitoring/)でPDFファイルを公開しています。

施肥などの農業活動に伴い農地から流出する窒素・リンが、河川や湖沼など水環境の富栄養化の一因となっています。全国の約5%の井戸水で依然として環境基準を超える硝酸性窒素が検出されており、湖沼水質保全特別措置法で定める特定湖沼の水質も改善傾向が認められていません。また、水田に散布された除草剤が河川へ流出して、水辺の生物相に影響を及ぼすこともあります。農地から水環境へ排出される窒素・リンなど汚濁負荷の削減に向けて、土壌診断に基づいた施肥管理、肥効調節型肥料の利用、除草剤散布後の止め水などの技術が実用化されています

最近、汚濁負荷の削減に向けた技術を普及するために、さまざまな施策が講じられつつあります。滋賀県が2004年から進めている「環境農業直接支払制度」では、化学合成農薬および化学肥料の使用量を通常の5割以下に削減するとともに、農業排水を適切に管理するなど、環境に配慮した方法で栽培した農産物を「環境こだわり農産物」と認定しています。また、農林水産省が2007年度から実施する「農地・水・環境保全向上対策」(**)では、農地や農業用水などを地域ぐるみで守る共同活動に対して活動経費、水質保全を目的とした先進的な営農活動などに対して支援が行われます。

** http://www.maff.go.jp/j/nousin/kankyo/nouti_mizu/ (ページのURLが変更されています。2015年1月)

環境農業直接支払制度のような施策に対する国民の理解を促すためには、汚濁負荷の低減効果を定量的に明らかにする必要があります。そのため、農業を取り巻く周辺の環境の実態を正確に知ること、すなわち、農業環境のモニタリングが不可欠です。当研究所では、2001年より、化学環境部栄養塩類研究グループ(旧組織名)を中心に、「土壌・水系における硝酸性窒素等の動態解明と流出予測モデルの開発」に関する研究を進め、水環境のモニタリングに関連する新たな成果を数多く得ることができました。改訂版には、これらの成果をはじめ最新の情報が広く取り入れられています。

目次

  I 農業環境モニタリングの基本事項

I-1 農業環境モニタリングの目的と調査手法、 I-2 各種の水質基準と測定方法、 I-3 汚濁負荷の推定法と地下水の水質解析法

 II 流域環境調査法

II-1 土壌環境調査法、 II-2 土壌断面調査法、 II-3 土壌機能評価図の作成法、 II-4 土地利用現況調査法、 II-5 土地利用現況調査法(リモート・センシング利用)、 II-6 表流水流線および集水域調査法、 II-7 流域水収支及び水田水利用の概況調査法

III 流域負荷源調査法

III-1 農業活動状況と農業資材投入調査、 III-2 養分収支調査法、 III-3 流域における地目別養分収支の推定例

IV 水移流調査法

IV-1 土壌浸透水調査法(水収支法)、 IV-2 浅層地下水流量調査法、 IV-3 表流水の流量測定とサンプリング法、 IV-4 地温探査法による地下水の水みちの位置・規模の調査法、 IV-5 地形分析による浅層地下水流動の予察手法

 V 負荷物質の動態調査法

V-1 流域水質解析法:エンドメンバーズ法による負荷源別寄与率推定、 V-2 窒素および酸素安定同位体自然存在比を用いた窒素動態解析法、 V-3 埋設型ライシメータ法およびモノリスライシメータ法、 V-4 土壌浸透水による溶脱窒素・リンのモニタリング法、 V-5 暗渠流出する懸濁物質およびリンの測定法、 V-6 環境における農薬調査法、 V-7 脱窒速度測定法

VI 流域水質評価法

VI-1 面源由来窒素負荷の地形連鎖系指標を用いた河川水質への影響評価法、 VI-2 地形連鎖窒素フローモデル(田渕モデル)

VII 生物相による水環境評価

VII-1 水辺植物による水環境評価法、 VII-2 トビケラ成虫を指標とした水環境評価法、 VII-3 トンボを指標とした地域環境評価法

VIII 水環境保全のための各種情報

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