国連によるミレニアム生態系評価が2001年から開始され、その検討結果が2005年3月に 「ミレニアム生態系アセスメント総合報告書」 として公表された。その概略は 農業と環境No.63 の 「国際情報: ミレニアム生態系アセスメント」 において、すでに紹介しているので参照されたい。このたび、本報告書の日本語への翻訳が、横浜国立大学21世紀COEプログラム「生物・生態環境リスクマネジメント」の研究推進の中で実施され、日本語版が発行されたので紹介する。
報告書では、生態系から人類が得る恵みを、4つのサービス(生態系サービス)「(1) 食糧、水、繊維のような供給サービス、(2) 気候、洪水、疾病、廃棄物、水質に影響する調整サービス、(3) レクリエーションや審美的、精神的な恩恵を与える文化的サービス、(4) 土壌形成、栄養塩循環、光合成などの基盤サービス」 に整理している。そして、これらのサービスの変化による人間の福利への影響を評価することを目的にしている。
本報告書は、多くの科学的データに基づいて今後とるべき行動を示唆している。日本語訳が出版されたことから、環境問題を考える上でより理解しやすくなるものと思われる。
目次
日本語版への序文
日本語版発行にあたって
原著序文
緒言
読者への手引き
意思決定者のための要約
── 生態系サービスの劣化と持続不可能な使用
── 生態系の非線形的変化、および生態系が突然変化する可能性の増大
── 特定の人々やグループの貧困と、グループ間の不平等と格差の助長
制度とガバナンス/経済と奨励策(インセンティブ)/社会的および行動的対策/技術的対応/知識に基づく対応
ミレニアム生態系評価において検討された重要な課題
1. 生態系はどのように変わってしまったのか
生態系の構造/生態系プロセス/種/遺伝子
2. 生態系サービスとその利用はどう変わってきたのか?
3. 生態系の改変は人間の福利と貧困の緩和にどのように影響しているか?
生態系サービスと人間の福利との関係/生態系サービス、「ミレニアム開発目標」、貧困の削減
4. 生態系を改変する最も重要な要因は何か?
間接的要因/直接的要因
5. 生態系とそのサービスは、さまざまなシナリオのもとで将来どのように変化するだろうか?
ミレニアム生態系評価のシナリオが予測する直接および間接的な生態系改変要因の変化/生態系の変化/生態系サービスと人類の福利の変化
6. サブグローバル規模で、生態系の改変が人間の福利に及ぼす影響について、何を学ぶことが出来るか?
7. 生態系の非線形的変化の時間尺度、慣性、リスクについて何がわかっているのか?
時間尺度と慣性/生態系の非線形的変化
8. 生態系を持続的に管理するためにはどのような選択肢があるか?
制度とガバナンス/経済と奨励策(インセンティブ)/社会的および行動的対策/技術的対策/知識に基づく対応/効果的な意思決定プロセスのデザイン
9. 生態系にかかわる意思決定の妨げとなる最も重要な不確実性とは何か?
現状と動向/シナリオ/対策オプション
付録
── 付録A生態系サービスについての報告
食料/水/木材、繊維、燃料/生化学物質および遺伝資源/生態系サービスが気候に与える影響/疾病への影響/廃棄物処理/自然災害の調節/栄養塩循環
── 付録B対策の有効性
── 付録C編著者一覧
── 付録D略語、よく使われる頭字語、図の出典一覧
── 付録E評価報告の目次
索引
パネル&ボード関係者一覧
サポート組織一覧
訳者一覧