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情報:農業と環境 No.91 (2007.11)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介 244: 海ゴミ ―拡大する地球環境汚染 (中公新書 1906)、 小島あずさ ・ 眞 淳平 著、 中央公論新社 (2007) ISBN978-4-12-101906-6

魚網やロープが無数に漂着する知床岬、海岸一帯に発泡スチロールが散乱する長崎県対馬、ゴミに埋まるウミガメの産卵地の瀬戸内海の海岸、そして南西諸島の島々まで、日本の海岸は押し寄せる大量の漂着ゴミに侵食され、埋まっている。さらに、こうしたゴミはいくら取り除いてもまたすぐに押し寄せ、きりがない。

漂着ゴミのうち、海上で投棄されたものの割合は2割程度で、残り8割は陸上をもともとの発生源にしていると推測されている。だから、決して海だけの問題ではない。漂着ゴミはさまざまなところで発生しており、それが発生を抑える対策を難しくしている最大の要因である。

種類がきわめて多様な漂着ゴミのなかでも、プラスチックのゴミがとくに多い。世界中で増え続けているプラスチック製品が、使用後に適正に処分されずに環境中に放出され、一部が河川を通して海洋に流れ込んでいる。漂着ゴミの個数で1番多いのは硬質プラスチックの破片で2番目は発泡スチロールの破片、そして3番目はなんとタバコの吸い殻・フィルターが占める。心ないポイ捨てが積もり積もって日本中の海岸に押し寄せる。

日本各地の離島における漂着ゴミを調査した結果、流出国が特定できたもののうち、韓国、中国、台湾、ロシアの外国製品が 10〜30 %であるのに対し、日本の製品は 5〜20 %で、海外由来のゴミの方が多かった。ただしこの数字に関しては、日本から流出したゴミは、海流などの関係で、国内に漂着するだけでなく太平洋上に広く拡散するものもあるらしい。海外への漂着を示すデータが少ないだけで、日本もまた大きなゴミ産出国であるという。

プラスチックゴミが問題となるのは、海岸だけではない。小断片化したプラスチックゴミは世界中の海洋に遍在しており、北太平洋の米国沿岸域で、調査用の網を引いて調査した例では、採取されたプランクトンの量が 450 グラム程度だったのに対し、プラスチック片は 2,700 グラムも採取されている。まさに、世界中の海にプラスチックが浮遊している。

プラスチックゴミは鳥や海洋生物に誤って飲み込まれ、これらの野生生物の生命を危うくするだけでなく、食卓の定番である板海苔(のり)や小魚にも混入しつつある。さらには動物プランクトンも超微細なプラスチック片を取り込むという。プラスチック片には内分泌かく乱作用が疑われている化学物質を含んだり吸着していることがあり、食物連鎖の下位にいる動物プランクトンに摂食されると、海洋生態系や人間にまで、影響が及びかねない。

いまや、海洋のプラスチックゴミは、地球規模での広がり、その影響の大きさ、解決の困難さ、どれをとっても、温暖化に匹敵するとも言える地球規模の環境問題となっており、対処していくための政治・社会・経済上の動きなど、両者に共通する点が多いという。解決のためには、まず発生抑制・回収のための制度設計が最重要で、市民、行政、研究者、企業などの協議の場を設定することが非常に大きな意味を持つという。

解決の切り札としては生分解性プラスチックが期待されるが、2005年に国内で生産されたプラスチック 1,400 万トンに対し、国内で使用された生分解性プラスチックはわずか1万トンに過ぎない。その原因の一つは価格である。今後生産量が増えればコストも低下するであろうが、バイオエタノールと同様、原料をめぐって食料との奪い合いが現実味を増している。

事態は少しずつ動き出しているという。しかし、解決のためには、科学者による科学的なデータの集積・解析と、国際的な問題提起が重要であろう。

目次

第1章 日本中の海岸に 「ごみ」 が漂着する

第2章 漂着ごみとはなにか

第3章 大量のごみが国を越えて移動する

第4章 「漂流ごみ」 が海洋生態系を危機に陥れる?

第5章 漂流・漂着ごみに対処する法律・制度

第6章 進みはじめた漂流・漂着ごみ対策

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