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情報:農業と環境 No.94 (2008.2)
独立行政法人農業環境技術研究所

第三次生物多様性国家戦略の決定

1992年、国連環境開発会議 (リオデジャネイロ) で 「生物の多様性に関する条約」 (生物多様性条約) が採択され、2007年7月までに190か国が本条約を締結している。この条約の目的である 「生物多様性の保全」、「その持続的な利用」 および 「遺伝資源から得られる利益の衡平な配分」 を達成するため、各国政府は 「国家戦略」 を定めることが求められている。

わが国は、1995年に最初の生物多様性国家戦略を策定した。2002年にはこれを見直し、「自然と共生する社会」を政府一体で実現していくためのトータルプランとして「新・生物多様性国家戦略」を策定した。そして、これまでの取組みを点検し、また、省庁の施策(「農林水産省生物多様性戦略 (リンク先を最新のページに変更しました。2014年10月)、2007年7月」など)や各団体からの意見を聴取しながら、「第三次生物多様性国家戦略 (リンク先を最新のページに変更しました。2014年10月)」が2007年11月27日に閣議決定された。

本国家戦略は「第1部 生物多様性の保全及び持続可能な利用に向けた戦略」と「第2部 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する行動計画」の2部からなっている。第1部では、わが国の生物多様性の現状について、(1) 人間活動や開発による危機 (種の減少・絶滅、生息地・生育空間の縮小・消失)、(2) 人間活動の縮小による危機 (里地里山など生態系の変化)、(3) 人間により持ち込まれたものによる危機 (外来生物種など) を整理するとともに、新たに、(4) 地球温暖化による危機を、多くの生物種の絶滅や生態系の崩壊につながる深刻な問題として特記している。

さらに、「自然共生社会 (人と自然が共生する「いきものにぎわいの国づくり」) の実現にむけて、生物多様性から見た国土のグランドデザインと、自然生態系を回復するための「100年計画」を提示する。その実施主体として、国、地方公共団体、企業、そしてNGO、地域住民などの参加の重要性を示し、地方と企業による取組みの必要性を強調している。

今後5年間程度の間に取り組むべき重点施策の方向性として、(1) 生物多様性を社会に浸透させる (「いきものにぎわいプロジェクト」 や自然体験学習など)、(2) 地域における人と自然の関係を再構築する (里地里山の管理モデル構築、農山村の活性化など)、(3) 森・里・川・海のつながりを確保する (生態系ネットワークの具現化、国立・国定公園の総点検など)、(4) 地球規模の視点を持って行動する (生物多様性条約COP10の開催、温暖化緩和策と適応策の検討など)の4つを基本戦略として挙げた。

第2部には、今後5年間程度の行動計画として約650の具体的施策が体系的に示されている。これらには実施省庁と、可能な限りの数値目標が記載されており、農林水産業の役割が大きいことが一目瞭然である。農林水産省の施策には、単独の場合と、他省庁との連携の場合があるが、農林水産業における生物多様性を推進するため、(1) 田園地域・里地里山の保全、(2) 森林の保全、里海・海洋の保全など地域別の取組みに加えて、(3) 森・川・海の生態系保全のための農業生産や森林整備などへの積極的取組み、また、(4) 遺伝資源の保全、(5) 地球環境保全への貢献など、広範な実施計画が記載されている。

今回の「第三次生物多様性国家戦略」では、生物多様性の意義や保全の重要性、さらに、産業の持続的な発展や、国民生活での各種の取組みによる連携の必要性がこれまで以上に明確に示された。また、この生物多様性国家戦略は、環境基本計画21世紀環境立国戦略をはじめとして、外来生物法鳥獣保護法 (リンク先を最新のページに変更しました。2014年10月)自然公園法など、さまざまな環境施策と密接に関係している。「持続可能な社会」を創り上げるため、真剣な取組みが求められているといえる。

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