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情報:農業と環境 No.95 (2008.3)
独立行政法人農業環境技術研究所

農林水産技術会議事務局 「研究成果」 シリーズの紹介 (12): 「地球温暖化が農林水産業に与える影響の評価及び対策技術の開発」

地球温暖化に関しては、昨年 (2007年)IPCC第4次報告が公表され、温室効果ガスの増加による地球温暖化はすでに地域的な気候変動を引き起こしていると報告されています。また、気候変動枠組み条約に基づいて採択された京都議定書の第1約束期間が今年からスタートし、わが国は温室効果ガス総排出量を1990年当時に対して、6%削減することが求められています。

一方、地球温暖化は、農林水産業に大きな影響を及ぼすことが予想されるとともに、温室効果ガスの排出削減目標達成のために総合的な取り組みが求められています。このため、吸収源を主体とした炭素収支のモニタリング及びモデル化等を行い、地球温暖化予測に反映させるとともに、地球温暖化に伴う農業、森林及び漁業への影響評価と予測技術を開発すること、さらに、温室効果ガスの排出削減目標達成に資するため、農林業における温室効果ガスの排出削減・吸収・固定化技術を開発することが必要です。

このような要請を受け、農林水産省農林水産技術会議事務局は農業環境技術研究所をはじめとする多数の研究機関、大学、民間研究所などに委託して、研究プロジェクト「地球温暖化が農林水産業に与える影響の評価及び対策技術の開発」 を実施しました。

この研究プロジェクトの平成14年度から17年度の成果が、本年 (2008年) 1月に、「研究成果442 (最新のURLに修正しました。2012年1月)」として公表されましたので、研究課題や担当機関などをご紹介します。

研究期間・予算区分

平成14年度〜平成17年度
農林水産技術会議 環境研究

研究担当機関

独立行政法人:
農業・食品産業技術総合研究機構 (果樹研究所、花き研究所、野菜茶業研究所、畜産草地研究所、北海道農業研究センター、九州沖縄農業研究センター)、農業環境技術研究所、農業工学研究所、国際農林水産業研究センター、森林総合研究所、水産総合研究センター、水産大学校

大学:
北海道大学、東京大学、京都大学、愛媛大学、人間文化研究機構 総合地球環境学研究所

都道府県:
北海道立畜産試験場、岡山県総合畜産センター、熊本県農業研究センター

民間:
(株)三菱総合研究所

主任研究者

主査:

農業環境技術研究所 理事長
陽 捷行 (平成14〜16年度)
佐藤洋平 (平成17年度)

推進リーダー:

農業環境技術研究所 地球環境部長
林 陽生 (平成14〜16年度)
今川俊明 (平成17年度)

チームリーダー、サブチームリーダー:

(農業環境技術研究所ほか のべ9名)

研究課題と担当機関

1 陸域系

(1) 地球温暖化についてのモニタリング及び将来予測

1) 地球温暖化についてのモニタリング

ア 陸域生態系の温室効果ガス収支の機構解明とモニタリング(農環研)

イ 陸域植生の純一次生産力の長期変動モニタリング(森総研)

2) 地球温暖化についての将来予測

ア 地球温暖化が世界農業へ及ぼす影響の経済的評価(国際農研セ)

イ 温暖化による応答を組み込んだ農業生産力の変動(農環研)

(2) 地球温暖化の影響及びリスクの解明

1) 地球温暖化に伴う農業への影響把握

ア 大気CO2の増加が農作物の高温ストレスに及ぼす影響(農環研)

イ 地球温暖化に伴う水稲の高温障害発生のリスク解明(九農研セ)

ウ 地球温暖化が我が国の畜肉生産に及ぼす影響評価と予測技術の開発(畜草研)

エ 果樹農業に対する地球温暖化の影響予測モデルの開発とその影響評価(果樹研)

オ 高温ストレス応答機構の解析に基づく地球温暖化による野菜の生産力低下の影響評価(野茶研)

2) 地球温暖化による森林生態系及び森林資源への影響評価と将来予測

ア 地球温暖化に伴う森林群落動態モデルの開発(森総研)

イ 地球温暖化とその対応が森林・林業・林産業に与える影響の予測と評価(森総研)

2 水域系

(1) 地球温暖化についてのモニタリング及び将来予測

1) 地球温暖化についてのモニタリング

ア 親潮域・混合域における低次生態系モニタリング(水研セ)

イ 黒潮域における低次生態系モニタリング(水研セ)

ウ 対馬暖流域における低次生態系モニタリング(水研セ)

2) 地球温暖化の影響及びリスクの解明

ア 温暖化がプランクトン生態系に及ぼす影響の評価と予測技術の開発(水研セ)

イ 温暖化が藻場に及ぼす影響の評価と予測技術の開発(水研セ)

ウ 温暖化が魚類の漁業・養殖業生産に及ぼす影響の評価と予測技術の開発(水研セ)

エ 温暖化が魚類の養殖業生産に及ぼす影響の評価と予測技術の開発(水研セ)

オ 温暖化が魚類の漁業生産に及ぼす影響の評価と予測技術の開発(水研セ)

3 対策系

(1) 温室効果ガスの排出削減・吸収・固定化技術の開発

1) 地球温暖化対策技術の開発

ア 栽培管理技術および土壌保全技術を利用した温室効果ガスの合理的排出削減技術の開発(農環研)

イ 畜産業における温室効果ガス排出削減技術の開発(畜草研、北農研セ)

ウ 空気膜構造による太陽エネルギー利用ハウスの開発と栽培実証(花き研)

エ 二酸化炭素吸収能向上のための森林施業システムの開発(森総研)

オ 地球温暖化に伴う高潮災害による農地海岸への影響評価と対策技術の開発(農工研)

カ 農林水産業分野における温暖化影響に関する総合評価手法の開発(農環研)

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