農業環境技術研究所連携推進会議が開催された
平成20年3月11日、東京 (会場:ホテルフロラシオン青山) において、平成19年度農業環境技術研究所連携推進会議を開催しました。この会議は、農業環境研究にかかわる連携・協力を広く推し進めるため、行政部局、独立行政法人研究機関、公立試験研究機関等の関係者に出席いただき、意見交換を通じて今後の連携推進に資することを目的としています。
会議では、農業環境技術研究所の平成19年度の業務運営に関する全般的な報告の後、地球環境研究、生物多様性研究、有害化学物質研究、インベントリー研究について、それぞれの進捗状況や研究トピックを紹介しました。その後の総合討論においては、農業環境技術研究所の活動について多数の要望やコメントをいただきました。その中から主要なものを以下に紹介します。
(1)地球環境関連研究について
- 国際的視野に立ち、世界全体として温暖化が農業に与える影響を評価することを期待する。
- 臭化メチル代替技術の開発が要求されている。温暖化対策の技術開発について連携協力をお願いする。
- 水田における炭素収支および温室効果ガス発生量の評価は、畑地や転換畑との比較を含めて重要である。
- 地球環境について、農環研では先駆的な研究を以前から推進しており、その成果が、いま各分野で活用されていると評価している。
(2)生物多様性関連研究について
- 遺伝子組換え作物と他の植物との交雑を防ぐ技術について、基礎的な研究を今後も進めてほしい。
- 有機農業の研究は、生物多様性とも関連するので、これからも協力を要望する。
- 健全な土壌の土壌生物相が明らかになれば、土壌病害虫の発生しにくい輪作体系を構築するための指標に利用できる。健全な土壌と(土壌病害虫が発生する)非健全土壌との違いを、土壌生物相の面から解析してほしい。
(3)有害化学物質関連研究について
- 有害化学物質の研究など食品の安全にかかわる分野においては、行政部局からのニーズと、研究機関における研究シーズとの間で、詳細な意見交換が必要である。
- 食品安全行政では、ハザードにかかわる科学的知見を、どのようにして実際のリスク管理につなげていくかが重要である。レギュラトリーサイエンスとして、とくに有害化学物質の問題に関して中心的な役割をになってほしい。
- ポジティブリスト制度の導入で、現場では農薬の残留にこれまでよりナーバスになっている。簡便な分析法などについて、今後も支援をお願いする。
- 窒素の物質循環のうち、土壌下層への移動についてはデータがあるが、大気への揮散についてはノウハウがないため、ご指導いただきたい。
(4)インベントリー関連研究について
- 炭素・窒素の地域環境におけるシミュレーションも重要であるので、連携協力をお願いする。
- 病害虫の同定について今後も協力いただきたい。
- モニタリング手法や研究手法に関する研修会の開催や都道府県研究機関との共同研究に、今後も積極的に取り組んでいただきたい。
- 土壌環境調査について、しっかりしたバックアップを期待する。
- 畜産分野は、高品質のタンパク質を 「窒素バイオマス」 として蓄積する農的営みである。「炭素バイオマス」 からの 「バイオアルコール燃料」 も重要だが、「アンモニア性窒素」 から Livestock (ライブストック) としての 「窒素バイオマス」 へのフローも重視できないか。今後も研究を連携推進したい。
(5)農環研の業務全般について
- 農環研はいい研究をしているのだが、わかりにくいため評価されにくい。成果のPRがまだ弱いのではないか。
- 緊急対応、社会不安に対処する研究開発といった、いわば消防署のような研究開発をぜひ続けてほしい。今すぐ役立つかはわからなくても、10年、20年後に役に立つはずの研究を考えてほしい。
- 農業者が使える技術を確立するためには、コストと、営農体系に組み込めるかどうかが大きな問題となる。都道府県などと連携し、中核研究機関として研究を推進してほしい。
- 農環研には広い分野にわたる研究の蓄積がある。新たな課題に取り組む際には、力になってほしい。
本会議で出席者からいただいた要望やコメントは、農業環境技術研究所の今後の研究推進および連携推進の参考とさせていただきます。