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情報:農業と環境 No.98 (2008年6月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

研究プロジェクト 「土壌由来温室効果ガス計測・抑制技術実証普及事業」 の開始

温室効果ガスであるメタンの水田からの発生を抑制する水管理技術を実証し、土壌中の炭素蓄積量を把握するための、新たな研究プロジェクト 「土壌由来温室効果ガス計測・抑制技術実証普及事業」 (農林水産省生産局委託) が、平成20年度から開始されました。

プロジェクトの背景

温室効果ガス総排出量の増加や「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書」に示された深刻な地球温暖化に対応するとともに、京都議定書に定められた温室効果ガス排出量6%削減に向けて、農業分野における地球温暖化防止策が求められています。

日本国内の水田に由来するメタンは、土壌中の有機物が分解されるときに発生します。その発生量は農業分野から排出される温室効果ガスの約2割を占めています。このため、中干し開始を早めたり中干し期間を延長したりすることによって温室効果ガスの排出を抑制効果が期待できる新たな生産技術が開発されています。

他方、国際指針に準じた温室効果ガス吸収量の算定方法に基づく土壌データの収集については、京都議定書以後の地球温暖化防止策の枠組みを検討するため、国内の農地土壌炭素量の実態調査が必要です。

そこで、新たに開発された、水管理によるメタン発生抑制技術の実証および全国規模の農地土壌炭素量の調査を実施します。

プロジェクトの内容

(1) 新たな水管理技術によるメタン抑制実証試験

全国8地点 (山形、福島、新潟、岐阜、愛知、徳島、熊本、鹿児島) において、公立農業試験研究機関が、中干し期間の前倒しや中干し期間の延長など、各地で可能な水管理による水田からのメタン発生抑制技術の実証を行います。

それらの結果を農業環境技術研究所が取りまとめて、水管理によるメタン排出削減係数を求め、京都議定書の第1約束期間中に 「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」 に反映させます。

(2)全国耕地土壌炭素調査

全国47都道府県の農業試験研究機関が、3,000以上の地点で深さ30cmまでの炭素量を測定します。同時に、農家に対するアンケート調査によって、その農地での施肥量、堆肥(たいひ)施用量、作物残渣(ざんさ)投入量や、不耕起など農地管理の実態 (活動量) を把握し、農地管理と土壌炭素量変動の関係を明らかにします。同一地点の土壌試料の採取・分析とアンケートを5年連続して行い、変動の傾向や誤差を明らかにすることで測定・調査の精度を高めます。土壌炭素蓄積に伴う窒素蓄積が作物生産上問題となるため、土壌窒素量の把握も行います。

農業環境技術研究所では、京都議定書の基準年 (1990年) における日本の農地の深さ30cmまで炭素蓄積量を把握するため、1990年時点の土壌図を作成します。これをもとに、地目 (水田、畑、樹園地、草地) ごとの土壌タイプ別面積を算定し、都道府県の農業試験研究機関が測定したデータから土壌タイプ別土壌炭素量を算出します。また、同様に、第1約束期間の開始年(2008年)の土壌図を作成し、土壌タイプ別の農地面積と深さ30cmまでの土壌炭素量から、全国の農地土壌炭素量を算出します。

さらに、農業・食品産業技術総合研究機構(中央農業総合研究センター)が、各公立農業試験研究機関で実施されている有機物連用試験の結果を取りまとめ、農地管理と土壌炭素量変動の関係について、より精緻(せいち)な解析を行います。

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