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情報:農業と環境 No.98 (2008年6月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

「国際影響評価学会 (IAIA) 年次大会」(2008年5月、オーストラリア(バース))参加報告

国際影響評価学会 (International Association for Impact Assessment、IAIA) は、1980年に創立された国際学会で、本部を米国に置き、世界の100以上の国々の2,500人以上の会員によって構成されています。本学会の定義する影響評価とは、「現在行われている、あるいは提案されている活動が将来引き起こす結果を明らかにする手順 (the process of identifying the future consequences of a current or proposed action)」 で、いわゆる環境アセスメントとほぼ同じ意味です。年次総会は世界各地で開催され、昨年は韓国ソウル市、今年はオーストラリアのパース市の会議展示センターで、5月5日から9日まで開催されました。


写真1 会場のパース市会議展示センター

IAIA年次総会には、欧米各国の環境省や OECD-DAC(開発援助に関する委員会)、世界銀行などからの参加者も多く、環境アセスメントの手法や法律の枠組みなどを議論する国際的にも影響力の大きい学会です。報告者の本学会への参加は2006年のノルウェー大会から数えて3回めですが、参加登録の受付の長蛇の列に並ばないですんだのは、今回が初めてでした。これは、ホスト国であるオーストラリアの開催事務局の方々の尽力によるところが大きかったと思われます。


写真2 参加登録受付のようす

この大会で扱われた議題は多岐にわたり、16部門、118セッションにもおよび、500題以上の口頭発表が行われました。セッションは提案型で、報告者らは昨年に引き続いて、「生物多様性」部門で「天然資源インベントリーの重要性 (The Significance of Natural Resources Inventory)」 というセッションを開催しました。このセッションでは、環境アセスメントを実施する際に、天然資源インベントリーを十分に活用しているか?という問いから、われわれの身近にあるありふれた環境資源をどのように認識し、適切な土地利用や地域生態系保全に役立てるかに焦点を当てました。講演者と演題は次のとおりです。

浜田竜之介 (東京農工大学): 「An Integration NRI for WHO Health City Program」

田中章(武蔵工業大学): 「Making Inventory of Habitat Suitability Index Model for Wildlife Conservation」

岡崎正規(東京農工大学): 「Technology Development for Utilization of Natural Resources Inventory: Sago Palm」

大倉利明(農業環境技術研究所): 「Fundamental Concepts and Framework for the Utilization of NRI」


写真3 セッション会場のようす(講演者は浜田氏)

まず、基盤的な生態系情報をどのように収集・蓄積するか、そして、その情報をわれわれの社会生活にどのように役立てるか、事例研究の成果の発表をもとに活発な質疑が交わされました。農業資源や地域生態系をどのように認識し価値を見いだすのかは、対象が限定された話題に思えますが、実は、さまざまな物事や社会現象に対するわれわれの関心が高まるかどうかと共通の条件がここにはあります。それは、「情報の欠落による関心の欠如」です。経済学では情報の非対称性という言い方もされるこの現象は、環境という、公共性のある資源の持続可能な利用を考える際に必ず考慮されるべきで、インベントリーを充実させ社会で共有することが唯一の着実な解決策であるということを、座長によるセッションのとりまとめで表明し、会場からの賛同を得ました。

次の大会は2009年6月にアフリカのガーナ共和国で開催されます。

(農業環境インベントリーセンター 大倉利明

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