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情報:農業と環境 No.98 (2008年6月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

「土地利用・土地利用変化及び林業 (LULUCF) 分野非公式会合」 (2008年5月、アイスランド(レイキャビク)) 参加報告

温室効果ガスの削減をめざす京都議定書の第1約束期間が2008年から始まりました。日本は、2012年まで5年間の約束期間中の温室効果ガス排出量を、1990年に比べて6%削減することになっていますが、2006年の時点では逆に6.4%増加しており、目標達成のための努力が続けられています。一方で、第1約束期間終了後、2013年以降の温暖化対策をどうするか、国際的な議論がすでに始まっており、2007年12月にインドネシアのバリで開催された気候変動枠組条約 (UNFCCC) 第13回締約国会議 (COP13) において、2013年以降の枠組みについては作業部会での議論を経て2009年までに合意する、という道筋が示されました。森林・農地などの吸収源分野についても、作業部会において検討が行われることになっています。

このような背景のもと、2008年5月7日から9日にアイスランドの首都レイキャビックで開催された 「土地利用・土地利用変化及び林業 (Land Use, Land Use Change and Forestry; LULUCF) 分野非公式会合」 に参加しました。この会合は、UNFCCCと京都議定書の下でのLULUCF分野(森林や農地など陸域の土地に係る温室効果ガスの排出や吸収に関する分野)の取り扱いに関する相互理解の醸成、各国の経験の共有などを目的とした「非公式な」会合です。2005年10月にニュージーランドで第1回、2006年4月にスペインで第2回が開催されており、今回は第3回です。非公式の場ですので、公式の作業部会やCOPなどとは違い、比較的自由な議論を行うことができ、相互理解を深める場として活用されてきています。参加者は、おもに各国政府機関の気候変動関係の担当行政官など、欧米を中心とした25か国の約80人で、わが国からは農林水産省、環境省などから11名が参加しました。


写真 会議のようす

会議では、まず、2007年に公表されたIPCC第4次評価報告書 (AR4) の中で LULUCF 分野の気候変動緩和ポテンシャルがどのように書かれているかの紹介や、過去に LULUCF 分野(土地からの温室効果ガスの排出及び吸収)と農業分野(温室効果ガス排出)の2つに分かれていた分野が、IPCC2006年ガイドライン (温室効果ガスの吸収や排出量についての算定法のガイドライン) において AFOLU (Agrculture, Forestry and Other Land Use; 農業、林業及び他の土地利用) という一つの分野になった経緯の解説など、IPCC関連の発表がありました。

次に、京都議定書で森林経営による吸収源を算定している日本や、農地管理による吸収源を算定しているデンマークなどの取組み、開催国アイスランドにおける荒廃した土地の修復による吸収源機能増進の取組みの紹介などがあり、その後、今後のこの分野の枠組みや吸収量算定のルールのあり方などについて、いくつかの国から発表が行われました。

報告者は、「日本の農地管理の取組について」と題して発表し、その中で、日本の農業の特質、農業分野の温室効果ガス排出量、土壌炭素に関する研究、適切な土壌管理によって発揮される公益的機能、日本における政策的取組みなどを紹介しました。

最後に「議長によるまとめ」が報告され、その中で、「土壌」については、(1) 土壌炭素ストックはモデルに よって推計できるが、実測に基づいてこれを補強することが可能であること、(2)土壌炭素の集積は、食料生産や生物多様性、有機性廃棄物の循環利用などにも密接にかかわっていること、が示されました。非公式の場ということで、一言一句をめぐって激しい議論が繰り広げられる、というような国際交渉の光景はありませんでした。また、今後の LULUCF 分野については、基本的に京都議定書の路線を受けつぐか、あるいはかなり違った考え方を導入するのか、現時点ではまだどちらの可能性も残されている、といった印象を受けました。

私たちが行っている地球環境問題に関する研究は、純粋に科学的な疑問を解決する部分もありますが、行政や国際機関に対して科学的データを提供することで問題解決に貢献することも強く求められます。今後も、研究と行政が一緒になってこのような場で情報を発信したり収集したりすることが重要になってくると思われます。

(農業環境インベントリーセンター 白戸康人)

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