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情報:農業と環境 No.98 (2008年6月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介254: 地球環境データブック2007−08、クリストファー・フレイヴィン 編著、 福岡克也 監訳、 ワールドウォッチジャパン(2008) ISBN:978-4948754294

米国ワールドウォッチ研究所の年次レポート。3部構成で、第1部は主要基礎データ、第2部特別分析、第3部は日本語版特別分析として中国の「バイオ燃料と食糧」を特集している。この1年、原油高騰とバイオ燃料によって、世界のエネルギー市場と食糧市場が衝突し、経済を支えている再生可能資源、とくに土地 (土壌) と水資源への負荷はますます強まっている。本書は、食糧・農業、環境、エネルギー、社会・経済などにおける動向を、各種データから紹介するとともに、問題解決に向けた取組みについても提言している。

以下、農業・食糧関係を中心に、内容を紹介する。

第1部 主要基礎データ

世界の3大穀物 (コムギ、トウモロコシ、コメ) は、2006年は天候不順にたたられ、生産量が減少した。他方、エタノール生産の拡大を受け、トウモロコシの需要はかつてない規模で拡大している。ダイズ生産はその90%を、米国、ブラジル、アルゼンチン、中国が占めるが、米国ではトウモロコシ需要の増大により、ダイズ生産は減少する傾向にある。ブラジル、アルゼンチンでは、ダイズ生産が急速に拡大しているが、これと引き換えに熱帯林およびサバンナが失われている。中国は、家畜飼料としての大豆ミールへの依存度の増大などから、輸入依存度が高い。GMダイズの割合は、米国、アルゼンチンで高く、ブラジルでも増加している。食肉生産は途上国を中心に増え続け、2006年では食肉の60%以上が途上国で生産された。FAOによれば、家畜は人為的土地利用の単独の最大要素であり、農地全体の約70%、地球の地表の約30%を食肉生産が占めているという。それにともなう一酸化二窒素 (亜酸化窒素) の排出や水質汚染も進行している。世界の耕地の約20%に過ぎない灌漑(かんがい)地で、全作物の約40%、穀物の約60%が生産された (1997〜1999年) が、コスト増や帯水層の枯渇、他部門との競合等により、灌漑地の拡大は世界的に鈍化し、一人当たりのその面積は減少傾向にある。

第2部 特別分析

農薬、肥料等の農業生産資材から加工、流通に至るまで、すべての段階において市場支配は一握りの企業に集中している。世界の鶏卵生産量は中国等を中心に急増しており、今後もこの傾向は続くとみられるが、密飼いで集約的、大規模工場的畜産による飼育は、鳥インフルエンザなどの問題が指摘されている。環境分野では、温暖化による生物多様性への影響、絶滅危惧(きぐ)種の増加(レッドリスト)、侵入種などの問題が解説されている。

第3部 特別記事

農林中金総合研究所の阮 蔚氏(ルアン・ウエイ氏)によるレポート、『中国のバイオ燃料と食糧、「穀物自給」「バイオ燃料生産」「生態環境の修復と保全」を担う中国農業』 である。中国の農業生産は、改革・開放政策の開始からの28年間に、その目標が食糧増産から、生態環境の保全・修復、バイオ燃料生産など、多様化してきた。その背景には、まず、「20世紀の最大の成果」 である食料自給の達成がある。ついで起こった食糧生産の過剰を背景に、大規模な減反政策、生産性の低い一部の農地を森林に戻す政策 「退耕還林」、穀物を原料とするバイオエタノール生産などの工業原料の供給といった政策を行ってきた。中国は今後もこうした多様な目標を追求しながら、経済の発展とそれにともなう食生活の向上によって、食糧輸入国に転換していくことが考えられる。インドとともに、世界の今後の食糧・農業生産の動向に大きな影響を及ぼすことは必至である。

目次

第1部 主要基礎データ

食料と農業と水産業の動向

穀物生産量

大豆生産量

食肉生産量

漁業生産量

灌漑面積

エネルギーと環境の動向

化石燃料

原子力発電

風力発電

太陽電池生産量

バイオ燃料

炭素排出量と地表の平均気温

気象関連災害

オゾン層

社会と経済の動向

世界人口

都市人口

世界経済

鉄鋼生産量

アルミニウム生産量

金生産量

丸太生産量

運輸と通信の動向

自動車生産台数

自転車生産台数

航空旅客輸送量

インターネットと携帯電話

軍事の動向

武力紛争

国連平和維持活動

核兵器

第2部 特別分析

食料・農業分野

巨大アグリビジネスが世界の食料を支配している

中国は世界の鶏卵の44%を生産さらに増産へ

鳥インフルエンザの脅威を拡大する大規模閉鎖型飼養場

環境分野

気候変動の影響を受ける陸生生物の多様性

ホッキョクグマがレッドリストに追加

生物多様性の喪失

深刻な海洋汚染

ボトル飲料水が発展途上国で激増

エコビレッジ

社会・経済分野

ミレニアム開発目標/識字率/児童労働者/インフォーマル経済/社会的責任投資(SRI)

保健衛生分野

エイズ/マラリア/男性の生殖機能

第3部 特別記事

中国のバイオ燃料と食糧

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