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情報:農業と環境 No.100 (2008年8月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

秋山博子 物質循環研究領域主任研究員が 日本土壌肥料学会奨励賞を受賞

農業環境技術研究所の 秋山博子 物質循環研究領域 主任研究員が、第26回日本土壌肥料学会奨励賞を受賞することが決まりました。この賞は、『土壌・肥料・植物栄養学及びこれらに関する環境科学の研究の進歩に寄与するすぐれた業績を会誌、欧文誌又はこれに準ずるものに発表し、更に将来の発展を期待しうる』40歳未満の日本土壌肥料学会会員を対象とするものです。2008年9月の同学会2008年大会において授賞式と記念講演が行われます。

受賞業績名と研究内容は次のとおりです。

農耕地土壌における亜酸化窒素の発生量評価とその発生削減に関する研究

秋山博子

(農業環境技術研究所)

研究の内容

本研究では、農耕地から発生する主要な温室効果ガスである亜酸化窒素(N2O)について、(1)発生量評価と発生抑制技術の開発、および(2)文献の解析による排出係数の推定を行った。

(1) 黒ボク畑土壌からの N2O の発生量評価と発生抑制技術の開発

独自の装置を用いた高精度モニタリングにより、肥料の違いによる N2O 発生抑制効果について検討した結果、尿素区に比べて、硝化抑制剤入り肥料区からの N2O 発生量は低い一方、被覆尿素肥料区からの発生量は高かった。しかし、いずれも有意差はみられなかった。

N2O は主に硝化と脱窒の過程から発生すると考えられている。上記の試験において硝化抑制剤入り肥料区において N2O 発生量が低下したことから、好気的な黒ボク土畑においては硝化由来の寄与が高いと考え、硝酸態肥料による発生抑制効果について検討した。その結果、被覆硝酸肥料の施用により N2O 発生量を大幅に削減できる可能性を明らかにした。

また、化学肥料に比べ、有機肥料を施用した場合の N2O 発生の研究例が少なかったことから、各種有機肥料を施用した場合の N2O 発生量の測定を行った。その結果、有機肥料の C/N 比と N2O 発生量に負の相関がみられることを明らかにした。この結果をもとに日本の畑地全体の排出量を見積もり、化学肥料とならび、有機肥料の施用も N2O の主要な排出源であることを明らかにした。

(2) 世界の水田および日本の農耕地からの N2O 排出係数の算定

世界の水田の N2O 発生量データを収集・解析した結果、N2O 排出係数は施肥窒素量の 0.31 % であり、IPCC (気候変動に関する政府間パネル)のガイドライン(IPCC, 1997 & 2000)におけるデフォルト値(1.25 %)よりも著しく低いことが明らかになった。この結果は 2006 年の IPCC ガイドラインの改訂において新しいデフォルト値として採用された。

また、日本の農耕地からの N2O 発生量データを収集・解析した結果、畑地、水田および茶からの排出係数はそれぞれ 0.62 %、0.31 % および 2.9 % と算定された。この結果は日本国温室効果ガスインベントリ報告書(環境省、2006)に採用された。

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