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情報:農業と環境 No.100 (2008年8月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

「情報:農業と環境」 100号を迎えて

「情報:農業と環境」 は、今回で第100号を迎えました。国内外の 「農業と環境」 にかかわる情報の提供と、農業環境技術研究所が取り組んでいる研究に関連するさまざまな事象の紹介を目的に、第1号が発行されたのは20世紀最後の年、2000年の5月1日でした。第1号の「はじめに」の中から、以下に引用します。

「農業と環境」は,国内外においてますます重要な問題になってきている。

ひとつは,グローバリゼーションの問題である。WTOやOECDなどで,農産物貿易や農業政策の論議において環境の保全が重視されている。またIPCCやIGBPにおいては,温暖化防止など地球規模の環境問題も重要な課題となっている。

ほかには,20世紀後半に急速に発達した鉱工業や革新的技術に由来する有害重金属による農地の汚染,環境ホルモンなど超微量化学物質の食物連鎖を通した生物相への汚染,遺伝子導入作物の生態系への影響など,もともとわれわれ人類が作り出したものによる環境へのインパクトがある。さらには,農業生産の集約化,規模拡大や耕作放棄地の拡大などによる農業環境資源の劣化や多面的機能の低下の問題がある。

21世紀に予想される様々な環境問題は,人口問題の解決をぬきにしては考えられない。環境問題は人口問題であり,人口問題は食糧問題で,食糧問題は農業問題である。したがって,環境問題はまさに農業問題なのである。

60億人を越えて増えつつある世界の人口に,大地と水と大気と生物に悪い影響を与えないように食料を供給するためには,農業生態系の持つ自然循環機能を活用し,健全な食料を生産することがきわめて重要な課題である。

第1号の発行から8年余が過ぎ、農業と環境を巡る問題は、急速に深刻の度合いを深めています。気候変動の影響はすでにさまざまな所に現れており、このまま推移した場合には破局的な事態すら予測されています。旱魃(かんばつ)等による不作、中国等の新興国の需要の増大、バイオエタノール生産の拡大等に端を発した世界の穀物価格の高騰は、貧しい国の人々を直撃し、我々の食卓にも大きな影響を及ぼしています。肥料等の農業資材や家畜の飼料、漁船のオイル価格の高騰は、農業者や畜産業者、漁業者の採算性すら危うくしています。さらに、66億人に達した世界の人口は、2050年には90億人に達するとも予想されています。迫り来る環境問題・食糧問題の解決に向け、循環型社会を構築するための取り組みが今まさに必要とされ、科学にはそのための提言が求められています。

昨年出されたIPCCの第4次評価報告書は、世界の数千人の科学者が協力して作り上げた、気候変動に関する提言であり、世界中に大きなインパクトを与えました。そうした動きを受け、解決に向けた社会的同意がなされつつあり、社会変革が促されていると言えます。環境問題、食糧問題など、さまざまな社会問題の解決のためには、IPCCに見るように、科学者が社会との密接な関係を持ちながら、連携して問題解決に貢献することが求められています。農業環境技術研究所は,新たな局面を迎えている農業と環境にかかわる問題の解決に向けて、努力して行きます。

「情報:農業と環境」では、農業と環境にかかわる最新の情報や,農業環境技術研究所の取り組みについて、今後も発信していきます。

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