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情報:農業と環境 No.102 (2008年10月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

第8回有機化学物質研究会 「農薬由来の POPs による土壌汚染の環境修復に関する最近の動向」 が開催された

残留性有機汚染物質 (Persistent Organic Pollutants, POPs) は、環境中で分解されにくい、地球規模で長距離移動する、生物体内に蓄積しやすい、人畜や環境に有害な影響を及ぼす危険性があるという4つの性質をもっています。POPs については、その削減や廃絶などに向けた 「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約 (POPs条約)」 が平成16年に発効しました。POPs に指定されている化合物のうち9つは農薬由来ですが、近年、わが国において、キュウリでドリン類、カボチャでヘプタクロルが残留したという報告がありました。国際的にも、POPs 検討委員会において、クロルデコン、リンデン、エンドスルファンなど農薬を用途とした化合物について、新たに POPs として指定することが検討されています。

農林水産省では、農耕地における POPs 問題への対策に向けて、これまで3つの大きな研究プロジェクトを実施して、その動態の解明や対策技術の開発に取り組み、農業環境技術研究所はそれらを中心的に推進してきました。また、その研究成果の公表も含めて、第2回第4回第5回 の「有機化学物質研究会」において、POPs をテーマに取り上げました。

そこで、さる9月17日、農業環境技術研究所において、「農農薬由来のPOPsによる土壌汚染の環境修復に関する最近の動向」をテーマに、第8回有機化学物質研究会が開催されました。具体的には、POPsに関する最近の動向、およびPOPsの土壌環境修復に関連した取り組みを紹介することによって、POPsのリスク管理に関する今後の研究方向を探りました。6名の講師の方々に講演していただき、その後総合討論(パネルディスカッション)を行いました。参加者は、都道府県の農業試験場、行政、植物防疫関係団体、関連民間団体など、約118名でした。

開催日時: 平成20年9月17日(水曜日) 10:00〜17:00

開催場所: 農業環境技術研究所 大会議室

参加者数: 118名(農環研:35名、他の独立行政法人:5名、大学:2名、公立試験研究機関:34名、行政:14名、関連団体:28名)

論議の内容

講演1では、「POPsに関する国内外の現状と取り組み」と題して、環境省・環境保健部・環境安全課の木野修宏氏から話題提供がありました。そこでは、POPsの国内外の問題と条約の概要、国内実施計画に基づく措置、COP4(締約国会議)に向けた最近の動きについて、新たに指定を検討している化合物も含めて紹介されました。

講演2では、「POPsの無害化処理技術について」と題して、国立環境研究所の循環型社会形成推進・廃棄物研究センターの野馬幸生氏から話題提供がありました。まず、POPsの廃棄物に関する国際的規制や国内対応の話があり、その後、点源汚染を中心としたPOPs処理技術としての各種無害化技術について解説されました。

講演3では、「POPs汚染対策事業の実態」と題して、消費安全局・農産安全管理課・農薬対策室の渡辺高志氏から話題提供がありました。POPsの規制、埋設農薬に対する取り組み、後作問題、関連研究および今後の課題について広範に紹介されました。

講演4では、「土壌・地下水汚染のリスク/便益評価に基づくリスクマネジメントについて」と題して、国際環境ソリューションズ株式会社の保高徹生氏から話題提供がありました。土壌汚染のリスク評価やリスク/便益評価に基づくリスクマネジメントに関する基本的考え方や、対象としては重金属でしたが、異なる土壌汚染の実態に対する具体的適用事例について、わかりやすく説明され、POPsにも十分応用できるものでした。

講演5では、「POPs汚染土壌のバイオレメディエーション技術の最近の動向」と題して、農業環境技術研究所の高木和広主任研究員から話題提供がありました。まず、わが国におけるPOPsの汚染実態や実用的対策技術について取りまとめました。その後、POPsの微生物分解について、ドリン類、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、ヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)について、自らの研究をベースにさまざまな研究について解説されました。

講演6では、「POPs汚染土壌のファイトレメディエーション技術の最近の動向」と題して、農業環境技術研究所の大谷卓上席研究員から話題提供がありました。最初にファイトレメディエーションに関する基本的な知見が紹介されました。その後、POPs汚染土壌の植物による浄化の研究事例をまじえながら、実用化に向けた技術開発の取り組みについて、解説されました。

最後に総合討論 (パネルディスカッション) が行われ、POPsによる土壌汚染の修復について、さらに理解を深めることができました。また、POPsによる土壌汚染の修復にとどまらず、新規候補物質を含むPOPsに関する国内外の状況を総括的に把握することができ、わが国におけるPOPs研究の緊急性・重要性について、再認識することができました。

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