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情報:農業と環境 No.103 (2008年11月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介 261: Environmental Performance of Agriculture at a Glance (図表で見る農業の環境業績)、 OECD publishing (2008)  ISBN 978-92-64-04589-7
PDF版 http://www.oecd-ilibrary.org/agriculture-and-food/environmental-performance-of-agriculture-at-a-glance_9789264046788-en(ページのURLが変更されました。2013年12月)

OECD の「農業環境指標シリーズ」として、Concepts and Frameworks (1997)、Issues and Design (1999)、Methods and Results (2001) に続く4番目。メインレポートは 「OECD 諸国の 1990 年からの環境業績 (Environmental Performance of Agriculture in OECD Countries since 1990)」で、ここで紹介する冊子 ( Environmental Performance of Agriculture at a Glance 「図表で見る農業の環境業績」)はその姉妹本である。主要な結論をまとめ、カラー刷りの図表で解説している。前半は農業環境指標ごとに、後半は国別に、環境指標値の 1990 年からの変動を説明している。OECD が進めている農業環境指標の取組みと到達点、世界の農業環境問題の現状を知ることができる。以下、本書の 「ハイライト」 の前半の抄訳により、概要を紹介する。

OECD 諸国において農業は、平均して水と土地資源の40%以上を利用しており、環境に大きな影響を及ぼしている。農業が環境に及ぼすインパクトは農地内 (オン・ファーム) でも、農地外 (オフ・ファーム) でも起こり、これには土壌、水、大気の汚染や劣化が含まれる。こうした負の影響の一方で、農業は生物多様性のような生態系サービスを提供し、温室効果ガスの吸収源として機能し、また、洪水のコントロールやランドスケープの美的価値に貢献している。

OECD 諸国のほとんどが農業の環境業績を追跡・記録しており、政策決定者や社会に農業環境の現状や傾向に関する情報を提供し、政策分析に有効な支援となっている。OECD 諸国は、農業環境問題の解決に向けてより幅広い政策手段を講じつつあるので、こうした指標は農業環境政策の効果をモニタリングして分析するのに必須である。これらの指標はまた、将来の政策シナリオと農業計画の環境に対する影響を理解し、分析するのに役立つ。

本報告は、1990 年以降の、農業の環境業績に関する、OECD 諸国の最新でもっとも包括的なデータを提供している。1セットの農業環境指標 (1990 年以降の OECD 諸国の農業の環境達成度の全リスト、別冊 II.A1) が、OECD諸国の専門家が集まった、数回に及ぶテーマを決めたワークショップや文献のレビューにより構築されてきた。OECD の Driving-Force-State-Response model が、開発された指標のフレームワークとなっている。

本報告は、政策の関連性、分析の十分さ、測定可能性、それに解釈の容易さといった、確立した指標基準をもっとも満足させる指標に焦点を当てている。これらの指標は、多くの OECD 諸国が直面している農業環境問題に関連し、OECD を代表する一連の国々が利用できる科学的データに基づいている。「ハイライト」 に続き、第2部では OECD 諸国の農業環境状況の傾向を、第1章を引用しながら要約している。1990 年以降の農業の環境達成度に関しては第3部で、第3章の 1990 年以降の OECD 諸国の農業の環境達成度を引用しながら、30の加盟国それぞれとEU15か国について、より詳細に解析している。

指標は、OECD 加盟国で、さまざまな開発段階にある。OECD の農業環境指標プロジェクトは、OECD メンバー国と密接に協力してきた。このことはお互いに有益であり、多くの努力により研究を確立し、方法を決め、指標を開発するためのデータを提供してきた。このことはしばしば OECD 諸国の大きな負担ともなったが、環境達成度と政策の有効性を追跡して評価するのに必須のツール一式が完成している。

全体的な農業環境業績

OECD の農業環境業績は、国の中でもかなりの変動はあるが、全体的に改善されてきている。改善をもたらした主要な要因は、政策決定者、農業者、それに農業関係企業が、環境の状況に関する市民の関心にこたえたことである。

しかし将来は、いくつかの国と地域では、水の可給度と質、生物多様性の保全、それに土壌の健全さに関して、引き続き懸念がある。このレポートでは農業以外に由来する汚染の農業に対する影響は扱わないが、たとえば外来種による被害、土地と水資源の農業以外の利用との競合、気候変動のインパクトといった要因は、農業の環境達成度を評価する際には心にとめておく必要がある。

国の所得と雇用に占める農業の割合は、OECD 諸国では全般的に小さい。しかし、1990-92 年と 2002-04 年を比べると、半数の OECD 国では農業生産はほとんど変わらないか減少したにもかかわらず、全体では農業生産は4%増加し、次の10年間にはさらなる成長が見込まれている。OECD 全体で農地は4%、農業従事者は15%減少したにもかかわらず、作物の遺伝的改良、肥料、農薬、水、エネルギーの投入方法の改良、技術革新、農業構造の改善により、より高い生産性が達成された。農地の減少は主として森林や都市 (住宅と交通ネットワーク) に変換された。しかし、いくつかの加盟国では、過去15年間に農業用地は拡大している (ベルギー、ルクセンブルク、メキシコ、ノルウェー、トルコ)。

(資材や資源の)農業利用が、環境に圧力を与える主要な推進力である。OECD 諸国で 1990-92 年と 2002-04 年を比べると、無機リン肥料は10%、農薬は5%減少したが、無機窒素肥料は3%、水は2%、オン・ファームの直接的なエネルギー消費は3%増加した。農業生産の伸びが多くの投入の増加よりも早いことを考えると、利用効率が改善し、その結果環境への負荷が緩和されたことを示唆している。大多数の OECD 国ではこれらの投入は 1990 年以降減少したが、いくつかの国では全体的な投入は増加している(オーストラリア、カナダ、ギリシャ、アイルランド、ニュージーランド、ポルトガル、スペイン、トルコ)。

政策は、農業の環境に対するインパクトに対して中心的な役割を演じている。OECD 諸国の農家に対する支援は、現在農家収入の約30%にのぼる。そうした支援のほとんどは、依然として生産に関連している。生産に関連した支援は投入量の増大と農業用地の管理を奨励し、この形態の支援がない場合と比べてしばしば多くの環境因子により大きな圧力をかけることになる。しかし、生産と関連した政策から、環境の改善を目的とした個別の手段へのシフトが見られている。国および国際的な環境政策は、とくに水の質と可給度、アンモニアの発生、気候変動、それに生物多様性といった点において、農業の環境へのインパクトにおいてより大きな影響を及ぼしつつある。

結局のところ、環境達成度を決めるのは、農家の行動と実践である。農家は市民の関心と政策に反応し、環境に対する彼らの行動の影響をより認識し、より高い科学的技術的知識と環境に有益な商品やサービスに対する投資を行い、アグリ−フード・チェーンにおいて発展とインセンティブを引き出すことで、農作業において著しい改善を見せている。

個々の分野での農業環境達成度

OECD 全体で農業の養分の過剰が減少したことで (例: 多くは肥料と家畜の堆厩肥(たいきゅうひ)由来の窒素とリンの、投入と作物や牧草による養分の吸収との間のバランス)、土壌、水、空気への環境負荷の減少に貢献した。しかし、3分の1以下の加盟国で、1990 年から 2004 年の間に養分の過剰が増加している。養分の過剰の大幅な削減を記録した国々の多くは、養分をもっとも集約的に使っている国であり (農地ヘクタール当たりの過剰養分量kgで表した場合)、さらなる改善が可能であることを示している。ほとんどの国で無機窒素肥料利用の伸びは限られていることから、増加、あるいは多量の窒素の過剰は一般には家畜生産の増大の結果である。リンが農地土壌に集積し、移動が遅いため、リンの過剰は減少しているが、水中のリン濃度は上昇しうる。

農薬の使用は、OECD 全体としては減少傾向だが、3分の1の加盟国では 1990-92 年から 2001-03 年の間に増加している (活性成分での比較)。農薬使用による環境への影響の事実は OECD 加盟国では広まっていないが、現存するデータは、農薬使用の増大 (減少) と悪影響の減少 (増大) は関連していることを示している。いくつかの国では農薬の使用が増えているが、農薬そのものは長い間に変化してきており、環境に対する影響は少なくなっている。しかし、(DDT、アトラジンとその派生物のような) いくつかの過去の古い農薬は、多くの国で禁止されているにもかかわらず、環境中での残存が依然懸案である。

1990-92 年から 2002-04 年の間の OECD 諸国のエネルギー消費量は、すべてのセクターでの上昇は19%であったのに対し、オン・ファームでの直接のエネルギー消費量の上昇は3%であった。しかし、およそ半数の加盟国ではエネルギー消費量を減らしている。オン・ファームのエネルギー消費量が増加した国は、主として生産量の増大、機械化の進展、それに機械の大型化による。エネルギーに対する補助は、主としてオン・ファームの燃料使用に向けられるが、このことは、温室効果ガスの排出削減につながるエネルギーの削減とより効果的な利用に対する阻害要因となる。

中程度から高い土壌侵食リスクを持つ農地面積が減少したことで、土壌侵食に関してはいくぶん改善され、あるいは少なくとも定常状態にある。この要因としては、いくつかの OECD 諸国で冬期に緑の被覆を維持するために小耕起や不耕起を行ったり、ぜい弱な土壌に対して耕起の回数を減らしたりするなど、土壌保全の取組みが増加していることと関連している。しかし、およそ3分の1の加盟国の20%の農地では、11トン/ha/年という中程度から高い水による土壌侵食リスクがある。一方、風による侵食のリスクについては、問題となるのは3か国のみである。地域によっては、オフ・ファームからの土壌侵食により、飲料水の処理、河川の浚渫(しゅんせつ)、水域生態系の改善などに高いコストがかかっている。

1990-92 年から 2001-03 年の間の OECD 諸国の水の利用の増加は、全体では0%だが、農業用の水の利用は2%増加している。これは主要には、灌漑(かんがい)面積が6%増加したことによる。しかし3分の1以上の加盟国では、水の利用は減少している。いくつかの地域では、水資源の過剰な開発により河川や湿地への水流が減少し、生態系にダメージを与えている。地域によっては灌漑のための地下水利用は、地下水の再充填(じゅうてん)の速度をこえており、影響を受けている地域の農業の経済的活性を弱体化しつつある。灌漑に対する政府の支援は広く行われているが、一部の国では地下水のくみ上げに対するエネルギーの補助により事態は悪化しており、効率的な水の利用を阻害している。このことはまた、水効率のよい灌漑技術があまり採用されず、灌漑インフラの保守が悪いことから、多くの国で水の浪費と漏出が起こっていることと関連している。たとえそうであっても、灌漑農地のヘクタール当たりの水使用量は、1990-92 年と 2001-03 年の間で9%減少した。とくにオーストラリアの減少が顕著だが、イタリア、メキシコ、英国でも減少している。一方、ギリシャ、ポルトガル、トルコといった国々では、増加している。

OECD 加盟国の農業由来の水質汚染は、1990 年以来、平均するとわずかに減少している。このことは、肥料の過剰施用と農薬使用が減少したことと関連している。しかし約半数の加盟国で、農業地域の表層と地下水のモニタリングサイトにおける肥料と農薬の濃度は、国の飲料水推奨基準値をこえている。地下水の汚染は回復に何十年もかかるため、とくに関心を呼んでいる。さらに、多くの地域で汚染の絶対値は高い値を示し、地域によっては工業や都市排水由来の汚染が農業由来よりも急速に減少しているため、栄養塩による水質汚染に占める農業の割合はより大きくなっている。飲料水から栄養塩や農薬を取り除いたり、水環境を改善したりするためのコストは、多くの国で顕著になっている。

2002-04 年の農業からの大気汚染物質は、OECD 諸国全体の酸性排出物の2%、オゾン層破壊物質の8%、温室効果ガスの8%と、相対的に割合は小さい。

・ 酸性排出物 − 農業からのアンモニアの排出 (家畜と肥料由来) は、1990-92 年から 2001-03 年の間に1%増加した。一方、その間に他の起源の排出は減少している。いくつかの国々では、ヨーテボリ議定書で合意した 2010 年の目標を達成するためには、アンモニアの排出をさらに削減する必要がある。しかし、3分の2以上の加盟国で、農業由来のアンモニアの排出量は減少している。

・ オゾン層破壊物質 − OECD 加盟国は、オゾン層破壊物質である臭化メチルの、モントリオール議定書における 1991-2003 年の間の削減70%という目標に取り組んでおり、2005 年には段階的に廃止することになっていた。その後、例外としての不可欠用途がモントリオール議定書のもとで 2005 年に合意され、農家や他のユーザーに代替物を開発するためのさらなる時間的余裕を与えている。不可欠用途を認めることは、削減目標の達成を阻害し、代替物開発の阻害要因となっている。

・ 気候変動 − OECD 諸国の 2002-04 年における温室効果ガス排出量は、京都議定書の基準期間 (1990-92 年) に対し全体では8%増加したのに対し、農業由来は3%減少した。一方、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドといったいくつかの国では、農業由来の排出量は過去15年の間に10%以上も増加した。さらに、現在のところ知見は限られているが、農業は農地土壌の炭素蓄積容量を増加させ、再生可能なエネルギーと原料生産のためのバイオマス供給を伸ばすことで、農業は温室効果ガスの排出を削減することにも役立つことができる。

生物多様性に対する農業の影響を特定することは複雑で、さらに農業の生物多様性をモニタリングしている国が少ないことが、このことを困難にしている。生物多様性条約で認定している生物多様性は、遺伝的、野生種、および生態系多様性の3つのレベルを含む。

・ 農業で用いられている栽培種と家畜品種は、いくつかの OECD 諸国では増えている。これは、多様化、ニッチ市場の開発、それに農業環境政策と関連した農家のビジネス戦略によるのであろう。しかし、このことがどの程度農業システムの環境の回復力を改善し、病気のリスクを低下させているかは明らかではない。

・ 農業に関連した野生種の多様性は、減少しており、多くの国で農地は植物と動物の主要な生息場所であることから、この点は関心事である。より具体的には、OECD の農地の鳥個体群は、全体として過去十年間に減少している。(加盟国のちょうど半分以上が農地の鳥をモニタリングしている。) しかし、いくつかの国では、もっと最近になって個体群は回復のきざしを見せている。

・ 農業に関連した生態系多様性は、農地の生息地としての質の低下、栄養分や農薬による汚染、水流の減少、自然植生の一掃、そして地域によっては自然や風景の価値の高い農地が破棄され、森林等他用途に転換されることで、野生種に負の影響を与えている。しかし、農業上の水と大気汚染が多くの加盟国で減少し、野生種保護計画の下での農地が増えることで、野生種に対する負荷は緩和されている。

より多くの農業者が、環境の状態の変化に対応して環境調和型の農場管理を採用しつつある。しかし、こうした変化を継続的にモニタリングしているのは、OECD 諸国の3分の1から半分に過ぎない。環境調和型の実践を採用する農家が増えているのは、政府の支払いや規制と、食品加工業者や小売業者、地域の市場、あるいは個々の農業者自らの決定により推進される、自主的な民間主導の結果である。環境調和型の肥料や土壌の管理を実践する農家は、病害虫や水、生物多様性の管理を実践する農家よりも多い。政策と民間の主導により、認証を受け有機農業を行っている面積は、多くの国で急速に増えている。その面積は、2002-04 年で、OECD の全農用地の2%以下だが、オーストラリア、デンマーク、フィンランド、イタリア、スイスでは6%以上に達している。

目次

Highlights

Overall Agri-Environmental Performance

Agri-Environmental Performance in Specific Areas

Caveats and Limitations

Matching Indicator Criteria

1. Summary of OECD Agri-Environmental Trends since 1990

Agricultural Production and Land Nutrients

Pesticides

Energy

Soil

Water

Air

Biodiversity

Farm Management

2. Summary of OECD Country Environmental Performance since 1990

Background to the Country Sections

Australia / Austria / Belgium / Canada / Denmark / Finland /

France / Germany / Hungary / Iceland / Ireland / Italy / Japan /

Korea / Luxembourg / Mexico / Netherlands / New Zealand / Norway /

Poland / Portugal / Slovak Republic / Spain / Sweden / Switzerland /

Turkey / United Kingdom / United States / European Union

Bibliography

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